【救いは…】 私は神の存在を信じている、だが"神"は信じていない。 私は元は信仰深い協会の信者だった、毎日の様に祈りを捧げ供物を捧げる。その行為が世界に平和をもたらすものだと信じてやってきた。 ある日協会に子供を連れたみすぼらしい親子が訪れ子どもに薬を頼んできた。 なんでも体調を崩してしまい薬が必要のようだがこの宗教では供物なしでの施しは禁忌とされていた。 だが私はその親子を見捨てることが出来ず薬を渡してしまった、それが善なる行いであると信じて。 翌日禁忌を犯したとして私は拘束された、その時私は人を助けることの何がいけないのか、と考えていたら昨日助けた親子が不純な施しを受けたとして火炙りにされた。 私は訳が分からなかった、なぜあの親子が死なねばならぬのだ、そう考えていたが答えは無い。 拘束されて1週間がたった。その間も私は祈りを捧げていたが神は答えない。 その時天使が降りてきた。なんでも異端者を排除するそうだ。 ふざけるなと思った、人を助け殺される。助けられた者も殺される。富あるもののみ施しを受ける。 神よ貴方様は何故このような事をするのですか。 神と天使の軍勢がやってきた、私はその罰を受けるつもりだった。罪を犯し神が裁きに来たのだ、心は固められた。 だが神の姿を見た途端、私は絶望した。丸々と肥え、私腹を肥やす貴族のような顔、欲のためにのみ動く目、私はその姿に絶句した。 これが私がこれまでの人生をかけて信仰してきた神の姿なのか? 誰もその姿に疑問を持っていない私がおかしくなったのか?否私だけが本来の姿を見ているのだ。 神が降臨し私を見た時の目、それは愉悦を感じるブタのような目。 光を放つ度に周りの者の目から光が失われる、催眠の類だと即座に理解した。 私はその姿から怒りを覚え拘束を引きちぎり近くにあった鎌を持つ、そして天使どもを切り裂く。 何体も何十体も、何万体も切り裂き天使を殺す そして神に迫る、こいつを殺す、取り除くと意思を持ち進む。 途中上位の天使が迫るがそれを三枚おろしにして神の首に刃をあて切り飛ばす。 崩れ落ちる肉体ともに催眠が解け、みなが本来の神の姿を見る。 その後神を殺した者として持ち上げられるが私は喜べない、平和のためにやった事は意味がなかったと思い知ったからだ。 私は逃げ出すように住んでいた街を捨てた。山を超え海を超え、かつての過ちを償うために。 私は止まらない、止まることを許されない あの神を信仰していたという罪の清算のために 伸ばされた手を1つでも多く掴むために 例え見せかけだけの偽善だと罵られようと 例え、異端として守るべき民に火炙りにされようと 例え…血にまみれたとしても前に進む かつて届かなかったモノに届く翼はある たった一つの罪を懺悔する 救いは、私の手で起こすと決意したから