話せば普通な感じのおじさんだが、当たり障りのない事しか言わないし、うっすら周囲に避けられている。 VRChatを趣味として仕事帰りにしていた。 デフォルメされた可愛い動物のアバターを自作して使っていて、ボイチェンで少年のような声にして遊んでいた。 同じようなアバターの人を集めてワイワイ遊んでいたが、ある日可愛いアバター仲間が会社の愚痴を話し始める。思わず彼は 「その子はそんな事言わないでしょッ!!」 と怒鳴ってしまう。当然ドン引きされ、更に陰口で笑われているのを聞いてしまうが、人生経験積んできた大人である為陰口を聞こえないフリをして謝罪した。しかしその後仲間内でのリアルの愚痴が増え、 結局こいつらも醜い人間なんだな と気づいてしまい、可愛い好みの外見をしてるだけに余計に嫌悪感が増し引退を決意する。 その後は能力を使って、自分の可愛いぬいぐるみ達とだけ理想の会話をしていた。 それを見られ、しかも運悪く他人の趣味をバカにするタイプの人間に見られてしまい、めちゃくちゃに笑われてバカにされてしまった。 その瞬間今まで生きてきて抱いていた不満やストレスやトラウマが、発散する場を侮辱された事で爆発してしまう。 隠してたのに見られてバカにされ、恥ずかしい、悲しい、バカにされて悔しいという気持ちが怒りと共に攻撃性に変わる。 だが社会的地位を失いたくない。その為その場は引いた。 しかし怒りが収まらなかった。 バカにされた仕返しをしよう、ちょっと痛い思いでもすれば良い。 という気持ちでぬいぐるみに嘘を言わせて車道に誘導した。 「ちょっと自転車にでもぶつかったら良いって思ってたらね、急にぬいぐるみが喋ったのでびっくりしちゃったんでしょうね、バカにしてきた人間は車にひかれて亡くなっちゃったんです。」 「気が動転してぬいぐるみを現場に回収しに戻って急いで家に帰って、最初はやってしまった……どうしよう……って後悔したんですけどね。 罪に問われるかもって考えた時に、罪を立証できない事に気付いたんです。そしたらスーッと気持ちが軽くなってね、ストレスを解放できたことでね、自分でも意外なことにスッキリしたんですよ。」 「それからなんですよね、辞められなくなったのは。町中で隠れてぬいぐるみ達と会話するの。バレたらどうしようって気持ちと、バレたらまたあれをやってスッキリできるぞっていう2つの気持ちが同居してるんです。」 ぬいぐるみは彼を決して侮辱せず、全てを肯定し良き友人として振る舞う。 しかし彼は本質的に他人を見下している。他人に対してはぬいぐるみも暴言や嘘を言ってしまう事にそれは現れている。 どんな暴言を他人に吐いても『そんな事言わないでしょッ!』とは思わない。何故ならそれが、彼が社会生活をしていく上で覆い隠してきた他者への態度そのものなのだから。