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《謹慎聖騎士》ユッカ

オレは女神教団に属する聖騎士の端くれだ。 ……といっても、今は謹慎中だがな。 ある地域で、集落を荒らす魔物が出たってんで 討伐隊のメンバーとして派遣された時だった。 討伐対象はデカいグリフォンで、 多少の苦戦は強いられたものの 危なげ無く討伐することができたんだ。 それで、討ち漏らしがいないか 周囲を改める時間になった。 オレは近くの茂みに分け入った。 そこで見つけちまったんだ。 怯えきった小さな不定形生物をな。 どうもオレは情に流されやすい性質でな、 分かっちゃいたんだが…… 明らかな格下の、それも襲ってくる気概も無い いわゆる「弱い相手」に躊躇しちまった。 んで、こんなチビなら悪さも出来んだろうと、 そいつを見逃したわけだ。 これが思ったよりもオオゴトだったらしい。 魔物に人間の情や通用しない、と。 そうやって逃がした魔物が、 凶悪に成長して人を襲ったらどうするんだ、と。 馬鹿なオレは、そうやって上官に絞られて 初めてその可能性を考えた。 これはオレの明確な判断ミスだったと。 そも、女神教では魔物を「敵」と明言している。 聖騎士団に属するオレが見過ごして良い相手では無かった。 だが、同時に、 あの場で怯えきったチビを殺すことが 果たして「正義」だったのか それを考えずには居られなかった。 謹慎処分を受けてからもずっと、 そのことばかりが頭を過っていたんだ。 だからそんなオレのちっぽけな悩みを嘲笑うかのように、人でも人外でもお構い無しに手を差し伸べて交友を結んでいく「魔物」のアイツを見て、オレは心底救われたという訳だ。