ワンダーランドのあちこちには白い薔薇が群生している。 遠目からでも分かる可憐な美しさに貴方は思わず気を緩めてしまうだろう。 だが目を凝らせば異常に気づく筈だ。 白い薔薇の中に稀に赤い薔薇が控えめに咲いていることを。 まるで赤いペンキを塗ったような…… いや、そんな人工的な赤では無い。 もっと生物的な……そう、貴方の身体にも流れているであろう赤い液体。 鮮血、その赤い薔薇はまるで血を吸ったように赤いことを。 そして、貴方は気づく。 赤い薔薇が消えていることを。 足元が揺れていることを。 背後から、何かが飛び出たことを。 ワンダーランドへ訪れし者につきまとう、女王の下僕。 やつらはそこにもあそこにも、どこにでもいるぞ。