さようなら。 楽しかったよ! …ありがとう。 さらばだ 私の…私達兄弟の唯一の友人よ。 「空は青いな」 初老の男性が槍を杖代わり付きながらふとつぶやく。 フードを深くかぶったその中には蒼い瞳だけが見える。 必要最低限の荷物が詰め込まれたバックパックから水筒を取り出し、一口飲む 彼には必要ないその行動、だが彼が人として生きていくのに必要な行動。 「…」 彼は空を見上げる。 空は奇麗な青色。 吸い込まれそうなほどに奇麗な青。 彼らと一緒だった時と同じ心地いい空間。 「行かなくていいのか?」 彼が背負うバックパックから小さな白い竜がひょこっと顔を出す 「いいんだ。俺はもう、彼らとは会えない。」 初老の男性はバックの中の竜を抱え上げる。 「そういうお前も行かなくていいんか?」 竜は答える。 「いずれ還るさ。でもまだその時ではない。」 竜は男性の手を振りほどき、芝の生えた地面に着地する。 「んじゃそろそろ行こうか。」 竜の周囲から葵の色の粒子が溢れ出る。 「そうだな」 初老の男性が青銅の鍵を懐から取り出す。 その鍵を空中に刺し捻る。 「「解錠」」 「「蒼天」」 □:青銅の鍵 彼にしか使えない鍵。 とある竜と一緒に使う事によりはるか遠く、時間を超えての旅が可能になる。 彼はその鍵を使い、様々な時間、場所、世界へ渡る。