ログイン

【鋼賢の騎士】ネスター・ウィリアムズ

数多の流星が王国の空を照らしたある夜、騎士団団長の家の前に緋色に輝く金属と共に一人の赤子が置かれていた。 その赤子が騎士団にて、騎士として育てられ青年となった時、彼は成長と共に他の者にはない稀有な力を目覚めさせたのである。 それは金属を自在に操作でき体内に貯蓄しておける【金属の加護】であった。彼は金属に愛されていた。彼が騎士団として出動が命じられた時には、必ず貴重な金属を落とす魔物がいた。食事にしようと食器棚を開ける時には、大抵棚の奥に金属が見つけられた。 彼が上級騎士として任命されて数ヶ月後のある日、国王から上級騎士に対する緊急招集要請があった。曰く、『鉱石魔』ゴーレムたちの大規模な襲撃により隣国が滅亡の危機にあると。曰く、ゴーレム達を率いているのは『最上位鉱石魔』カース=ゴーレムであると。 彼らは隣国の救援であると息巻いたが国王が騎士団に求めたのは、自国にてゴーレムたちの襲撃に備えよと言うものであった。しかし騎士団の中でも一際正義感の強かった青年は、そのような命令は聞けないと自分一人で隣国に出てしまった。 一人飛び出した青年は整備の行き届いていない長い貿易路を、一晩中走り隣国に到着したのである。 到着した青年は現状を確認するために、貿易路の終着地付近の家屋の屋根に駆け上り、周囲を見渡した。そこで見たのは、ゴーレム達に破壊された城下街、ゴーレム達が群がっている城であった。彼の心に激情が迸る。しかし同時に彼は冷静さを残しており、一人で無策に戦いに臨もうと勝ち目がないことを理解していた。激情を必死に抑え、策を探ろうと改めて周囲を見渡した。そして、彼は群がるゴーレム達の周囲に、際立って大きな黒紫色のゴーレムが存在しているのを見つけたのだ。あれこそがカースゴーレムに違いないと確信した青年はあることに気付く。ゴーレム達がカース=ゴーレムと距離を開ける事に注力しながら、街を破壊している様に見えたのである。どうやらカース=ゴーレムは城で抵抗を続ける者たちを煩わしく思ったのか他のゴーレムに時折八つ当たりしているようだった。青年はそこに好機があると考え、ゴーレム達に見つからぬ様に息を潜めながら屋根の上を渡り行き、街の路地裏を忍び行き、カースゴーレムの後背へと向かったのだ。 遂にカースゴーレムを何時でも不意打てると確信できる程接近し物陰に隠れた彼は、ミスリルの剣を生成し、カースゴーレムを真っ直ぐと睨みつけた。しかし、不意に彼を襲ったのは形容しがたい程の恐怖であった。 人々の怨霊だろうか、カースゴーレムは黒きオーラを纏っていた。人の血が染み込み過ぎたのであろうか、その体躯は朱殷色に脈打っていた。 恐怖に震える心を暖めたのは、幼き頃からそばにあった、体内にも取り込まず首から下げていた緋色の金属[ヒヒイロカネ]であった。火炎の加護を与えると言い伝えられる最上位金属であるそれは、本来上位騎士であっても所持を許されぬものである。彼がそれの所持が許されていたのは、今は亡き親代わりであった団長の取り計らいのためだ。何も覚えておらぬこの子には何か心の支えが必要だと、火炎の加護が必要だと、国王にまで直談判した団長のおかげなのである。それを思い出した時、青年の恐怖は止まっていた。 改めて彼はカースゴーレムを真っ直ぐと見つめ直した、彼の瞳にもはや恐怖はなかった。しかし、彼は気付いた。ミスリルの剣ではまるで歯が立ちそうにないことを。ミスリルは魔法に強い金属であるが、あれの体躯からは魔力を感られない。そうだからと言って、単純な力では押し切れないであろうと青年は確信していた。その時であった、未だ城で抵抗を続けていた隣国の騎士団の放った火炎魔法が、偶然カースゴーレムに命中しカースゴーレムの体表を焼き焦がし、砕けさせたのである。その攻撃によりカースゴーレムは大きく暴れ初めた。 青年は思い出した。火炎の加護には怨念や呪いを照らし出し浄化する力がある事を。故に青年は、思い出であり取り込むことを考えたこともなかった、ヒヒイロカネを取り込み活用する決意をした。 そのヒヒイロカネは量が少なく短剣すら作れない。だが、青年はもはや何も考えなかった、本能での行動であった。これ以上、この国を破壊させてなるものかと、本能的に採択した結論はヒヒイロカネをミスリルと混ぜて使うと言うものであった。奇しくもそれは、ドワーフの国の秘術である合金の鋳造と同じものである。咄嗟に作り出された、されども強靭な火炎の宿る双剣を構え、彼は走った。暴れていたカースゴーレムが落ち着き、その傷を修復しようとしたその一瞬を突き、彼はカースゴーレムを十字に切断した。 カースゴーレムが死んでいるか確認しようと彼はその残骸に近寄り、残骸となりつつも尚胎動するなにかコアのようなものを発見した。彼はそれが金属であると悟ると、コアに双剣を振り下ろす事もなく、呪われることも考えずに両手でコアに触れ取り込もうとした。これはカーズゴーレムのコアが強い魅了効果が持っていたからなのだが、彼は火炎の加護に守られていたため、幸い呪われる事も無く彼はコアを取り込むことができた。その後、彼は隣国騎士団と合流しゴーレムの掃討戦に協力したのである。後にコアが金属[アダマンタイト]であったと知り驚愕するのはまた別の話である。 その後、彼が一人隣国で出向き国を救っていたという事を、国王が初めて知ったのは隣国から感謝の使者が訪れた時であった。(騎士団の皆はその事に気付いていたが、彼の謙虚な正義感の強い性格に敬意を示し、罰せられる事は脳裏によぎったものの報告していなかった。)隣国を実質一人で救った青年は、国の英雄として称えられ歴史に語り継がれたと言う。 …ある王国民は言う「流星群が空を照らしたある日、美しき流星群、その中でも一際大きな流星が割れ、その片割れが緋色に輝く破片と共にこの国に降って来た」と… -------------------- 以上妄想の垂れ流しでございます。稚拙な文章を読んでくださりありがとうございました。