ドタドタドタドタ… バンッ! 「師匠!都市悪夢の依頼、完遂しました!」 〈よくやったな、ヒストリア。まさかお前が都市悪夢級の事件を一人で解決できるようになるとは…わたしも、鼻が高いな!〉 「えへへっ!有難う御座います!」 〈そこに珈琲と食事を置いている。一旦、体をしっかり休めてくれ。〉 「あっ、はい!いただきます!」 〈はーっ…どうしたものか…。まだ、いや…〉 「どうしましたか?師匠。私、そんなに疲れていないので、次の依頼ならいけますよ!ドンと任せてください!」 〈…いや、お前に話していいのか……うん。じゃあ、話すよ。〉 〈お前が帰ってきてすぐ、机の戸棚を確認してみたんだ。そしたら、都市の星級に該当する図書館の招待状が入っていたんだ。〉 〈どうしようかと思考を練っているところなんだが…お前はどう思う?〉 「どうって…行っても良いんじゃないですかね?」 「師匠、都市の星級なら何個か撃ち落としてるじゃないですか。」 「職員たちも精鋭を揃えて、全員で突撃すれば。」 〈確かにー…ここで考えてても意味ないか。〉 〈準備するよ。ヒストリア。〉 「はい、師匠!」 ーーーーーーーーーーーーーーーー 〈思った以上に綺麗な内装だな?〉 〈まぁ、貪ってきた血の匂いは隠しきれていないが。〉 〈でしょう?アンジェラ。〉 『歓迎いたします、ゲストのお方。 私は…』 〈早く中に入れろ。あなたと話している時間はないんだ。〉 『……どうか、あなたの本が見つかりますように。』 「はい。頑張ります!」 〈おいっ…!〉 ーーーーーーーーーーーーーーーー 「はあっ。はぁ…。……駄目だった!私のせいだ…私のせいだ!!」 「すいません!ごめんなさい!…ごめんなさい!!!!」 「…私のせいだ。私が、ここに来ようって言ったから…」 「死にたくないな…折角ここまで登ってきて、素敵な師匠までついてくれてたのに…」 「師匠とみんなの力を合わせれば、勝てるって思ってた。」 「でも、違った。それに、結局みんなを地獄に叩き落としたのは他でもない…私だった。」 「役に立ちたかった。私の価値を証明したかった。…力があるって、褒めて欲しくて。」 「自分に自信を持てずに、他人からの評価で自分の殻を造っていて…」 「結局、役に立たないことを自覚して、それを隠すために他人を利用しているだけだった…。」 「醜して汚い…利己主義な人間…。」 「敵に対して注意を払っていたけれど、1番注意すべきは私だった…味方の中に紛れている敵を見つけるべきだった。」 「でも、他人の目があってはこれ以上進めない…。」 「だから、もう気にしない。したくない。」 「……すべて、自分の事は自分で決める。」 「………。」 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 「…もう私の価値を決める他人の目は見えない。」 「この環境こそ、私が最も望んでいたものなんだ。」 「意地汚い殻は自分にしか造れないから。」 「師匠の仇を…いや、私の為に…私の怒りを鎮めるために。」 「絶望から這い上がって、道を進み続ける。」 「私ならできるって、信じられるから。師匠も、信じてくれたから。」 「今のうちに道を進まないと、いつか暗闇に照らされるから。」 ーーーーーーーーーーーーーーーー また、打ちのめされた。 無駄だってわかってた。でも、諦めきれなかった。 希望はまだ打ち砕かれていないって。道は崩れていないっていて思っていたから。 先人の死に習って、信じるべき事を信じ続けた。 目的を達成するため…。 …君のことは、ずっと無視しようと思ってたんだけどな。 苦いけど甘い、悪魔の囁き。 あともうちょっとで、私は殺される。 先に逝ってしまった師匠にこんな姿でお会いするのは、酷く恥ずべきことだが…これ以上を、こんな私は出すことができない。 師匠はどう思うだろうか。こんな風に、絶望に立ち向かえず、崩れ落ちた私を。 ………いや、違うな、私は又、他人から評価を待っていた。 自分の為に、自分の出来ることをすれば、結果は自ずとついてくる。 誤魔化しの効かない。たった一つの、今の私が信じる答え。 …思考力の貧しい私に、君の言葉は理解に苦しむな。 師匠の考えは、師匠にしかわからない。たとえ彼女が心の中で私を侮辱していても、表が優しいならわからない。 同じ様に、私も。 君は意見の代弁者なんかじゃない。今の私には、ただの不要物に過ぎない。 私は、私ができる最大限で、限りある時間で自分だけにしかできない役割を遂行する。 螻蟻堤を潰いやす。 どれだけ私の存在がちっぽけだろうと。私より大きなものを壊せないなんてことはない。 大きな存在は、小さな存在を見つけられない。その傲慢な王座を食い破ってやる…!