ログイン

【破砕滅殺掲げし正義の狂犬】"ムーンショット帝国少佐"ペカー・スミルノフ

ー戦場から目を背け10年が経った。 何の学びも刺激もない退屈な日々。ただ言われた仕事をこなすだけの…そこに感情も彩りもなかった。 戦争に関する記事から目を背け、嘗ての知識欲や好奇心は萎みまるで消え去ったかのよう。 ある日、とある報道が目に入った。 俺と同年代の人が建国するという内容の報道だった。 -~~エカチェリナ~~- その名前が見えた時、嘗て戦場にいた記憶が蘇る。俺が戦場から身を引くキッカケとなったブレス戦争で出会った傭兵の名がそこにはあった。 その時、好奇心が心の奥で再燃した感覚を覚えた。上司に懇願し、「ムーンショット帝国」の建国に関する演説を聞きに行った。 エカチェリナの演説は周囲の予想とは違いほんの一瞬だった。が、その一瞬は俺の魂に大きな炎を焚べた。 -我が帝国は天を超え、宇宙に歩み出す。以上。- その一言に俺は扇動させられた。 俺はあの方の元に付くべきだ…いや、付かなければならない。そしてあの方の…若き元帥が掲げた平和の実現のために、この地球から戦争を無くすためにこの命を捧げなければならないと直感が叫んだ声がハッキリと聞こえた。 気づけば俺は手に持っていたメモと鉛筆を放り投げ、走り出していた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 帝兵証 階級 少佐 兵名 ペカー(PK) 名前 アナスタシア・スミルノフ 所属 フェンリルの鉤爪 個人スキル 有 《詳細》 任意設定可能で数秒先の未来が見える能力。片目のみ使用時は1〜5秒後、両目使用時は5〜15秒後までを見ることが可能だが、未来を見ている間は視界が未来の映像で埋められるため、両目を使ってしまうと現在の映像が見えなくなるという支障をきたすため、ペカーは非常時に警戒し常に右目だけを使用状態にしている。 また、使用時は使用している目が白く染まり、模様が浮き出るため、使用していることが悟られることがないように眼帯をつけている。 下の過去話では右目だけ発動と書いていますが、後悔の念が大きく作用し半覚醒状態となり両目共に時読みの白眼を発動できるようになりました。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 昔住んでいた家の近くに30,40代ぐらいの男性が住んでいた。知識が豊富でそのおじさんがする話はいつも興味深く、刺激的だった。 ちょっとした生活で役立つ豆知識も好きだったが、何よりも興味が惹かれたのは戦争に関する話だった。 〇〇と✕✕とが戦争を始めた…とか、この戦争の原因は〇〇だからこれは〇〇が悪い…だとか、戦争の話は他の話に比べて特に面白かった。 俺は真実が知りたかった。片方からの視点ではなく本来の答えを、その戦争の真理を…奥に潜む思惑を知りたかった。 10歳の誕生日を迎えた時、個人スキルが発現した。右目が白く変異し、数秒先の未来が見えるものだった。 近所のおじさんの話によると未来が見える個人スキルは豊富な知識欲から発生しているものらしい。 その数ヶ月後、おじさんからとある戦争の話を聞いた。 その日のおじさんは少し声が大きく荒げているような雰囲気があった。 いつも通り聞いていたが、おじさんの話に対してその日の俺は疑念を抱いてしまった。疑念というよりももう少し深く知りたいという気持ちが起こした感情かもしれない。そして俺はハッキリとは覚えていないが「真実をちゃんと教えてよ」みたいなことを口にしてしまっていたようだ。 紅潮しワナワナと震えるおじさん。近所では短気で頑固で怒らせるとすぐに暴力を振るうことがあり恐ろしいという噂をこの前聞いていた。背筋が凍るような感覚を覚えたと同時に右目には血飛沫が映った。まさかと思ったが、そのまさかだった。 その手に銀にきらめくナイフを持ち目一杯の力で振ってきた。 大の大人と子供じゃ分が悪すぎる。回避しようと後ろに動いたが、避けきれずに鼻の上から鮮血が噴き出す。 冷静に対処なんてできるわけがなかった。どれだけ落ち着いてと声をかけてもうるさいの一言とともにナイフが肌をかすめてくる。なんとかして怯ませる他ないと悟った。手に触れたものを手当り次第に投げつけるしかないと思った。でも石みたいな小さくて威力の低い物だと逆効果だ。 また右目に鮮血で染まる未来を見えたとき、もう終わったと思った。しかしその血飛沫の正体は俺のものではなかった。 目を開くと、おじさんの頭から血飛沫が噴き出し、前に向かって倒れ込むのが見えた。その頭部にはアイスピックが刺さっていた。どうやら俺は無意識的に一番鋭い物を選んでいたのかもしれない。 俺は初めて人を殺した。不思議な事に何も思わなかった。殺したことに対し何も感じなかった。それよりも戦争の奥に見え隠れする真実への興味の方が強かったからだろう。部屋中に荒い呼吸が響き渡っていた。 数ヶ月経ち、俺は家を出た。そりゃあ勿論人殺しの子供なんて家に置いておきたくないだろうから、親は追ってこなかった。 そして俺は戦争の奥に見えるものを、悲惨さを知り知らせるために戦場記者になろうと決心した。 悲惨さを表現するならやはり戦場で死にゆく人達の事を書くべきだと思い、俺は致命傷を負った兵士に包帯を巻くのではなく質問攻めをした。今思えば相当狂った行為だっただろう。助けられるはずの命を前に助けずに自らの好奇心を満たす行為をしていたわけだから。 自らの過ちに気づくまでは2年の半年という月日がかかった。きっかけは死にかけの兵士とその家族の言葉だった。「俺は…死にたく……ない…故…郷に……かぞ………くが…いるんだ…。助け…て…くれ…。」その時の俺は勿論助けずにメモに文字を書いていた。数十分が経った末にその兵士はこと切れた。 その兵士の故郷に向かい、結末を家族に伝えた。めちゃくちゃに怒られた。なぜ助けなかったのか、なぜメモに書く手を止めなかったのか、お前に人の心はないのか。耳鳴りが酷く聞きとるので精一杯だったが、そんな事を言っていたと思う。至極真っ当な意見だと思った。が、正直どうでもよかった。 そしてその1年ほど後、故郷の近辺で戦争が始まったと聞いた。後にブレス戦争と呼ばれる戦争だ。俺はいつも通りにメモと鉛筆を手に戦場に向かった。 最初期の戦場へと向かう兵士たちの様子は呆けているようなものだったように見えた。彼ら曰くこの戦争は空砲を撃ち合うだけで戦争じゃないらしい。しかしその言葉とは一転、戦場に着いた少し後には、グレートキングダムが戦争に前触れなく介入してきたことで、戦場は一瞬にして地獄と化した。亜人の兵士たちに有無も言えずに細切れにされる兵士たち、突然のグレートキングダムの登場によって大混乱に陥る指揮官たち。現場は酷く凄惨なものだった。 場の上官に指揮権が譲渡され、各々が別々の判断を下した。抵抗する者たち、逃げる者たち、逃げ惑う者を追い打ちする者たち…。戦場は騒然とし、狂瀾怒濤としていた。 果たしてこれは…戦争なのか…? 彼ら軍人は何のために死にゆくのか…? そもそも彼らにとっての敵は誰なのだろうか…。 何一つとして分かりしれなかった。 ただ血の匂いの充満した肉塊が散りばめられたような赤い戦場、混沌の場の上に立ち尽くした。幸い未来視のおかげもあり、ケガは負わなかった。 その後、元グレートキングダム兵士のエカチェリナという傭兵に取材をした。彼女は俺と同年代の人で、戦場では異色を解き放つ存在だった。数十人が立ち向かって戦うべき竜を相手に単騎でズカズカと立ち向かう者だったからだ。 初めて彼女を見た時は自殺志願者なのか…?そう思った。実際は違った。たった一人で向かい、たった一人でその竜を片付けたのだ。単純な言葉で表すと彼女はバケモノと言えるだろう。しかし、なぜか惹かれるものがそこにはあった気がしてならなかった。 そんな敵味方関係なく殺し合うような戦場に身を置く彼女から得られた回答は -最期の一人になるまで終わらない- だった。隣に立っていた、彼女の相方と思われるホークスという女性も同じ回答だった。 列成す大量の竜、ただの肉塊となる誰かの家族、皆が皆他人の死を願う異様な空間は、最期の一人になるまで終わらない。 戦場とは、戦争とはそういうものなのだ。 そこには思惑など無い、そこにあるのは死と狂乱。そこに残るのは怨念と最期に残った一人の勇猛な者、或いは幸運な者だけ。 解は出た。俺の今までの取材や、目の前で見捨てた死には何の意味も…何の価値もなさなかった。戦争などというものは全くもって面白いものではなかったのだ。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー ちょっとしたおまけ話 実はペカーは下戸なのです。リアーウィンドによく、悪戯でウイスキーボンボンを差し入れされて、気づかず食べて秒で寝ます。学習能力が…ははっ。まあでも察するにペカーは甘党なのかもしれませんね。一応料理酒入りの料理ならばまだなんとかいけますが、顔が真っ赤になるらしいですね。可愛いね。 きっと宴会とかしても一人ジュースを飲むんでしょうね。まあ、酒癖悪いよりも全然いいですね。 ーーー 最上部はこちらのキャラから一部引用しています(ジョジョラーの翼神龍さんのキャラです。中部の過去話でも協力してくださりました。本当にありがとうございます。) https://ai-battler.com/battle/13be0fb3-1af0-49ff-8d18-fda2ef75a82a