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【小さなギタリスト】りな

テレビで見たギタリストに憧れて最近ギターを弾き始めた。 いつか上手くなりたいという。 リタ(小学生時代)「未来のわたしなんだって〜…どんな感じなのかなぁ…」 【リタシリーズ】 リタ↓ https://ai-battle.alphabrend.com/battle/39a388d0-3efa-468a-a15c-3007a0f5cd55 リタ(寝不足)↓ https://ai-battle.alphabrend.com/battle/a1938546-41a1-4b08-a8ac-79cf2e40613d りな(お出かけバージョン)↓ https://ai-battle.alphabrend.com/battle/34ac205d-db11-484f-9f18-7a767c7299db りな(海)↓ https://ai-battle.alphabrend.com/battle/48a0f823-b202-465f-ad4b-bcd06efeb610 リタ(反対色)↓ https://ai-battler.com/battle/9522687c-2876-4485-bc47-f4edcbd76182 リタ&???(初タッグ)↓  https://ai-battler.com/battle/d9d286e0-558d-4048-8684-5baaddf472ab リタ(質問コーナー)↓ https://ai-battler.com/battle/0edc05e4-18f4-4589-919b-013215e56e1e リタ&???(タッグ再び)↓ https://ai-battler.com/battle/1ba55e29-0928-4193-a108-d93baa7ae6cf  リタ&???(タッグ3度目)↓ https://ai-battler.com/battle/cc63be80-e32c-4ea8-b548-14f387bcb08e リタ&???(タッグ4度目)↓ https://ai-battler.com/battle/5dda8a87-0f9f-4263-914f-57f526e624f4 リタ&???(タッグ5度目)↓ https://ai-battler.com/battle/0ac30c17-526c-4659-b0cb-9cc25bea04ff リタ&???(タッグ6度目)↓ https://ai-battler.com/battle/439bd0c6-1543-44eb-82bf-74f4b7171f80 リタ&???(タッグ7度目)↓ https://ai-battler.com/battle/e35100c7-a768-47ff-9b2c-d2d39c664bee ここからは労力の関係で他のバリエーションはリタのプロフィールや〝リタシリーズ〟というタグで紹介していきますm(__)m —以下SSです— ※リタ達が幼少期に経験した出来事として書いているため正史です。 「ご退院おめでとうございます!」 「本当にありがとうございました」 「えと……ありがとうございました」 幼さを残した小さな少女が母親に促されてお礼を言う。 7歳の少女、璃奈は退院したばかりである。 少し前に前方不注意の車に撥ねられる事故に遭い入院したものの、幸い後遺症は残らず完治したようだ。 「そちらの璃奈ちゃんは完治したとはいえ不安は残るため、念のため1週間は安静にしていてくださいね」 そう主治医が言った後、二人の翡翠色の髪がお辞儀と一緒にふわりと下がった。 「ねぇ、おかあさん」 退院してからすぐ、璃奈が頼み事をしたそうに母親に話しかける。 「なぁに?璃奈ちゃん」 「シュークリームを食べたいの」 「病院にいるとき食べれなかったから」 「勿論!買ってあげるね。」 明るく母親が返す。 彼女は何事もなく帰ってきた娘を労りたい気持ちだった。 そして何よりも、普段あまり『これを買ってほしい』と言わない娘が素直にそう伝えてくれるのが堪らなく嬉しい様子である。 その言葉を噛み締める様に数歩を歩いた後母親は言う。 「あぁ璃奈ちゃんに何もなくてよかったなぁ」 「ママね、すごく心配だったんだから」 「今回のは気をつけようがないけど次はもっと気をつけようね」 「うん」 手を引かれながら母親の言葉を穏やかに返す。 お店に向かう二人の足取りは軽やかだ。 それでもなお、 「……本当に無事でよかった……」 娘が交通事故に遭ったと聞かされ、病院でその後の姿を見た時の衝撃と悲しみがこれまでずっと続いていたこともあり母親はそう小さく溢した。 「?」 過去SS【あなたは、】 その1週間後、すっかり学校に復帰した璃奈は帰路についていた。 『もうあれから一週間かぁ……』 とそんな事を考えながらただ家を目指す。 まだ明るくも午後の雰囲気を保ったまま街の時は流れていく。 前へ前へ進む。 さて、この辺りで丁度公園に差し掛かるところだろうか。 「違う違う左だよ左!もう……」 「あ、お花だ綺麗」 「いやぁ〜喉乾いたなァ…」 なんて騒がしさが近づいてくる。 夕方だからなのか子供の声も大人の声も混じって聞こえてくる。 「こっちこっち!」 「そう!ぼくの方にこう…バッてやってみて!」 ……あっちはボール遊び中なのだろうか。 そんな中、ふと思い出した事があった。 『そういえば病院で初めて起きた時変な感じがしたんだっけ』 『なんだったんだろ……』 その時気の所為とは言い難いほど〝変な感覚〟に襲われていたらしい。 痛みや病院での窮屈さや治療されている時の感覚とは違う、何かが変わったような明らかに異質な感覚。 すぐに消えたから良かったものの正体がわからないままなのは、歩くのを忘れさせるほどに納得がいかなかった。 『何も変わってないみたいだし……気のせいだったのかな』 『……忘れよう……』 それでも、そんな気持ちを引きずっていては先に進まないだけなので一先ず忘れようと璃奈は顔を上げて小さな一歩を踏み出そうとした。 その時だった。 「よっ!」 「あ〜飛んでっちゃったね」 「まって……!」 「そっちは道の方じゃ……!?」 風を切る音と幼い声が二つ分したかと思うと、公園から何かが勢いよく高く飛び出してきた。 ボールだ。 力を込めて飛ばしすぎてしまったのだろうか。 パッと飛び出したボールは不運にも璃奈の方へまっすぐ向かってくる。 「っ!?」 璃奈は咄嗟に身構えた。が、気づいた時にはボールはもう目の前。体が動かない。 ……いや、それ以前に多分もう避けられない。 きっと受け止められもしないだろう。 ギュッと目を瞑る。 来たる衝撃から身を守ろうと無意識に体に力が入る。 避ける為の道を探ろうと自然と集中力が増す。 『痛いのは嫌だ……!』 心の何処かで璃奈はそう〝強く思った〟 ふと何かが高まるような感覚がした。 バチンッ 何かに弾かれる様な音。 そのすぐ後にボールが地面に落ちる音がした。 ボールは確かに当たったはずであった。 『……?』『あれ……痛くない……?』 しかし痛みどころかボールが当たった感覚すら無に等しかった。 周りの様子を確かめるためにゆっくりと目を開く。 「……え?」 璃奈は戸惑いで図らずも声を漏らす。 先ほどまで歩いていた道に公園、目の前にボールがある。 そこまでは良かったのだが明らかに異質な〝モノ〟があった。 自分の手がキラキラと輝く透明な膜の様なモノに覆われている。 そのままお腹の辺りを見てみると同じように覆われていた。 つまり今はどうやら全身をコレに覆われている様である。 「なに……これ……」 動揺で璃奈はそう呟く。 どうしてこんなモノに覆われているのか。 どうしてあの時に何も感じなかったのか。 そもそもどこからコレが出てきたのか。 何も分からなくなる。 触ろうとしてみる。触れられない。 ……コレの正体は……? 手を見たままの姿勢で数秒間動けなくなった。 『痛くなかったのってコレのおかげなの……?』 『……でもどうして急に……?』 『もしかして私が……』 「おねーちゃん、ごめんなさい!!」 「ボールだいじょーぶだった?」 「わっ……!」 考え事のせいか、背後から先ほどの子供達が近づいて来ている事にすら気づかなかったようだ。 思わず声を上げる。 その驚いた拍子に突然不思議な膜もパッと消失する。 『あれ……消えた……』 更に分からなくなる。 ……だがこれだけは一旦渡そうと道に落ちているボールを手に取った。 「……」 「わたしは大丈夫」 「次からは気をつけてね」 余韻のせいか少し間が空くが何とか返事を返す。 そう言って何にも包まれていない小さな手で優しくボールを手渡した。 「ありがとー!」 「ほら、行くよ!」 「わかったよぅおにーちゃん」 そう言い残して幼い兄弟は公園の心地よい騒がしさの中に駆け出していった。 そんな背中を、膜の事を気づかれなかった安堵感からか、はたまた自分が変わってしまった事による不安感からかぼーっと見送る。 『……〝あの感覚〟って気のせいじゃなかったのかな……』 嵐のように自分を助けて消えたあのモノの事を考えてから、璃奈は再び帰路についた。 「……ただいまぁ」 悩みが滲んでしまったのかいつもより元気のない「ただいま」が響く。璃奈は暫くして家に着いたようだ。 「璃奈ちゃんおかえり〜」 明るく母親の声が返ってくる。 母親は妹と帰ってきたばかりなのか、物を片付けているようで慌ただしく物音が聞こえる。 今日は仕事の終わりが早かったらしい。 そうこうしていると璃奈の2歳下の妹である紬が駆け出して来る。 「おねぇちゃんおかえり!」 幼く人懐っこい声が璃奈を迎えた。 「ただいま、紬」 不安が少し和らいだようで、まだまだ小さい姉は改めてしっかりと返事をした。 ……… 帰ってきてからあっという間に夕食になり、夕食を食べ終わった後の団欒の時間。 だがいつもとは訳が違う。璃奈は心ここにあらずという様子である。 夕方の出来事に思いを馳せているのだろうか。 「おねぇちゃん」 「本いっしょによも〜」 「……」 「……あ、いいよ」 いつもより明らかに反応が悪い。幼いながらも賢く姉をよく見ている紬にはそのことがはっきり違和感として感じられた。 「ねーおねぇちゃん、どうしたの?」 「え?」 唐突に妹から投げかけられた質問につい動揺してしまう。その事も見抜いた紬は立て続けに姉へ投げかける。 知りたい。知って少しでも姉の不安を減らしたい。と 「夕方からようすおかしいよ」 「つむぎね、知りたいの。おねがい、正直に話して?」 俯き、手をぐっと握りしめる。 全てお見通しであったようだ。真っ直ぐな目を向けられて言わないわけにはいかなくなった璃奈は恐る恐る口を開いた。 「わたしは……」 ぽつりぽつりと夕方にあったことを話す。 何かが高まる感覚がした事。 ボールが明らかに当たったがなぜか痛くなかった事。 気付いた時には不思議な膜に覆われていた事。 驚いた時にすぐ消えてしまった事。 〝恐らく、自分が変わってしまった事〟 「う〜ん……ふしぎなこともあるんだねぇ」 「「それって……!?」」 ガタン、と立ち上がる音。 不思議な顔をして聞く紬の一方で驚愕した様子で両親は返事をする。 父親に至ってはいつも静かなのに珍しい。 両親もいつにも増して真剣な二人の話を気になって聞いていたからか、或いは璃奈の異変に気付いていたからか話に参入する。 璃奈が言うことが嘘であるとはとても思えなかったらしい。 「あ……ごめんね璃奈ちゃん、急に大声出して」 両親は不安げな娘を驚かせてしまったことを申し訳なさそうに再びそっと椅子に座る。 仕切り直しである。 気を取り直して今度は優しく璃奈の目線に合わせるように屈む。そして父親は璃奈に聞く。 「璃奈……それってもう一度出来るか?」 ……もし本当に璃奈がやった事ならと。 もし、この事が偶然ではないなら。 嘘でないなら。 〝ソレ〟によるものであるなら。 このことが一回限りで終わるはずがないと璃奈へ求める。 「できないならできないでいいんだが……」 「おとうさん……」 「……たぶん、その時を思い出せばできると思うけど……」 「……うん……やってみる」 不安感。 あの時を思い出す。 ボールから逃れるための道を探ろうとした時の様に同じように集中する。 ボールを見て強張った時の様に体に力を込める。 『痛みから逃れたい』と思った時と同じ様に『守ってほしい』と強く思う。 ……数秒、間が空いて異変が起きた時と同じように何かが高まる感覚がした。 「……あ……」 璃奈の目があの時と同じく輝くモノを捉えた。 その感覚がした直後、再び璃奈の周りをあのキラキラとした膜が覆っていた。 「おねぇちゃん……なんだかキラキラして……」 近くで見ていた紬がそれを触ろうとするものの弾かれてやはり触れない。 「あれ、さわれないや」 ボールの時の状況とは違っていたものの弾かれる様はあの時とよく似ていた。 「……やっぱり……」 道理にとてもかなっていない様な現象。 それを見て正体を確信した父親は眼鏡越しの目を細めて璃奈へ言った。 「璃奈、それは〝異能力〟と呼ばれるものだ。」 「いのーりょく?」 『異能力』という聞き慣れない単語。 何が何だか分からないまま璃奈はその単語をつい復唱してしまう。 集中が途切れたのか璃奈を覆っていた膜は再びパッと消えた。 「そういう力があってな」 「これを期に璃奈に教えてしまおうか」 得体のしれない力を手にして不安げな娘の為に、それと娘のこれからを守る為に簡単な説明をすることに決めた。 説明下手だとは感じているものの、一番このことを知っている自分がやらなくてはならないと娘の為に出来るだけ分かりやすいように説明を試みてゆっくりと口を開く。 「異能力というのはな、簡単にいえば特別な力だ。」 「璃奈みたいな 物を弾く膜を出す力 以外にも色々な力がある。」 「……あと、この力を持つ人間は少なくてな……」 「どうした?璃奈」 何か言いたげな娘に気づき少し言葉を止める。 伝わっているだろうか、つい固くなってしまったかとそれが杞憂だとは思いながらも心配が少し父親の心に過ぎる。 「……」 「……じゃあなんでわたしは急にその……いのうりょくを使えるようになったの?」 やはり杞憂であったようだ。 ちゃんと聞いてくれていることを嬉しく思いながらその質問に対し返答をする。 「璃奈だと……最近交通事故に遭ったことが原因だろうな」 「……例外はあるが、基本的に異能力というのは何らかの出来事をきっかけに使えるようになってしまうものなんだ」 「どうしてそれがきっかけで使えるようになるかはわかっていないのだが……まぁ……火事場の馬鹿力の様なものなんだろうとパパは思ってる」 やっぱり病院で異質な感覚を味わった事は気のせいではなかったらしい。 その感覚はあの交通事故のせいで璃奈の中で異能力というものが目覚めたことによるものであったようだ。 「ありがと、おとうさん」 「分からなかったことが分かってすっきりした」 「あぁ、それはよかった」 肩の力が抜けた様子を見せた璃奈に父親もふと安心する だが、心配がすっかり抜けた様子の娘へ伝えるべき大事なことがあと一つあることを思い出した。 「でもな、璃奈にこれだけは教えておきたい。」 「?」 それよりも大事なことがあるのかと呆然とした様子の璃奈へ父親は優しいながらも真剣に、一つ大事なことを教える。 「人にこの力が使えることを知られてはダメだ。」 「……え……どうして?」 「異能力というものを使える人間はとても少ないというのを覚えているか?」 「……そういうこともあってな、あまり知られていないんだ……だから」 「……うん」 「大半の人には怖がられるし、時にはその事を知った人が璃奈を危ない目に遭わせるかもしれない。」 「〝持っていることを知られるのが異能力を持つ人にとって一番危ない事〟だ。」 「……」 危険な目に遭ってほしくない。 娘が誰かによって傷つけられることが許せない。 異能力を持っていようがいまいが娘は娘なのだから。 そう思ってのこと。 璃奈なら分かってくれるだろうと真っ直ぐにその事を伝える。 「とにかく!璃奈ちゃん、この事は誰にも秘密にするんだよ?」 「約束ね」 隣でその事を見ていた母親も話へ参加する。 母親も同じ気持ちであるようだ。 変わった所はあれどいつもと変わらない愛しい娘に向かって小指をそっと差し出す。 「……うん、約束」 それに素直に応えるように小指を繋いだ。 「うん、じゃあいつもの通りお風呂入ってきな!」 「もうだいぶ時間も過ぎちゃってるし!」 「うん」 どこか晴れ晴れとしたような顔で娘は脱衣場へ向かっていった。 そうしてまた鏡宮家に日常が流れ出した。 ……そんなこんなで璃奈は交通事故という出来事を経て異能力という一生の呪い、或いは祝福に近しい不思議な力と一生付き合ってこれからを生きていくことになった。 そして璃奈が異能力の発現に気づいてから2週間 の時が経った。 その日は雨の日だった。つい先ほどまで明るかった空をあっという間に暗く重い雲が覆い、覆ってからそれほど時間も経たずに雨まで降ってきてしまった。 『……?』 『雨?』 『……あーあ……運が悪いなぁ……』 その日も同じく帰り道。 急に雨が振りだしてしまった故に生憎、璃奈は傘を持っていなかった。 ぽつん、ぽつんと。 雨は少しずつではあるがみるみるうちに璃奈を濡らしていく。 『教科書が濡れちゃう……どうしよう……』 『家までまだ近くはないし……しのげそうなものはないし……使うしかないか……』 『でもこの辺は人がいっぱいいるし……』 悩んでいる間に無情にも雨は降り続く。 運が悪いことにさっきよりも雨は強くなってきた。 考えることができる時間はもう短いらしい。 ……手段を選んでいる暇はもうない。 『……いつもと違う道だけど危ない道じゃないしあっちなら大丈夫なはず……』 璃奈の足は既にいつもと違う道の方へ踏み出していた。 周りを確認する。いつも人通りが少ないとはいえ雨だからか珍しく誰一人いない。 『……ここなら……』 この力の発動条件は『発動したい』と強く思う事と集中することであること。 『解除したい』と強く思うか気を抜きさえすればすぐに解除できること。 数日経ち、異能力の存在が璃奈にとって身近になったことで前よりも自分が持つ異能力の事を理解していた。 そんな今の璃奈にとって発動は容易いことだった。 〝守って〟 そう強く思った瞬間、いつもの様に膜……いやバリアが現れて雨を凌ぐ盾となった。 『うん、濡れてない』 そうして無事に璃奈は雨を凌ぐことができた。 ……だがこれは異能力を利用した手段だ。 『見られたらダメだから早く帰らないと……』と、誰もいないとはいえこれを見られては流石に不味いので走りだそうとした。 しかし突然、誰かの叫び声が聞こえた。 「!」 突然の事に驚いた璃奈はつい集中を絶やしてしまう。保てなくなったバリアは前と同じように消えてしまい敢え無く璃奈は濡れる。 そんなことを気にしている暇はない。 『人……いないよね……!?』 前を見る。横を見る。後ろを見る……が人はいない。 バレていなかったようだ。璃奈は胸をなで下ろす。 ……でも何かあったのだろうか…… 冷静になって考えてみれば声が聞こえた方は通りの方向だった。 通りで叫び声といったらやはり何か異変があったのではないか。 どうしようもない胸騒ぎがして。 雨で濡れてしまう事はもう頭になく、どうしてもそのまま立ち去る訳には行かなくなった璃奈は通りの方へ足を運ぶ事にした。 前へ前へ進む。 喧騒が徐々に近づいてくる。 だがしかし、そこにあったのは公園の時とは違う温かさのない騒がしさであった。 「—げて!!!」 「———が—っちに!!!!」 「———!!」 相当な大騒ぎになっているのは確実なのだろうが声が混ざりすぎていて璃奈にはあまりよく聞こえず。 しかし遠くから車がこっちへ向かってくる音ははっきりと聞こえる。 ……いや、異常だ。かなりの速さで走ってきているような…… 「?」 「あっちの方、なんだか騒がしいなぁ……」 前方に横断歩道を渡る少女が一人。 渡り終えるまで中盤に差し掛かる所で周囲の異変に気付いた様で黄色の髪を軽く振り乱して少し辺りを見回している。 年は璃奈と近いように。いや、同じだろうと思える。 ランドセルを背負っている所を見るに下校中なのであろうか。 その少女の顔が驚愕と恐怖の色に染まるのにそう時間はかからなかった。 それは縁石に当たった音だろうか。どかん、と物音がする。 次の瞬間にはかなりのスピードで迫ってくる車の影が見えた。 運転手はハンドルに向かって俯いている。 どうやら意識が無いらしくブレーキを踏む音すら聞こえない。 運転手の制御を失った車は既に色々な所にぶつけたのか所々軽く凹んでいた。 その車は先ほどの少女の方へ。 「え……?」 蚊の鳴くような声が漏れる。 恐怖のせいか一歩も動けなくなったらしく、少女は傘すらもう握れず地面にへたり込んだ。 「っ!」 迷うな。すぐ近くだ。早く走れ。早く。 何でも弾いてくれるのなら、車だってなんてことないはずだ。 助けられる手段を持っていながら腐らせるわけにはいかない。 優しい璃奈にはその手段をとれるわけがなかった。 迷う間もなく雨で濡れる地面を蹴飛ばす。 ランドセルを放る。 息が弾む。 『助けないと。』 『あんなに速いのなら』 『あの車に轢かれてしまったら。』 『きっと大丈夫じゃいられない。』 『あの子が死んでしまう。』 『わたしが行かないと。』 『早く。』 『助けられるのはわたししかいない。』 そんな思考で溢れかえった璃奈の頭に〝異能力の事を知られてはいけない〟という言葉はなかった。集中状態。 本来であったら今更どんな手を使ったとしても無事でいられないであろう少女。 それでも全員無事でいられる唯一の道。 その手段は璃奈だけが持っていた。 あの子はすぐ目の前だ。 『早く』 『あの子を』 『助けないと』 『あの子を』 『助けろ!』 それに応えてバリアは自然と璃奈を覆う。 「おい、あの子!」 「もしかして……」 周囲がざわめき出す。 しかしもう璃奈にとっては関係ない。 そんなこと聞こえちゃいない。 横断歩道へ駆け出して輝きを纏った一人の少女が少女の元へ飛び込んだ。 バチンッ!!! あの時と同じだが強く大きく音が響く。 そのすぐ後には車が軽く弾む音がしたっきりもう車が走る音は聞こえなくなった。 ほんの数秒の出来事であったが彼女らにとっては長い時間に感じたことだろう。 それに加えて周囲がやけに騒がしいような気がした。 それよりも少女は助かったのか。 不安で。それだけが気がかりで横を見た。 ……傷一つ負っていない。横断歩道の近くで見た時と変わらず、少女は仄かに潤んだ瞳を璃奈へ向けながら懸命に息をしていた。 璃奈は少女を助けることに成功したらしい。 「はぁ……よかった……」 安心のせいか途端に息が苦しく感じられた。 体の力が抜けたせいかいつもと同じように体の周りから輝くバリアが消え、璃奈は普通の少女へ戻った。 しかし璃奈は少女の呆然とした表情を見て、漸く家族とした約束を、父親に言われた言葉を思い出した。 『この異能力の事を知られてはいけない』 『持っていることを知られるのが異能力を持つ人にとって一番危ない』 知られてしまった。 この状況ではどうしようもなく、どうすればよいのか分からず璃奈は身動きがとれなくなってしまった。 「……えっと……わたしは……」 「あの……」 少女が口を開く。 どんな気持ちになっているんだろう。 どんな事を言われてしまうのだろう。 と一瞬璃奈の表情が曇る。 だが、 「助けてくれてありがとう……!」 「え?」 言われるとは思わなかった言葉につい拍子抜けしてしまった。 驚きで思わず声が出てしまう。 「?」 「ありがとうって言われるのって、そんなにびっくりすること?」 「……えと……そうじゃなくて……」 「どうして……わたしがこんな力を持ってるのに怖がらないの……?」 感謝を言われるのは当然といえば当然であるのだが、不思議な力を急に見て、知って、それでもそれに怖がらない少女が璃奈にとって不思議で仕方がなかった。 「……正直さっきはね、びっくりしたんだけどね」 「そんな気持ち、もうなくなっちゃった。だって助けてくれたんだもん!」 「かっこいいね……!」 「!」 真っ直ぐなその言葉に璃奈は衝撃を受けた。 『この子は怖がらないんだ』『この力を否定したりしないんだ』そんな気持ちが璃奈の心を覆っていた。 そんな人を見つけた嬉しさを深く感じて。 そんな璃奈へ突然少女が質問を投げかける。 「それ、なんていう力なの?」 「えと、いのうりょくっていうものなんだけどね…… 「あ……そうじゃなくてね」 「?」 少女が聞きたかったことは…… 「その力の名前って……何?」 そう言われてみれば〝膜〟〝バリア〟〝この力〟〝不思議な力〟〝異能力〟といった言葉で呼んでいたもののはっきりとした名前はこの力にはなかった。 「名前かぁ、ないかも」 「そうなの?」 「……じゃあわたしが付けたいな……なんて……」 どこか恥ずかしそうに少女はそう言う。 「いいの?」 と璃奈が返すと少女は嬉しそうな顔になり、そして真剣に考え出した。 「……弾くって……鏡に似てるよね……」 「じゃあ……鏡の盾で……えっと……〝ミラーシールド〟なんてどうかな」 「ミラー……シールド……」 「いい名前だね……ありがとね」 この異能力には少女によって『ミラーシールド』という名前がついた。 人に見せてはいけない得体のしれない力が名前を付けられたことにより璃奈にとって大事な物に変わった瞬間であった。 それほど嬉しかったのだ。 この少女は隠し事をしなくてもいい、信頼できる友達になるのではないかとその時璃奈は満たされた思いだった。 この少女も同じ気持ちなのだろうか。 しかし友達になるのにまだ一つ知らない事があるままだった。 それを少女は聞こうとする。 「あ、そういえばあなたの名前は…… 「そうだよ!!あれが異能力者!!」 璃奈の耳にそんな言葉が入ってきてから漸く周りの状況に気付いた。 事故のせいであろうか人は多くはなかったものの野次馬をしに集まってきていた様だ。 ……いや、助けた姿を見た者が〝異能力を使う非常に珍しい人間〟を見せようと人を呼んだのだろうか。 明らかに助けた時より周囲の人が増えていた。 「え、あのちっちゃい子が!?」 「なんだ、もう見れないんだ。つまんないの。」 「あの変な力使う化け物か……」 「怖い…」 「あの子がそんな存在だなんて……」 恐怖。畏怖。興味。蔑み。警戒。 そんな淀んだ感情の矛先が絶え間なく璃奈に向けられていた。 周囲の人は背丈も容姿も全員違うのに璃奈に向ける顔は誰もが冷たくて怖い顔だった。 『持っていることを知られるのが異能力を持つ人にとって一番危ない事』というのはこういう事なのだと痛いほど知った。 自分は何も分かっていなかったのだと向けられる目で辛いほど分からされた。 その濁った感情は一度に小さくて脆い身体で背負うにはあまりにも重すぎた。 心が傷ついていくのを感じる。 聞きたくないのに嫌でも言葉が耳に入ってくる。 「……どうしたの……?」 助けられた少女は不安げな顔で急に様子が変わってしまった目の前の少女に向かって問いかける。 二人の間に沈黙が流れる。 「……」 『辛い、もう、わたしは、 一転、璃奈は放ったランドセルの方へ足を向ける。 その横顔に雫が伝うのを少女は見た。 「ごめん」 と、一言を残して。 一瞬のうちに傷つけられてしまった心を抱えてその場から逃れるように救急車の音を背に雨の中を駆け出していった。 友達になれないまま、名前すら聞けないまま少女の命の恩人は消え去ってしまった。 璃奈は約束の理由とその例外の事をこの一日で痛いほど理解させられることになった。 そして何年も何年も経ち、璃奈は16歳の高校2年生となっていた。 授業も清掃も終わり、放課後になった。 これから軽音部での部活の時間が始まる。 2年2組。放課後でも相変わらず賑やかで個性的なクラスメイト達を横目に璃奈は丁度用意をしているところだった。 そんな璃奈を入り口のそばで親友の怜は待っていた。 怜は用意をする璃奈を見てどこか考え事をしているようだった。 『璃奈ちゃんを見てると思い出すんだよなぁ……』 ある光景が時々脳裏にぼんやりと浮かぶ時があった。 それは雨の日のこと。 『あの時……助けてくれた子……』 暴走していた車に轢かれそうになった。 そんな時、守ってくれた少女がいた。 自分と同じくらいの年齢で不思議な力を持っている。髪の色は……丁度親友と似ていたような…… 名前を聞けないままいなくなってしまったのを怜は強く覚えていた。 『でも、いつかまた会えたら』 「……ふぅ……」 用意が終わったようだ。 ギターケースと荷物を持ったあと、一息をついてから親友の方へ足を運ぶ。 「お待たせ、怜」 「あ!」 「じゃあ行こっか、璃奈ちゃん」 「今日も部活頑張ろうね」 「うん……!頑張ろう!」 怜の黄色の髪が軽く弾む。 親友といつもの場所へ向かう足取りはいつも通り軽快だった。