新参者、つまり初歩の冒険者はまず、これから挑む様々な迷宮達に挑む前に迷宮探索のルールを覚えるべく新参者の洞窟の探索を勧められる。 それが冒険者の教育が目的であることは間違いない。 しかし実際の理由はより切実だ。 一言で言えば、ゴブリンの間引きである。 新参者の洞窟を含む多くの迷宮は、例え攻略されて中の魔物が全滅したとしても、いつの間にか中の魔物ごとそっくりそのまま復活する。 新参者の洞窟は冒険者の街から程近く、さらにゴブリンの巣穴である。 ゴブリンは亜人種の魔物の代表格であり、放置しておくと人間を日常的に襲ってくる。 以上の要素が重なった結果、つまり新参者の洞窟は『可能な限り短いスパンで攻略され続けなければならない』迷宮なのだ。 さて、今日も新しい冒険者がやってきた。 どうやらそろそろ迷宮に挑戦したいらしい。 『よし、まずは新参者の洞窟を紹介しよう。 そこで迷宮探索のルールを学ぶといい。』 私はもう何度このセリフを口にしただろうか？ 冒険者の街を本当に守っているのは実は君たち初歩の冒険者達だったんだと、いつか教えられる日が来ますように。 そう願いを込めて、今日も新しい冒険者を送り出す。