(Gin) 新生したてほやほやの万能狐さん。呼ばれてる語感だけで自分の名前を認識してる。 「信仰が形を為して生まれた、言霊の子。」 祀られて信仰されたことで、昔に一度死んだ狐が神でも神の使いでもない新たな存在として生まれ変わった。祀っていた狐が実体を持って現れたのだから、村民は当然歓迎して共に生活する。しかし、村外の人にとって狐の獣人など化け物。異質さを恐れる人間の性によって村は九割方殲滅されてしまった。しかし、村民らは死の間際までまだ未熟な狐の獣人を護ろうとした。誰もその居場所を明かさなかった。そして、静かになった村に遺されたのはギンと虫の息になった数名の村人だけ。信仰と言霊から生まれたギンは村民無しには存在し得ず、なにより、鼠を狩って見せると大袈裟に驚く人が、山から戻るといつも頭を撫でていた人が…日常に溶け込んでいた無償の愛情が、消えた。視界が震える中で、【刻紋の儀】-ギンの本能が空に軌跡を描いた。