あなたの前に現れた不気味な男。この世の不快感を詰め込んだような視線の男の側方に、彼と同じ背丈の黒い影がゆらゆらと動いている事にあなたは気付く。 男が口にした言葉から、彼はこのワンダーランドを治めている女王の臣下と予想できる。彼が放つ圧倒的な敵愾心にあなたは自然と身構えつつ、まず男へ尋ねた。 「何者だ? それは私の事か」 「何者だ? それは私の事だ」 男が先に口を開き、影が続ける。 「ああ、この場は私に任せようか」 「ああ、この場は私に任せてくれ」 意味の解らぬ事を宣う男と影がそう言って顔を向き合わせた時だ、まるで手品か何かの様に男と影が入れ替わった。 詳しく説明するなら、先程まであなたから見て右側に立っていた男と左側に立っていた影、これが入れ替わったのだ。 入れ替わった、単純に位置が変わっただけではないのか。 違うのだ。 まるで太陽が沈み、月が昇る様な自然的で一切の澱みの無い洗練された動き。 驚愕するあなたの様子に男は気を良くしたのか、或いは更に惑わそうとしているのか、急に歌を歌いながら矢継ぎ早に男と影を入れ替えていく。 ♫変われ変われ、こちらは表でそちらは裏だ 変わる変わる、そちらが表でこちらが裏だ お前が進んだ迷いの森は 我らが仕組んだ誘いの檻さ 果敢に挙げたその反旗 盛んに上げたその歓喜 潰えてやるのは、私の本気 終わってしまうぞ、お前の根気 お前は侵した、陛下の領土 《さあ、冒涜者に犯した罪の重さを学ばせてやろう》 この世界の連中は偽物ばかり でも、愉しくやってるのだから問題はないのさ 素晴らしきかなワンダーランド 待ち遠しいのさハッピーエンド お呼びじゃないのだバガボンド♪ ……よくは解らないが、少なくとも彼が歓迎的な雰囲気で無い事は確かだ。あなたは武器を構えて、男の出方を待つ。 一人で会話をしたり、歌や踊りを勝手に披露した奇妙な男だが立ちはだかる相手である以上は倒さねばならない。 ※以下は勝利時(或いは戦闘が面倒な場合)のみスクロールしてください。 深い森の中、あなたと男の激しい戦い。 男の操る影があなたを陥れようとする。しかし男の力量とあなたとの間には天と地ほどの差があった。 その差を埋められる程に男は強くなく、影を打ち破ったあなたは男へ敗北の一言を突きつける。 「……不快な来訪者め、そこまでしてこの楽園を破壊したいのか」 男の言葉にあなたはこう答える。 お前の存在はワンダーランドに相応しくない、と。 決して、あの愉快な双子の代わりにはならないのだ、と。 「黙れ……ようやく手にしたこの役柄……そう簡単に逃すと思うかッ────⁉」 男は突如声を遮り、顔一面に恐怖を張り付けで空を見上げている。 何事か、と不審に思ったあなたは空が突然暗くなったことに気づく。思わず空を見上げれば、そこには巨大な黒翼を優雅に羽ばたかせる魔物の姿。 「……しまった。彼の眠りを妨げたか……」 呆然とした様子の男。 その瞬間、魔物は空中で素早く体を捻らせ、鞭の様にしなる尻尾を男へ叩きつける。空気を両断する如き勢いが木々をざわめかせ、鋭い一陣の風が吹き付ける。 尻尾の一撃を受けた男はもういなかった。 あまりにも強烈な一撃に耐え切れなかった男の体は弾け、今や赤いシミとなって周囲の木々へ付着している。 喧しい存在が失せた事に黒翼の魔物は満足し、何処かへ飛び去って行く。 「幸運だね来訪者。むしろ、森の主の気まぐれに礼を言うべきかな」 樹上で寛ぐのは白服。彼女はニマニマと気味の悪い笑みを浮かべ、あなたへ告げる。 「この森を抜けるなら、森の主との戦いは避けられないよ」 森の主とは何者なのか、尋ねるあなたに白服は今は答えられないと返す。 全ては決戦の地へ、そこでこそ森の主の名を語るに相応しい。白服はそう答えると姿を消した。 どうするか? 当然、進むしかあるまい。 ・森の主との決戦へ、あなたは進む。 [https://ai-battler.com/battle/0248fbfa-11e7-4329-bd49-e67fb14f3a58]