私、櫛村アリスは魔法少女です。あと、今年で私は大学2年で、立派な大学生になりました。魔法少女になって以来、青春とは無縁な私ですが、元気に一人暮らしをしています。 「ねぇアリス、怪人が現れたよー」 大学の講義中、私のカバンに隠れていたフラワーが話しかけてくる。 「いや今、講義中なんだけど…」 「なんだいアリス、世界の危機だよ?、何そんな呑気にしてるのさ」 「えっ!?」 思わず声が出てしまい、周囲からの視線が痛い。 「な、何の事…?、っていうか私、恥かいたんだけど……」 「そんなの小さな問題さ、世界の危機に比べたら大した事じゃないよ」 「世界の危機って、具体的には?」 「あと1時間で地球が爆発するのさ」 「具体的すぎッ!?」 ハッ、と周囲を見回した私は自身のノートで顔を隠す。もう嫌だ、恥ずかしくて前が見えないよ。 「アリス、世界を救えるのは君だけさ」 「とか言って他にも魔法少女がいるパターンでしょ?」 「………………まぁ、そんな事より今は世界を救う事が最優先事項さ」 えっ、はぐらかされた!?、と思ったがこれ以上は注目を集めたくない、アリスは荷物をまとめて講義室をこっそり抜け出した。世界を救う為、魔法少女は駆け出していく。 ここは東京、今まさにスカイツリーを踏み潰した巨大な足が大地を激しく踏み鳴らす。天を貫く巨大な二足歩行のトカゲ"ゴジーラ"、その姿に人々は恐怖し、絶叫し、絶望していた。世界はもう終わりだと、希望など存在しない事に震えていた。 しかし、天高らかに聞こえた声、人々は空を見上げる。 「魔法少女ハナ!、参上ッ!」 最近、飛行する敵との戦闘中に身につけた飛行能力、アリスは右腕を天高く掲げて宣言する。 「巨大トカゲ怪獣ゴジーラ!、皆を絶望に叩き落とした事!、私の希望で後悔させてあげる!」 アリスは怪獣へと全速力で突撃していく、すると脳内にフラワーの声が響いてくる。 "アリス、あと10分でゴジーラのエネルギーが最高潮に達するよ。そうなったら世界は終わりさ" 「分かってる!、っていうか怪獣の名前、絶対にアレじゃない!」 "今は目の前の事に集中、油断は禁物さ" 「もう!、チェリーボンバーッ!!」 アリスの両手から放たれた魔法、しかし怪獣のあまりの巨大さに効果は全くない。狙うなら更に上空、顔を攻撃するしかないだろう。 「いっくよ、えぇーい!」 音速を超えたアリスは雲を突き抜ける、分厚い雲の層を突破すると怪獣ゴジーラの凶悪な顔が現れる。アリスは構えた、両手を天に向ける。その手には何かが光輝いていた、それは光の剣であった。魔法少女ハナの最終奥義"エクスフラワー"、光が空を断絶する。その一撃が敵の頭上に迫り来る、周囲の光を吸収しながら更に膨れ上がった剣が敵の頭部に直撃する。 ___ズバァンーーーッッッ!!!!! 大気が震える、ゴジーラは悶絶しながら体勢が揺らぐ。しかし、致命傷どころか怪我すら負っていなかった。 「嘘ォ〜〜〜ッ!?」 アリスが驚愕しているとフラワーから通信が入る。 "ゴジーラのエネルギーが最高潮に達した、今すぐ緊急退避して!" 「へっ……??」 ゴジーラが咆哮する、その瞬間に膨大なエネルギー砲がアリスに迫り来る。行動が遅れたアリスは身構えた、即座に張られた防御壁の焼失する音が聞こえたと同時にアリスは光に呑まれた。抗う事が出来ない、エネルギーの暴力がアリスの身を激しく焼き尽くす。 意識が……、かろうじて生きていた。アリスは力無く地上に落下していく、エネルギー砲に吹き飛ばされたのだ。地面が近い、もう私ではどうする事も出来ない。 しかし、フラワーとの通信越しに声が聞こえた。それは数え切れない程、たくさんの人々の声援であった。 「ハナー!、負けるなー!」 「ハナちゃん!、頑張って〜!」 「怪獣なんかに負けないで〜!!」 「ゴジーラっていうけどゴ〇ラのパクリじゃん!」 「勝って!、ハナちゃん!」 「神よ、彼女に…魔法少女に祝福があらんことを」 「日本の魔法少女は弱いわね、ここは私の出番かしら」 「いけー!、ハナー!」 ""世界を!、皆を助けてッ!!"" 霞む視界、とっくに限界なんて過ぎていた。だけど、私は諦めない。世界を!、皆を救うんだ! だって私は魔法少女、皆から声援を受けた魔法少女ハナだからっ!! ゴジーラは地上に向けてエネルギー砲を放とうとしていた、地球を破壊する事だけが怪獣の目的であったのだ。自らの使命を果たす、その目前の事であった。視界の端に強烈な輝きを見た、光が急速に目の前にまで迫り、ゴジーラの巨体を太平洋まで吹き飛ばす。理解が追いつかない、ゴジーラは生まれて初めて受けた衝撃に驚愕していた。 「私は魔法少女!、"最終魔法少女"ハナよ!、皆を怖がらせたゴジーラ、あなたに私が裁きを下すわ!」 周囲に桜吹雪が舞い散る、満開の桜を身に纏いし魔法少女がゴジーラに宣言する。これは魔法少女としての最後の戦い、散りゆく自らを犠牲にした最初にして最後の最終形態である。 アリスは魔法の種と融合した自らの魂が熱く燃えている事を感じた、ゴジーラを倒す為に灰へと化していく。アリスは笑う、そして自分の胸元に触れる。 「これが私の最後!、そして人生一番の見せ場よ!」 魔法の心がアリスの心に呼応する、アリスの手には鎖が握られていた。ゴジーラへと伸びた鎖が巨体を締め上げ、アリスは力一杯にゴジーラを空にぶん投げた。目指すは宇宙、きっと今なら行ける!、これは確信、アリスは怪獣ゴジーラと共に宇宙を目指す。 大気圏、摩擦熱がアリスの肌を焦そうと熱を帯びていく。しかし、アリスは止まらない。握った鎖を放さない、ゴジーラは混乱していた。地上がどんどん遠く、果てしなく離れていく。 「ゴジーラ!、これで最後よ!」 アリスは宇宙空間にゴジーラをぶん投げる、アリスの手から離れた鎖が千切れて怪獣は自由を手に入れた。魔法少女を吹き飛ばそうとエネルギーを溜める、最大火力のエネルギー砲が魔法少女へと放たれる。 「私の全部!、貴方にあげるわ!!」 アリスの魂が、燃え盛る魔法少女の魂が業火となり、アリスの両手から果てしない希望が込められた最終魔法を解き放つ。 「ブロッサムボンバァーーーッッ!!!」 エネルギー砲ごとゴジーラを消し飛ばす魔法、自身の最後を悟りながらも魔法を放つ両手は揺るがない、確固たる覚悟がアリスにはあったのだ。 宇宙を揺るがす一撃、倒されたゴジーラの肉体が爆散する。周囲の惑星を吹き飛ばしながらアリスへと迫り来ていた。アリスは身構える、死を覚悟して衝撃に備えていた。 すると___、 「いやー、君は本当にすごい魔法少女だよ」 フラワーの声、アリスは自身の胸元を見入る。自身の胸元からフラワーが現れたのである、アリスは混乱した。 「君と融合していた魔法の種から発芽したのさ、君には悪いけど最後に良いところは僕が持っていくよ」 「フラワー、何を……」 「櫛村アリス、君という存在に出会えた事、そして過ごした5年間の全てを僕は決して忘れない」 ___ニョキニョキ…! フラワーから生えた両腕が、アリスを押しやる。突き飛ばされたアリスは背後にワープホールが開いていた事に気づいた、アリスは叫び、手を伸ばす。 「フラワー!、一緒に帰ろう!、いつもの日常に!、いつもみたいに二人でまた怪人を倒そうよ!」 しかし、フラワーは首を横に振った。 「この爆発は僕が受け止める、そして君の運命もね」 既に燃え尽きた筈の魂、しかしアリスは気づいた。灰と化した筈の魂が元に戻っていた。そして気づく、フラワーの今にも消え入りそうな魂の灯火を…… 「フラワーっ!!」 ワープホールに呑まれて視界が暗転する、気づいたら地球に戻されていた。地上では人々が魔法少女を讃えていた。 「きゃー!、ハナちゃん最高!」 「カッコよかったぜ!、ハナ!」 「ゴ〇ラに勝った!、やったぜ!」 「ふっ、日本の魔法少女は強いわね、私の出る幕ではなかったわ」 「ハナちゃん!、ありがとう!」 アリスは人々の歓声に立ち尽くす、そしてアリスは一人その場を飛び立った。失った相棒を、フラワーを思い、一人…心の中で泣いていた。 私、櫛村アリスは"元"魔法少女です。あれから3年の月日が経って今では立派な社会人です。フラワーがいなくなって以降、私は魔法少女に変身する事も怪人が現れる事も無くなりました。フラワーとの思い出が、魔法少女としての日々がまるで夢だったかのように世界は平和です。 「ふふっ、懐かしい……」 通勤途中、私はスマホのフォルダに収められた一枚の写真に微笑む。いつの頃の夏だったか、一緒にフラワーと行った植物園で撮ってもらった一枚、麦わら帽子を被って笑う私とふざけた様子のフラワーの顔。その写真に私は笑った、数少ないフラワーとの思い出を噛み締めるように私は笑った。 見慣れた路地裏、いつもと少しだけ雰囲気が違う気がした。 ___僕と契約して魔法少女にならない? 「ふぇ……!??」 私は立ち止まる、唇が震えて言葉が出てこない。 「ふ、フラワー!?」 「やぁお嬢さん、豆鉄砲に撃たれた鳩みたいな顔をして、何か良い事でもあったのかい」 「ど、どうして!?、えっ……夢?」 私は自分の頬をつねる、痛い…… 「あの時は本当に危なかったね、でも君にまた会えたから結果オーライさ」 涙が、視界が……見えない、涙で上手く前が見えないアリスの手元に一粒の種が落ちてくる。 「そんな事より、僕と契約して魔法少女にならない?」 フラワーからの誘い、その一言にアリスはこう返した。 「ふふっ、喜んで!、またよろしくね、フラワー!」 こうして魔法少女と相棒フラワーとの日々が再開した。これからも魔法少女と怪人の戦いは、まだまだ続いていく。 魔法少女ハナ!、参上ッ! [完結。]