彼の者、紅き月明かりにて呵うは深き砦に措いての事、然して真に嗤う影あらん。そもさ様しは三界を照らしては三界をも穢す摩訶の晃なり。此方へ至るは誠に自然、彼方に行くも実に風雲の致した事である。 彼の者は云う。 「兆しはなく、希望もなく、然して世を照らすは余の理」 対なる声、嘲笑の果てにて___ 「されど貴様は餓鬼風情、まっこと腹を空かした鬼道の者よ。故に道を外さんとする身を以て白亜に刎ねて地を染めよ」 然して呵うは自己の陶酔故か、はたまた世を照らす陽に準えての事であろうか。 彼の者、此度は違った。 「余の産まれし地は深淵に鎮まる落伍たる者あれど、総ては単に己の至らぬが故に致した事なれば余は其方を抱く真の母に様して子を抱かん」 余は総てを統べる王の身なれど、対なる兵を軽んじず、一撃にて終いとせん___。 「なれば此度は血が見えようぞ、阿呆の宴に燦然たる光を以て手向けとしよう!」 「阿呆になれども世は散々、然して余こそが雅に呵うて穢れを照らそう」 火吹き地を割て、死を前に呵う道楽に傾ける者ゐるらむ。ゐたる居ぬを侍りて、然して生を希望せん。此度の阿呆、落陽に至る時まで火を吹かして起く凡に非ざる者なり。