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「奇襲部隊」交戦状況

「…なーるほど。」 邪竜の傷口から吹き出した血が次々と「獣」に変化していくのを対物ライフルのスコープ越しに眺めていた金髪の女性は何かを考え込んだ後、ライフルを下ろし呟いた。 「…一人辺り10匹ぐらいずつ殺ればいけますかしら?」 「イヤ無理だろ。そもそも俺らの仕事は奇襲だ奇襲。正面突破じゃないだろ。」 自身の意見を否定されて頬を膨らませながらふてくされる彼女を横目で見ながら作曲家兼DJでもある男、「幸田 奏」はため息をついた。 「というか、鬼瓦の奴も散々言ってただろう?皆がアイツを引き付けてくれている隙に俺たちがあのドラゴンを倒さなくちゃいけないんだよ。」 「やっぱりコソコソするのは性に合いませんわ!やっぱり今からでもわたくしが直々に…」 「おいおいおい、待て待て待てッ!なんでお前はいっつもそうなるんだよッ!」 奏は両手にそれぞれ多銃身式連発銃を装備して走り出した(そもそもそんな重いモノを二丁も装備して走るなど普通の人間には困難なことであるが)彼女の軍服の裾を掴んで引き留めた。 「大丈夫だって!パッと見ただけだけどアイツらはすぐにくたばりそうな奴らじゃなさそうだったし、鬼瓦も付いてる。それに…」 そこまで言い切ると奏は空を見上げ、彼女もそれに釣られるように空を見上げる。 「あれは…戦艦ですの?この国にしては珍しく対応が早いですこと。」 「いや、どうやらあれはお隣さんの国の物らしい。こっちの異常事態を確認した瞬間に文字通り「飛んで」来たらしいぜ。」 彼女は目線を戦艦の砲撃に蹴散らされる「獣」の群れに目を戻す。 「こっちの「対魔術課」はなにやってるんですの?そろそろ出てきてもいいんじゃありませんこと?」 「そりゃあ、うちのお偉いさんが許さないだろ。少なくとも「自分たちの身の安全が確保できるまで」はな。」 奏は皮肉的にいい放ち、彼女は苛立ったかのように舌打ちをする。 「上がこんな調子だから今回みたいに「魔女」たちが好き放題暴れまわるんですわ。ハァ…「赤」と「青」の魔術師がいた頃の平和な時期が懐かしいですわね。」 「そんなこと言ってもしょうがないだろ?「赤の魔術師」は「青の魔術師」に殺されて、肝心の「青」も行方知れずだ。」 「…なんだかその話すら胡散臭く感じてきましたわ。そもそも「青」が「赤」を殺したなんて本当なんですの?今思えば、あの一件は不可解なことが多すぎましたわ。」 「赤」と「青」は二人とも国家組織である「公安対魔術犯罪課」に属していたこともあり、奏や彼女を始め、多くの人間や魔術師は「赤」と「青」の魔術師の活躍を噂でしか聞くことはなかった。しかし、二人の噂はあちこちに広まって話題になっていたこともあってか、当時の人々の「青」への怒りは凄まじいものであったのを奏は覚えていた。 「それはわからねぇ。けど、今俺らがやらなくちゃいけないことは「獣」の魔女を止めることだけだ。」 「そう…ですわよね。えぇ!こちらの準備はよろしくてよ!それと…」 「どうやら皆さんの準備もバッチリみたいですわよ?」 「よーし、完璧だな。」 二人は背後に控える「他のメンバー」と視線を合わせのち、武器を構える。 「さーて、ブチかますとしますか!」 「鉛の雨を降らせてあげますわ!」