声が…聞こえる やめて…聞きたくない… 私は…皆を…守るために… い…y… … …… ……… ………… …テ 全テ…壊セ… 海ハ…私ノテリトリー… 侵入者は…殺シてやル 生きて帰れると思うなよ −− 救援要請 連合戦争終結後、未確認敵対勢力による航空攻撃が多発。 輸送船及び護衛艦隊多数撃沈。機動艦隊による掃討作戦も失敗、生存者なし。 輸送機も敵戦闘機によって多くが撃墜された 海路及び空路は完全に遮断されている 島国である我々にとってこれは死活問題である 救援求む −−− 救援要請を受けて空母を中核とした護衛艦隊が向かっていた。 海は恐ろしいほど平和だ。整備士達が沈んだ顔で椅子に力なく座っていた。 「まさか偵察機が墜落するとはな。」 マグカップを置き、ため息をつきながら呟く 「翼が急に折れたそうだ。生存は絶望的だろう。」 「おかしいと思わないか?俺たちはいつも通り整備をしたはずだ。どうして急に…」 「分からない。もう仕事の時間だ、戻るぞ」 士官からの叱責を思い出したのか重い足取りで整備士達は格納庫へ向かった 数時間経ち、突如爆発音と共に衝撃が走る。 「てっ…敵の雷撃です!機関損傷!」 慌てて艦橋に飛び込んで報告する。艦内では奇襲攻撃によって混乱している区画も有る 「レーダーはどうした!?」 艦長は驚愕した表情でレーダー管轄の乗員に問いかける 「レーダーに反応無し!長距離からの雷撃かと…」 (潜水艦か…?いや…ソナーにも異常はなかった、一体どこから…) 「総員戦闘準備、艦載機の発艦及び対空戦闘準備急げ!」 一瞬疑問を浮かべたがすぐに振り払い、声を荒げた 「レーダーに多数の反応が急に確認されました!その数…40…!」 狐に摘ままれたような、青ざめた表情を浮かべ震える声で報告する 側舷付近では… 「たっ…対空戦闘急げ!」 突如現れた航空部隊に慌てふためき、各々が配置に向かっていた 戦闘機が銃座に向かう戦闘員に目掛けて機銃掃射し、激しい弾痕を対空機銃や装甲に刻んでいく。 やがて反撃が始まった。多数の対空機銃が動きだし迎撃を始める。 敵の機銃掃射は激しく、弾倉を貫かれ爆発するものや銃身が損壊し暴発するものも有った。 対空戦闘が始まり、少し敵機を削った所で重装の機体が現れた。 「おいおい!?マジかよ!」 "戦闘機だけ"皆そう思っていた。 「爆撃機だ!ヤバイ、撃ち落とせ!」 一人が迫ってくる爆撃機に焦り、必死に機銃を連射するものの間に合わない。 「くっ…来るな…来るなぁ!グワァァァ!」 大型爆弾が投下され付近の機銃と共に吹き飛ばされる。 数を減らしても一向に減る様子がない。そして、最後の機銃が爆撃時の火災によって引火し弾幕は無くなった。 甲板でも混乱が起きていた。 艦載機を発艦し迎撃に向かわせようとするが、敵の機銃掃射で多くが破壊されていく。 発艦できた機体も有ったが… 「クソッ…囲まれた!ダメだ…助けてくれぇぇ!」 悲鳴と共に機体が炎上しながら海に消えていく。 爆撃機の襲来によってさらに状況は悪化した。 滑走路及び艦載機用のエレベーターに爆撃が命中、発艦は不可能となった。 この時発艦出来たのは全艦載機50機のうち13機、その中でも未だに戦い続けていたのは6機だけだった。 「損害は?」 窓を見ながら艦長が土気色の表情を浮かべ、付近の船員に聞く。 「全対空機銃は壊滅、滑走路は破壊されました。 爆撃によって航空爆弾や魚雷に引火し破壊された区画も有ります。」 震える声を抑えながら報告する。 「だが…敵は味方の対空砲火も相まって数を大分減らしている、輸送船もまだ航行可能だ。このまま…」 艦長の会話を割り込むようにレーダーが新たな敵を探知する。 「これは…なんだ?」 (おかしい、航空機にしては反応が小さい。まるで人ぐらいの大きさだ…あり得ない) 確認するべく双眼鏡を取り出し、目にしたのは… 深紅の髪の少女だった。 航空母艦の甲板の様な装備?を身につけ、異様なオーラを放っている。 背筋が凍る様な恐怖を感じ、身動ぎできなかった。そのまま見続けていると 少女が装備から何かを打ち出した。そしてその何かは戦闘機へ姿を変えた。 船員が気づいた様に叫ぶ 「あの少女を倒せば敵は居なくなる!」 嘘か本当か分からない、だが、猶予はなかった。 「全艦載機へ、敵を攻撃しろ!」 艦長は叫んだ。 生き残った僅かな艦載機が攻撃しようと少女に迫る。 それを見た少女は嘲るように笑みを浮かべ、身長ほどの機関砲を取り出し連射し始める。 一発一発が致命傷になりうるほどの火力だった。 ある機体は翼が千切れ、別の機体は多くの銃弾によって蜂の巣にされた。死を覚悟して突っ込むものも居たが戦闘機を盾にし防がれた。 「化物め…」 精一杯の悪態をつくのが限界だった。これ以上打つ手は…無い。 僚艦も対空戦闘によって大きく疲弊していた。 少女が甲板に降り立った。獲物を追い込むようにゆっくりと艦橋に向かっていく。 生き残った船員達は急いで甲板に向かい、震える手で銃を構え少女へ発砲する、仲間の仇を取るために。 マガジンが全て無くなるまで撃ちまくった。 「やったか…?」 力なく誰かが呟いた。 「なんだ、この程度か。」 少女は傷ひとつなく、つまらなさそうな表情を浮かべてながら吐き捨てるように話した。 「この程度の艦隊で私を倒せるとでも?」 反撃と言わんばかりに機関砲を手に持ち、凪払っていく。 艦橋最上階で艦長は通信を切り、覚悟した表情で座っていた。 「お前が最後だ。死ぬ覚悟は出来たか?」 彼女はドアを蹴破り、乱暴げに言い放つ。 深紅の瞳が死神のように不気味に輝いている。 「最後に一つだけ聞きたい」 数秒の間の後に口を開いた 「良いだろう、言ってみろ」 目を細めて返事をする。 「お前は…なんだ?」 「私はシャルケだ」 (シャルケ…連合戦争末期に沈んだあの空母か…?戦い方も共通する所がある…) 艦長が考え込んでいると、シャルケは何かを思い出したように喋り始める。 「救援が来ると思っていたか? お前が連絡を取ろうとしていた艦隊は既に海の藻屑だ」 「…あぁ…知っているとも」 通信が繋がらなかった事から悟っていた。 落ち着いた口調で答えると、シャルケは近づき 「これで終わりだ」 トドメを差した。 静寂が支配する船内で一枚の地図が落ちていた。 暫く眺めているとある場所に興味を持ったのかペンで色々書き込んでいく。 その街の名前は…「英会街」と記されていた