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三途の川の渡し守、礼穏

三途の川の上流、此岸よりの場所には山がそびえ立っている。ここは通称「神隠しの山」「試紀の山」と呼ばれ、普通はこの世のものではないものがさまよっているが、稀に生者が迷い込むことがある。1度や2度入るのではそこまで影響はないが、長く留まると「生きていない」身体になる。死んでいる訳ではないが、生きてもいない。かつて山に入り、山に住み始めた変人がいたが、彼女も既に「生きていない身体」となっている。だが具体的に体のどこが変わったのかは本人でも気づいていない。 例の子どもが山に入っても平気な理由は、「既に同一存在が影響を受けているから」である。具体的に言えば、彼女は未来で、必ず山に住むことが確定している。前述した変人の存在が、それを証明している。 三途の川や試紀の山には独自の時間が流れており、現実世界の別の時間軸が同時に繋がることもある。分かりやすく言えば、山では過去と未来が繋がることがある。 ─その変人は、最期に母国に帰る直前まで、「東日尚」と名乗っていた。 彼女が連れていた使い魔たちは(白鉄と魔導書を除いて)記憶を消し、弟子希望だった少女に接触した。