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【Rank.S-6】レン-IB-HA373/コーラルと調和したセンチネル

以下のレポートは技研『アイビス』により管理されています 閲覧にはクリアランスレベル6以上の承認が必要です 【強化人間:IB-HA373】 名前:抹消済み 年齢:17歳程度 1.概略 技研『アイビス』にて、初のコーラルとの適合を果たした女性 卵子をコーラル濃度37.3%の溶液で培養したデザインベビーである 多量のコーラルに曝露されても生存でき、またコーラルの変異波形体の『声』を聞く事が可能。(後者については本人による証言のため未確定情報) コーラルを源としたデバイスならば思念により操作ができ、同様にコーラルジェネレータ搭載の機体であれば人体拡張のように滑らかに操縦することが確認できた 反面、肉体的及び精神的には非常に不安定である 呼吸や消化といった生体能力はかろうじて機能するものの、自力で直立や歩行ができない・免疫力が著しく低く病気になりやすい・全体的に脆く、怪我しやすく治りにくいといった欠点が目立つ 他にも発声機能無し・生殖能力無し等、あくまで生物学的には障害といえるものがあるが、彼女にとっては無用の長物であるため、むしろこれらは長所と言えるだろう (なお、必要があればデバイスを通じての意思疎通は可能) 精神的には知能年齢が低く(検査では8歳程度)、高い知性を持ちながらも限定的な記憶障害を抱え、それらが相まって言動にちぐはぐさが認められる。また重度のコーラル依存症を抱えている 2.取扱 あくまで『生体CPU』として接すること 彼女からのいかなる要求も、全て『前向きに検討する』と保留すること 食事は全てコーラル30%溶液をペースト状にしたもののみ与えること。その際、味付けや食感を加えることは禁止 3.配属 防衛課に配属させ、技研『アイビス』の拠点防衛にあてる。機体『エイジス』を与え、これを持って守衛としての任を果たさせる 機体調整のため、『ハービンジャー』の模擬戦相手もしくは『NEST』のシミュレーションに参加させてもよい 4.禁止事項 倫理観や共感能力の高い職員との接触は禁止する。過度な交流も同様に禁止する 彼女の見える範囲で食事をとってはならない。私語も極力抑え、決してポジティブな話題を聞かせてはならない 一切の娯楽を与えてはならない 5-1.補遺 本人から「IB-HA373」以外の呼称が欲しいと要求あり 規定に従い保留にしたものの、複数回に渡り同様の要求を続ける 再教育プログラムを施すことを決定 5-2.補遺 再教育プログラムの結果も虚しく、本人が「レン(Renne)」と自称し始める さらなる再教育を施すも自称することを続けたため懲罰房に収容 職員は「IB-HA373」もしくは「373」と呼称を徹底すること 拠点防衛用大型機体【エイジス】 シリアルナンバー:IBs-04 1.概略 技研『アイビス』開発の有人機 当初は無人運用の予定で開発されていたが、AIでは扱いきれずコーラル変異波形体も誕生しなかったため、一時的に有人操作できるよう設計された 後述の理由により『IB-HA373』しか操縦できないワンオフ機 2.機体構成 【このセクションの閲覧には、より高ランクのクリアランスレベルが必要です】 3.武装 【このセクションの閲覧には、より高ランクのクリアランスレベルが必要です】 4.注意 コーラルジェネレータ、コーラル武装により機体内部は常に致死量のコーラルで満たされている また、「IB-G7」:コーラルシールドや「IB-RA」:コーラルアサルトアーマー展開中は機体内部コーラル濃度は更に増し、これに耐えうる防護服は現時点では完成していない為接近してはならない 現状この機体を稼働・操縦できるのは『IB-HA373』しかいないため、新たなコーラル変異波形体の誕生もしくは高性能AIの開発が急務である ───────── 【インシデントレポート】 ・インシデントの内容 シミュレーション〈NEST〉でのSランク昇格戦にて、昇格の条件が果たされた直後の出来事 強化されたはずの技研のセキュリティをまたもやすり抜け、『IB-HA373』に直接メッセージを送った者がいた模様 無許可での『エイジス』の起動が確認されたため制圧行動を試みるが、なぜか無人機開発部門の『ハービンジャー』が現れ周囲にコーラルを放射 制圧行動に移せないまま、『エイジス』の起動が完了。そして脱走を図った 数時間後、IB-HA373は帰還を果たす 機体の一部に損傷がみられることから実戦を行ったように思える IB-HA373の処分を行おうとしたところ、これまたなぜか現れた無人機開発部門の部長に止められる。曰く、「ハービンジャーからのお願いだ。殺すのはやめて欲しい」との事 立場上、向こうが上なのでとりあえず処分は先送りに ・インシデントに対する対策 数々の命令違反、無断での『エイジス』の起動及び発進、戦闘の報告の怠りなど、これらは技研『アイビス』への裏切り行為とみなされる。よって、IB-HA373を殺処分する事が妥当だと思われる。また、数々の妨害行為を行った無人機開発部門にも強く抗議する。厳しい処分を求める 以上、インシデント『IB-HA373の脱走』のレポートとする 技研『アイビス』 防衛課 氏名:×× ×× ───────── 防衛課の要求は全て却下 また、防衛課が行っていた非人道的実験の数々が技研の倫理委員会の目にとまり、防衛課の職員のほとんどに処分が下され事実上の解体となる 防衛課の業務及び開発は暫定的に無人機開発部門に引き継がれることになった “レン” いい名前だと思う。ハービンジャーが与えた名だというが、彼女と良好な関係を築いているようで何よりだ 技研の開発品である以上IB-HA373という名前は消えることはないが、それでも“レン”が彼女の名前であることを認めるよう本部に掛け合ってみようと思う 技研『アイビス』 氏名:■■ ■■ ──────在りし日の記憶 『……聞こえますか……』 「…………」 『……私には分かります。あなたは私たちを取り込んだ人。私の声が届いているはずです』 「…………」 『やはり、だめですか……』 「…………!…………!」 『!?』 『私の声が聞こえるんですね!よかった……!』 「…………」 『えと、初めまして。私はハービンジャー、コーラルの変異波形体です。あなたは?』 「…………」 『……ひょっとして、話せないのですか?でしたら、思ってみてください』 「…………」 (…………こう?) 『……あぁ、やっと……私の声が聞こえる人が……』 (……よく、分からない……) 『あなたとこうして会話するのも何度目になるでしょうか。私には喜ばしいことですが、あなたにとってもそうであると嬉しいです』 (……でも……会う度に……けんかしてる……) 『あぁ、あれは模擬戦ですから。喧嘩ではないですよ』 (そう……なの……?) 『えぇ。その証拠に今楽しく会話しているじゃないですか』 (楽しい……) 『……そういえば。初めて会った時の質問の答え、まだ聞いていませんでした』 (……?) 『私はハービンジャー。あなたは?』 (名前を聞いてるの……?あい、びー、えーっと、373……) 『…………』 (……ハービンジャー……?) 『私、考えてきました!』 (……びっくりした。なにを……?) 『あなたのお名前です』 (……?あい、びー……) 『そんなものは名前じゃありません!いいですか、今からあなたはレンヌです!』 (……レンヌ……?) 『はい。この近辺の昔の地名です。綴りは-Renne-です』 (…………) 「………………レ……」 『!?……発声機能が……!』 「…………レ……ン…………」 (むずかしい) 『……あなたの能力を考えていませんでした。別の名前を考えます』 (ううん、いいよ……これで……) (……これが、いいの……誰かからもらった……はじめてのもの) (……レン……これが、わたしのなまえ) ────── ────── ??? 赤い光が広がる宇宙 禍々しくそれでいて美しい粒子が、世界を無限に染め上げていく コーラルリリース たった今、それが成し遂げられた 『……すごく……きれい……』 コーラルに溶けた意識のうち、一際無垢な心を持つ烏は思う 『……いまなら、わかる……わたし……いま、とてもたのしい…………』 Δ:【 LAST RAVEN 】 …最後の一羽と共に、紅を纏う烏達は世界を渡る。 何れその名の真の意味に、気付く時まで…。