人知れず、そして何も見ず、それはなし得ない 一頻り騒いだ後の顛末、自由の代償 心の解放、希望の魅せる地獄 物語はまだ始まったばかりだ─── 世界はネットとインプラントによる大きな転換を迎えていた、と言うよりはもはや元もの世界の様相を見間違える程にその容貌を変えていた アンバール、彼女もその例外では無い 遠く離れた……遠い遠い世界にはまた違う未来があるのかもしれないが、これから起こってしまった事象に対する回答にはならない 鋼物語 あんばーるオーディナリー そう遠くない未来に、何かが変わる気がする─── ───考えが、思考があまり上手く回らない が、これは何か嫌な事があったとか、 それこそ私の脳味噌がイカれてしまった訳でもない… 目の前には真っ暗な、いや─── 真っ白に照らされた深夜の森が広がっている 今、私が立たされている状況は? 何がどうなっている? ・・・立たされているのはどうやら車の上らしい いや、車に乗れないのか? いやいや、乗れる乗れない関係なしに何なんだ?この状況は…… 冬のように寒い……何か、恐怖を感じる 今は冬ではなく夏のはずだが…… そもそもこの車はなんなんだ? というか誰も私に気づいてない……のか? ・・・・ 少し落ち着いて考えたが異様なんて軽く超えたこの状況に何をすればいいか分からない自分がそこにはいた この車は何処に向かっているのか、それも気にした方がいいだろうがそもそも本当に何故車の上に佇んでいるのか、これが謎だ 謎とか言っても今も漂うこの、えもいえない恐怖は何なのだろうか 本当にこれから何が起ころうとしているんだ? ───────────────────── 燦々と輝く太陽、そして広がる荒野……と街 そしてその街へと続く道を車で向かっているのが私だ と言っても街へは向かっていない 街を超え、その近くの発電所へ向かうのが目的だ しかし見れば見るほど、一面が茶色い そして暑いし暑い 暑いのはなんでもいい、しかしどうしたものか これからの、これから起こる“事”をどうするか…… いや、“事”が起こるかなんて知らないが…… 起こって欲しくないし ───そう考えれば考えるほどに不安になる 以前、車は荒野を難なく走っている 何も不安になる事はない、そう確信できる……できる 何も先が見えない……そんな日が来るのも近いのかも ハンドルを握る手から少し汗が滲む もう私は自分の道を決めた……決めた道を、走るだけ……何も恐れる事は…… ───明るく今も輝き続ける太陽…… 身が暗みそうな程、焼き尽くされそうな程に眩しい まるで棘にでも刺された様に全身が痛い……