この世への強い未練が呪いとなって肉を付けた、呪霊と呼ばれる存在。圧倒的な力を持つ上、呪霊の特性により、半端な実力では太刀打ちすらできない。 かつて世界征服に乗り出した時に対峙し、その後もことあるごとにこれでもかというほど計画を阻害してくる鍵鳴メルを、「邪魔者」として嫌っている。 そんなルカだが、1人の妹がいる。メルと死闘を繰り広げていたところに割って入り、争いをやめるように説得した妹の意見をあっさり聞き入れたりなどから、妹にはかなり甘いことが見受けられる。 「何で…、何でよ…。お父、さん…?」 ボクは腹部から堰を切ったように激しく流れる血を横目に、ボクを刺したお父さんを最期の光景に、ボクは意識を失う。 「…何て目覚めが悪いんだ。」 俺は先ほど、あの時自分が死んだ時の夢を見ていた。嫌なほど、夢で見た光景が脳裏に焼き付いて離れない。1番見たくない明晰夢だった。 そんな俺をよそに、ある人物が俺のもとにやって来る。 「来たよ~!お兄ちゃん!元気~?」 妹の、黒花ナエルだ。 ナエルは、俺に向かって飛び込み、抱き付いてくる。俺はそんなナエルの頭を撫でる。 よく俺を、「妹に甘い」と言う奴がいるが、一概にその言葉だけで片付けられるのは違う。確かに、俺は生前からナエルには甘かったが、今ほどではなかった。何故昔より、ナエルに甘くなったか、その理由は単純だ。 ────俺という存在を親が殺した上、呪霊として蘇った俺が、ナエルを守るために親を殺したからだ。 ナエルは、親が他界し、今は家族が俺しかいないことしか知らない。だからこそ、俺はナエルに甘くなった。自分の知らないところで親が他界し、親の死因も知らないまま残される辛さが、ナエルは知らないが、俺の死因に親が噛んでいる辛さが紛らわせるように、俺は無意識にナエルを甘やかす。 よって、俺は今日もナエルの為、世界の危険因子を排除する。そこに、他人からの善悪も関係なく。俺がナエルを脅かすと考えれば、それは「悪」になる。ナエルの幸福が、俺の幸福だ。 「お兄ちゃん、何考えてるの?なんだか悪い顔になってるよ?」 ナエルにそう言われ、俺ははっとする。 「そう見えてたか?」 「うんうん、今にも悪事に手を染めそうな顔してた。」 「そうか、悪いな。別に、ナエルを困らせる目的はないから安心しろ?」 そう言って俺がナエルの頭を撫でると、ナエルは顔を俺に擦り寄せてくる。この平穏を、俺は守りたい。 「───ナエル。俺が、守ってやるからな。いつまでも、ずっと。」