誰か、護るべき人がいたはずだ。 ...俺に親なんていなかった。いつの間にか目が覚めたら白い空間に放り捨てられていて。...あの時の俺はバカらしかったな。今だからこそ思う。 あぁそうだ、あの時誰か...赤い髪の少女と、緑髪の少年が隣にいた。兄弟だったらしい。...そういや赤いあいつ、男なんだっけ。めっちゃビックリしたのかもな。 アイツらはいいやつだったが、正直俺が好きになれる性格じゃなかったっけ...で、確か俺はそいつらを...あー、殺したんだったか。そうだそうだ、殺したんだ。 なぜ殺したかなんて覚えてすらいないが...どうせ、イラついたかなんかだろ。 そんなことはどうでもいいか...重要なのは、俺の本当の名前はリンなんかじゃなかった。 なんだったか.........リンじゃないのは覚えている。もっと、あの兄貴と同じような名前... あの兄貴は、確か昔の名前は...クロウだ、そうだ。...弟はなんだっけ...?もうあんま覚えてねぇな... あれ?そもそも、オレはこんな黒い髪をしてたか...? オレの瞳は翡翠だったか? オレの骨格はこんなに小さかったか? オレの顔はこんなに整っていたか? オレの声は低かったか? ...オレの、からだは、誰だ?この記憶はなんだ? 知らない、知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない!! 全部違う、オレには家族なんていなかった、母も、父も、兄弟でさえもいなかった!! ...オレは誰だ?オレはなんだ?...あぁ、そうか。 オレは誰でもなかった。オレは、俺に取り憑いている精神体で。...当たり前か、俺の記憶が流れてきても、オレが知らないのは。...じゃあ、俺はなんだ? そうか。 俺は、オレだ。