善人の仮面を被り、人心を掌握する。 彼にも、こうなってしまった、悲しい過去があるに違いない。 『…普通は、そう思うだろう。』 『何より、僕が、そう信じたかった。』 少し奇怪な雰囲気を醸し出してはいたが、部下を大切にする、理想的な上司だった。 少なくとも、そう『見えた』のだ。 「いやはや、手のかかるモルモットだったよ。…ああ、だが、まぁ。彼らを生まれ変わらせた時の悦びは、言葉では言い表せないものもある。」 「…アール。そうやって血管が切れそうになるまで怒ることに、なんの意味がある?」 「お前は聡明だ。何もかも、予想出来たんじゃないか?…ふっ、まさか、偉大なるアール・ヴィンスト・メーディッヒともあろう者が、予想出来なかったと??」 当たり前だ。分かりきっていた。この男が醸し出す違和感を。でも、決め付けられなかった。決めつけたくなかった。 『…カーロ。カーロ・エト・サングイス。お前は、この社会が産んだ癌であり、”俺”がその芽を摘むことの出来なかった、その不手際により、ここまで大きく育ってしまった。』 『責任をもって、”俺”は、お前を殺す。お前をこの世界から、宇宙から、完璧に屠り去る。』 『…その邪悪な腹の中を、露わにしてやる。その忌々しいものばかりを生み出す腕を、切り落としてやる。その人を惑わし、苦しめる言葉を吐く舌を、引きちぎってやる。』 「そうかい、アール。ならば、私の研究の成果を見せる時だな。」 「最も素晴らしい被験者とは、何だと思う?」 混乱が街を呑み、ネオンが消えゆく、ある都市の夜。2人の博士は、自分たちの成果物を掲げ、血に塗れた戦いを始める。