異世界転生。 まさか自分の身に起こるとは。 うだつの上がらない俺の人生を 神様が憐れんだのだろうか。 全く余計なことをしてくれた。 ……にしたって転生先が 「魔物」というのはどういう了見なんだ? 目覚めてしばらくは この弱肉強食の野生世界で随分な目に遭った。 仕方が無いので、必死に生きた。 そんなこんなで生き延び続けた結果、 俺は「魔王」と呼ばれるに至った。 どうやらいつかの余所者との縄張争いを 人間に観測されたらしい。 当然不本意だが、それなりの暴れ方をしたのは事実だ。 仕方が無いので、諦めて運命を受け入れた。 魔王には、人間から「勇者」という名の 狩人が差し向けられる。 俺は、俺を殺しにくる勇者のことを知っていた。 まだ貧弱な魔物だった頃、 森と平原の境界にある花畑。 少女が笑っていた。 その笑顔は、「奴」のそれと瓜二つだった。 奴と俺は同じ事故に巻き込まれていた。 俺が転生したならば、奴もそうあって然りだ。 あいつは真面目な奴だから、 きっとその旅路には苦悩が付きまとうだろう。 仕方が無いので、俺が旅路を見守ることにした。 ……仕方が無いのだ。 俺は奴のことが好きだったんだから。