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【紅血の麗騎士】 アフィリス・ストロス・テナトリア

テントリス王国を築いたテナトリア一家の分家、ストロス家の次男。 長男であるジン・ストロス・テナトリアから大きな信頼を得ている優しい心の持ち主。 プロフィール(?) 私は元々テナトリア家の人間ではない。 紅い毛を持つ狼の獣人族の辺境の小さな村の出身だった。 私には友人も居た。とにかく幸せだったことを覚えている。 でも、その頃の私の名も、友達皆の顔も名前も思い出せない、いや、思い出したくない。何故って、後悔と悲しさで涙が止まらないから…。 私達は同じ村で一緒に暮らしていた。 規模も小さく、お金もないような村だったが、私達の生活は安定しており、幸せだった。 しかし、巨大な国家間の戦争が始まった。 アミドニア公国とエルドミウム帝国だ。 戦争の激化が進むにつれ、国境付近にあった私達の村にも兵士が来た。 それが、全ての始まりだった。 その兵士たちは、空腹のあまり村の食料に手を出してきた。 私達は抵抗した。しかし、口論の末に友の両親が殺された。 私は何も出来なかった。ただただ無力だった。 兵士どもによる略奪はさらに激化し、金品にも手を出してくるようになった。 それどころではなかった。村の仲間を私欲が為に殺して回る…。そんな奴らまで出てきた。 私達の幸せな空間は…緑豊かな森林は…気づけば紅い地獄そのものへと変わり果てていた。 子供は誘拐され、大人は殺された。 もう、私達の村はもう誰も…何も無くなっていた。 私も勿論誘拐された、目の前で最愛の両親と兄を失って…。地獄はまだ始まったばかりだった。 奴隷として売られた私は高値で買い取られた。 観賞用として扱われ、傷つけられる事はなかったものの、その生活は屈辱的なものだった。 玩具として扱われなかっただけましだろうが…。 ある日突然、地が大きく震えた。帝衰の大地震だ。 何事かと目を覚ますと目の前の檻は歪み丁度私が通れる程度の隙間ができていた。 近くで監視をしていた者は建物の下敷きになっており、動けず痛みに悶えていた。 幸運だった。逃げてもよいのだろうかと疑うほどに…。 しかし、この機を逃すと絶対にここから逃げることはできないと思った。 幸いなことに鎖で手足を繋がれていなかったこともあり、すぐに逃げ出すことができた。 目の前で痛みに悶えている、助けられるはずの命を見放して…。 そして、長きに渡る逃亡生活が始まった。 そう思っていたが、続くわけがなかった。 周囲の人に比べて非力な私の行動可能範囲は狭く、獣人族であるだけでも多くの人から狙われた。 休息のできない日々を過ごし、気づけば隣国のさらに隣国のテントリス王国に着いていた。 しかし、空腹に堪えきれず門の目の前で意識を失った。 目が覚めると視界の前には白い天井が広がっていた。 まさかまた攫われたのかと、今度こそ私の人生は終わったのだと…そう確信した。 しかし、そのようなことはなかった。 ぼやける視界の隅に現れた人達がいた。後から知ったが彼らは、テナトリア家の分家、ストロス家の当主とその長女と次女だったそうだ。 彼らは意識を取り戻した私に歓喜していた。 何故、私には到底理解のできない領域だった。 ああ、この人たちが私の新しい主なのだろう…。 厳しい肉体労働が私を待ち構えているのだろう。 そう、諦めかかっていた。 しかし、想定外の言葉が耳に聞こえてきた。 「彼を養子にしてあげられないか。」 意味がわからなかった。 自分が心の奥底では、まだそのようなことを期待しているのかと失望するほどだった。 またそのまま、気を失った。 しばらくが経って身動きが取れるくらいに傷は治った。 その間、彼らは毎日様子を見に来ていた。 そして目が合うたびに笑顔を見せた。 意味がわからなかった…。 自分のような元奴隷の獣人など、彼ら貴族にとってはただの観賞用の置物でしかないのだと、私はそう心のなかで私自身に言い聞かせた。 傷の大半が治り、生活ができるように時、テナトリア家の本家である、フォン家の当主、このテントリス王国の王のお目にかかることとなった。 私は、当主に質問された通りに今までのことを全て正直に言った。 「そうか…大変だったのだな…。だが、もう大丈夫、ストロスの当主が君を養子として迎え入れたいと言っている。 君はもう…つらい思いはしなくていい。」 私は困惑した。この人は何を言っているんだ?意味がわからない。 だが、当主の言葉には全くの悪意が見えなかった。 「どう…して…。俺は助ける価値もない…。俺を助ければ奴らが来るかもしれないんだぞ…! なのに…どうしてそんな事が言えるんだ…」 「人助けに理由は必要か?」 「っ………」 なんで…ふざけんなよ……『俺』は一体なぜ…今までの人生は………何なんだよ…なんでそんな…………優しい言葉がかけられるんだよ…… 「なら、逆に私が問おう。君はどうしたい?」 「…」 「悩んでも構わない。返答を待ってい…」 当主の言葉を遮るように私は呟いた。 「…自由になりたい…もう…物として扱われたり、逃げ惑いたく…ない…。」 私の答えを聞けたからか、当主は私に笑顔を見せ、 「そうか…。ならば、共に行こう。我らと…いや、このテントリス王国と。」 歓喜と安堵の涙は決壊を起こし、私は声を上げて泣いた。 そして当主は私にアフィリスの名を授けてくださった。 その日が私の再出発の日となった。