息子のヒエンと母親のマガチヨの物語 子供の頃。周りに威張り散らす根無の俺を叱ってくれた。 「威を笠に着ず、皆を守る傘に。仁義と尊敬、ですよ」 あんたみたいな人を大切にすりゃあいいんだよな、御袋。 ――第四階層執行者の検閲記憶、1 抗争で親父が死に、緑傘会が揺らいだ――その夜のこと。 「大丈夫ですよ、ヒエン。母様が、傘になりますからね」 俺を抱き締める御袋は、揺らがぬ根を張る大樹のようで。 ――第四階層執行者の検閲記憶、2 マガチヨ姐御の新・緑傘会。威勢は、以前に増して鮮烈。 「一丁かましてしんぜましょうや。代替わりの御挨拶を」 淑やかだったあの御袋が、親父を接ぎ木されたみたいに。 ――第四階層執行者の検閲記憶、3 他人への敬いを忘れず、花を育てるのが好きな人だった。 「外道共。緑傘会にマガチヨありと、煙嗅ぐ度思い出せ」 剪定に、御袋は熟れていく……俺へ、背中を示している。 ――第四階層執行者の検閲記憶、4 【マガチヨ】 義の有無なんぞ、問うは野暮。道理違えた、それのみ真。 この大悪党にケジメつけるは、不孝に非ず、正しく仁義。 さあ、さあ、さあ――素っ首土産に跡目を継げや、若頭。 ……大きく立派に育ったこと。母様に見せてね、ヒエン 【ヒエン】 道に外れた渡世にこそ、道理が無くちゃあ立ち行かぬ。 この筋を誤魔化さねえのが、手前に教わった俺の仁義だ。 ……地獄で待っててくれ。俺も着いたら肩揉むよ、御袋。 罪の叢雲、罰に風――花実を散らせ、散散四葩。