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【熱狂の処方箋】白峰 アヤメ

Sujet #26 : « Arès » Nom: Ayame Shiromine Sexe : Féminin Arcane (min) : 5 Bâtons Concept d'octroi : « Catharsis » ───────────────── 属性: 中立・悪 ────────────────────       「熱狂の処方箋」 満員の観客席から、声が聞こえる。 天井から降り注ぐスポットライトは、 全日本選手権の決勝戦のリングを、 神殿のように煌々と照らし出していた。 ​白峰アヤメ、二十歳。 彼女の身体を包むのは、 汚れなき純白の道着。 未来の金メダリストと持て囃された その少女は、今、 人生で最も退屈な時間を過ごしていた。 ​「――試合終了!」 ​ブザーが鳴り響く。 だが、アヤメの足は止まらなかった。 目の前でマットに崩れ落ち、意識を失いかけている対戦相手――格上のベテラン選手。その顔に浮かんでいるのは、勝利の喜びでも、敗北の悔しさでもない。ただの、底知れぬ「恐怖」だ。 ​(足りない) ​アヤメの脳裏では、 冷たい警鐘が鳴り響いていた。 平和なルール。安全な審判。手加減という見えない檻。そんなもので囲まれた競技なんて、彼女の心を蝕む退屈な猛毒でしかなかった。もっと深いところへ。もっと剥き出しの、命が擦れ合う音が聞きたい。 ​「……まだ、終わらないよ?」 ​冷徹な、無邪気な呟きとともに、 アヤメの拳が再び振り下ろされた。 パキリ、と骨の砕ける乾いた音が響く。悲鳴をあげる間もなく、対戦相手は完全に沈黙。 歓声が、凍りついたような静寂へと変わる。 カメラのフラッシュが、狂気に満ちたアヤメの白い短髪を冷たく切り取った――。 ​それが、彼女の「表舞台」の終わりであり、本当の始まりだった。 ​警察の取り調べも、世間のバッシングの嵐も、アヤメにとってはどうでもいいことだったが。 ただ、戦いの舞台から「永久追放」の烙印を押され、すべてを奪われたその空白の時間が、彼女の内なる空虚感を爆発させようとしていた。 ​『――お前の中に眠る飢えを、本当の戦場で満たしてみないか?』 ​手を差し伸べたのは、表社会の目を盗み地に巣食う、胡散臭い闇のスポンサー達だった。 連れて行かれたのは、消毒液と鉄の臭いが鼻をつく、地下深くの密閉された実験室。そこで彼女は、禁忌の人体実験の被験体となった。 ​麻酔のない手術台の上。 脊髄を焼かれるような 激痛とともに彼女に写されたのは、 神代より血に飢える狂乱の戦神、その残響。 ​「あはは……っ、これ、これだ!」 ​意識が焼き切れる寸前、 アヤメは声を上げて笑った。 体内で暴れ狂う神の呪詛が、彼女の神経を逆なでし、永遠に満たされない戦闘欲求を植え付ける。生半可な日常ではもう二度と心を満たせない。傷つき、血を流し、命を奪い合う激しい闘争の「情熱」だけが、彼女を正気に保つ唯一の鎮静剤(カタルシス)となる。 ​___数年後。 地下デスマッチの血塗られたリング。 ​「――試合開始(Ready Go)!」 ​鉄に囲まれたリングで、 アヤメは再び真白なスポーツウェアを纏い、 対戦相手の巨漢を見据えていた。 全身から血を流し、骨が軋むほどの痛みが、彼女の脳内で最高潮の快楽とエネルギーに変換されていく。戦神の呪いが甘美な歌声のように彼女の背中を押し、内なる空虚感を綺麗に満たしていく。 ​「さあ、もっと来て?わたしを満足させて  ___綺麗に鎮めてみせてよ!」 ​無邪気で、しかしこの上なく 残酷な笑顔を浮かべ、彼女は跳んだ。 表舞台から弾き出された狂犬は 今日も純白を鮮血に染め上げながら、 最高の「競技(スポーツ)」の 果てへと、突き進んでいく。