アウラは古くから魔法使いを輩出する名家に生まれた。生まれつき強大な魔力を宿していたが、それは彼女にとって祝福ではなく呪いに近いものだった。幼いころから感情の起伏に連動して魔力が暴走し、周囲を傷つけることがあったのだ。泣き出せば花瓶が割れ、怖がれば窓が吹き飛び、怒れば部屋が炎に包まれる。 最初のうちは両親も「制御を学べばきっと立派な魔法使いになれる」と励ましてくれた。だが暴走は次第に激しくなり、ある日、村はずれの森で遊んでいたとき、アウラが恐怖に駆られて放った魔力が小さな山火事を引き起こしてしまった。幸い人命は失われなかったが、森は焼け、村人たちからは「災厄の子」と囁かれるようになる。 両親は表向きは守ってくれたものの、心の底では彼女を恐れるようになった。距離を置かれる日々が続き、友達もできず、アウラは孤独と罪悪感に苛まれるようになった。そのころから、彼女は「ごめんなさい」が口癖になり、何かをする前から怯えて謝る癖がついてしまった。 そんな彼女に唯一優しく接してくれたのが、同じ村に住む幼馴染の少年だった。彼はアウラを恐れず、いつも一緒に遊び、泣いていると「大丈夫だよ」と笑ってくれた。ある日、アウラがまた暴走してしまったとき、彼は怯えるどころか彼女の手を握りしめ、こう言った。 「アウラは怖くない。だって、本当は誰よりも人を守りたい子だから」 その言葉は、孤独に沈みかけていたアウラの心を強く支えた。彼女は「自分は怖い存在ではない。いつかきっと、この力を人のために使いたい」と願うようになった。 しかし、現実は厳しかった。周囲の目は冷たく、彼女の力を制御する術も見つからない。気弱な性格は変わらず、戦うことには常に怯えてしまう。それでも、心の奥底には「誰かを守りたい」という願いが確かに燃えている。 アウラの気弱さは弱点であると同時に、彼女の優しさの証でもあった。そして、その優しさこそが、いつの日か彼女の秘められた魔力を真に解き放ち、災厄ではなく希望へと変える力になるのだった。