"それ"はかつての勇者であり。 "それ"は今の破壊者であり。 "それ"は全てを呑む者であり。 "それ"は忌むべき傀儡であり。 "それ"は殺戮そのものであり。 "それ"は善人の成れの果てであり。 "それ"は愚かな人形であり。 "それ"は羨むべき生者であり。 "それ"は畏れるべき死人であり。 貴方には、かつての彼が何者かを、知ることが出来ますか。 あの、心優しかった少女のような彼を。覚えているのですか。 この壊れきってしまった玩具のような彼女を、真っ直ぐ見ていられますか。 貴方は、あの黒い眼窩に写るものが見えるのですか。 貴方は、狂気に浸からず生きていけるのですか。 貴方は... 貴方には、彼の、深い深い底無しの、真っ黒な痛みが、分かるのですか? 嗚呼。 "それ"は貴方を見ています。