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【野良猫のボス】クロ

吾輩は猫である、名前は沢山あるが8割「クロ」なのでそう名乗っている。 血統書付きの気高き母と先々代のボスである誇り高き野良猫出会った父の元、路地裏で産まれ、路地裏で育ち、路地裏を庭に仲間達と駆け巡っていた。 私は産まれながらに頭の巡りが良く、1年もすれば路地裏に聞こえる人間の言葉を聞き分け、3年もすれば喋ることすら出来るようになった。 産まれてから2年程経った頃、卑劣なる不意打ちにて父が死んだ、幼き子猫を庇っての死であった。 父を倒した狼藉猫とその仲間達は我等の庭を我が物側で荒らし回り、群れは散り散りとなった。 母と分かれたのもこの頃であった、以降姿を見ていない為生きているのか死んだのかも分からない。 それから2年、私は父の腹心であった老いた猫の元で爪を研ぎ続けた。 同胞の多くは姿を消すか、死ぬか、狼藉猫に寝返るかであったが、三匹の盟友は私に着いて来てくれた。 「ミケ」はその名の通りの三毛猫で、私の最初の友であった。 慎重派で私の行動を度々静止するが判断に間違いは少なく、彼のお陰で九死に一生を得た事は一度や二度では無い。 故に参謀として側に置き、耳に痛い忠言も我慢して聞くようにしている。 「シロ」は母違いで2つ下の弟で、私に瓜二つだが色が白い。 墨を被れば見分けがつかないため、時には影武者として振る舞う事もある。 やや気が弱いが覚悟を決めた時の爆発力は凄まじい物が有り、今私に何か有れば私は自分の子ではなく「シロ」を後継者とするだろう。 「茶虎」は父の宿敵と言える猫の子であり、私と同い年である。 かつては親同士の関係もあり顔を合わせる度に喧嘩をしていた。 しかし父を失って直ぐ、私が若さを抑えられなかった頃。 狼藉物に無謀な戦いを挑み手酷く痛めつけられた私を助けたのは彼であり、私を逃がすために囮となり生命を散らせたのは彼の父であった。 父と「茶虎」の父は私と「ミケ」の関係に近かった事を知るのは、もう少し後の話である。 「茶虎」は恨み言一つ言わず私に付き従っているが、私は未だ彼ら親子への恩を返せてはいない。 父が死んで3年、老いた猫が死んで半年後に私は仲間と共に狼藉物達と戦い、父の仇を討った。 それから1年、私は今、父の跡を継いで路地裏の群れを率いている。 父の愛した、そして私も愛するこの街とこの路地裏を護ることが、私の今の生きがいである。 願わくば、一日でも長くこの平和が続かん事を!