彼は、自分の出生の記憶をほとんど持っていない。何もかもがぼんやりとした霞のように、彼の頭の中に残っている。唯一確かなのは、彼が幼い頃から深い森の中でひとりで過ごしていたこと。そして、そこには誰もいなかった。彼の周りにはただ森の音、風の香り、そして絶え間ない孤独だけがあった。 彼は心優しく、その肉体には「天使」と「悪魔」の血液が混じり合っており、世界初の「インプター」としてそこに存在していた。しかし、幼い彼にはよく理解できていなかった。彼は、力の存在には幼い頃から感じてはいたが、それをどう扱うべきかは特に深く気にせず、山で野宿をしながら、ただ日々を過ごしていた。その中で、彼は自然とともに生きる術を身につけ、薬草や医療知識を豊富に習得していった。人間社会とは離れた場所で過ごしていたが、そこがどのような場所か気になっていた。 ある日、彼が都会の上空を飛んでいた時、偶然にも交通事故の現場に遭遇する。その事故の現場には、まだ幼い少女が倒れていた。彼女は命を落としかけていたが、その状況を見た彼は、心の中で強く「助けなくては」と感じていた。彼の力は、人を守るために存在していると信じていた。彼は悠花のために、その力を使おうと決意し、躊躇うことなく、悠花に天使の血を注ぎ込んだ。天使の血は、生命の象徴であり、その血を注ぐことで、悠花の命を救う事ができた。彼以外のその場にいる人は、彼女の体に新たな力が宿ったことには気づかなかった。 悠花が意識を取り戻すと、名前を聞かれた彼は偽名で海斗と名乗り、その場から静かに立ち去った。だが、彼女のことを放っておけず、肉体や能力を鍛えながらそれらへの理解も深めながら、彼女が危険な目に遭わないように裏で彼女のことを守っていた。危なっかしい悠花が巻き込まれそうな危険な事件や状況に対して、愛斗は影のように静かに介入し、彼女の命を守るために動き続けていた。 悠花と彼が14歳になった頃、彼女と親友の希果が誘拐事件に巻き込まれ、命の危機に瀕する。誘拐犯たちは二人に暴行を加え、悠花には悪魔の血を注ぎ込む実験を行っていた。その結果、悠花の中で天使と悪魔の血が混じり合い、「インプター」としての肉体に変化が始まり、悠花の命は高熱を出しながら危険な状態に陥る。海斗は他の事件の対応で遅れたが、急いで駆けつけ、悠花たちを助けるために戦闘を開始し、周囲の者を倒した後、海斗は悠花に「インプター」である自分の血を注ぎ、血液を操作することで彼女の体調を安定させ、重傷を負った希果には天使の血を与え、彼女の命を救った。 また、悠花は過去の記憶が呼び起こされ、幼少期に彼女を助けたのが彼であるということを思い出し、希果は命を救ってくれたことに感謝の気持ちを抱くようになった。 誘拐事件後、海斗は悠花と希果と共に悠花の家でシェアハウスをし、暮らすこととなる。海斗は偽名である名を捨て、彼女らによって「辻村・C・愛斗」と命名される。愛斗は現代家具に慣れられるのか、特殊な力を持ちながら平穏に暮らせるのか、愛斗は学校に通えるのか、乞うご期待。