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イオ-IB-SAM419/忠実なる支援者にして寡黙な強襲者

・イオについて1 品名:IB-SAM 用途:大型機体操縦用生体デバイス 製造日:■■/■■■■(稼働日数3年) 稼働保証:初期稼働より10年 情報保全のため、初期稼働より11年経過後全ての機能を停止します 稼働保証期間内の交換を強くお勧めします 技研『アイビス』兵器技術部 ─── ・イオについて2 「これは……どうなるのだ?」 声がする 誰かが私の前で話をしてる 「あぁ、ここにあるものは型落ちなので。しばらくしたら廃棄する予定です」 今度は別の人の声。それよりも…… そっか……私、廃棄されるんだ 「ええと、一応ここには商品はないので戻りましょう。ロングセラー商品である5500番台はあちらに、最新式の6000番台はあちらにございます。如何なさいますか」 「…………」 片方が問いかけてるけど、返事はないし移動する足音もしない 「……もしかして、これが気になるのですか?」 「……これの説明をしてくれ」 「えぇっ、正気ですか!?」 「……」 「分かりました。えー、SAMの400番台、これは419になりますね。最低限の大型機動兵器の操縦適性はありますが、エース級の活躍は見込めません。せいぜい支援機程度しか扱えないでしょう」 「……ふむ」 「性格も……なんというか一般受けではないですね。従順ではありますがあまり愛想がないです」 「……そうか、わかった」 「これにしよう」 「……は?いやいや、これは売り物ではありませんので」 「合わせて、そちらの機体一式も買おう。それならどうだ」 「し、しかし。当社の最新式装備をこれが扱えるとは思えませんが……」 「支援機ならどうだ?予備含め一式5セットほど買おう」 「ち、ちょっとお待ちください。上に確認をとります」 1人が慌ただしくその場から離れる 残った1人が私のジェネレータの前にいる、気がする 「IB-SAM419よ」 うっすらと目を開ける 帽子を目深に被った男が目に映る 「今から、俺がお前の主人だ」 ─── ・イオについて3 私は生まれながらの兵器だ 主人の命令に従い、戦うために生きることこそ私の存在意義 なのに…… 「419、お前に名を与える」 「……名前、ですか」 「『イオ』。それがお前の名だ」 意味が分からない しかし、自身の所有物に名前を付けたがる人もいると聞いた事がある とりあえず従おう 「イオ、コックピットで寝起きするのは辛いだろう。暖かいベッドがある部屋を用意したから、そこで寝なさい」 意味が分からない 緊急事態が起きたとき、即時対応ができなくなってしまう しかし命令だ。従うほかない 「イオ、朝食は俺と共に摂るように。その日に仕事があれば、そこで伝えよう」 意味が分からない メッセージで伝えれば済むものを、どうしてわざわざ ……命令だから、従おう 「イオ、今回は2つの仕事を持ってきた。お前が選べ、もちろん休息を望むのであればそうしよう」 意味が分からない 主人が選び、私に命令を下せば済むのに それに私は戦うことしか能がないから、主人の利になる仕事がどれか分からない 命令……に思えるけど、実際は私に選択権を与えている この人は、私に自主性を求めているのかもしれない だけど、何のために? もしかしたら、私を“人”と見ているのかもしれない それは間違っていると進言しなければ 「……お前がそう言おうとも、俺のお前への扱いを変える気は無い」 「……申し訳ありません。過ぎた事を言ってしまいました」 「もういい。下がれ」 怒らせた? でも、苛立ちがこっちに向いた気はしなかった 意味が分からない ─── ・IB-SAMについて 技研『アイビス』で生まれた強化人造人間 顧客からの注文が入るとジェネレータから生まれ、要望に合わせ調整したのち顧客の元へ届けられる 以降IB-SAMは顧客を主人とし、死ぬまで彼らに尽くす 大型機体を操る兵器として生まれた彼らは、任務に忠実で主人に絶対の忠誠心を持っている 人と同じように感じ、考え、交流する事ができるが、ほとんどの場合人間扱いはされない 成長速度も人とほぼ変わらないが、“11年”という技研により定められた寿命がある 遺伝子操された赤子たちは培養ジェネレータにより生育され、少年少女の形で生まれる 彼らは本能的に自身が戦士であると理解しており、数日間の教育を経て兵士となる 彼らは死を恐れない勇敢な兵士として、その命を雇い主に捧げる そんな彼らは比較的安価な価格で入手でき、単独傭兵の僚機としてだったり熟練兵士のいない民間組織の傭兵としてだったりと様々な需要がある 命令であれば“何でも”するため、ほぼ死が確定される囮役や特攻役にアサインされることが多く、時には“愛玩用”として使われることもある ─── ・ストーリー『機体の改修』 「なるほど。それで私に相談を持ちかけた、と」 こくんと頷く 相談相手はアイリス。私より後に開発された、6000番台の強化人間 私のあとにご主人に買われたのだけど、破竹の勢いでランカーまで上り詰めた子 「分かってるかもしれないけど。私はハッカー、いわゆるソフト側のエキスパート。武装の改修なんて、ねぇ?」 「やっぱり、無理……?」 その言葉にアイリスはニヤリと笑った 「できるに決まってるじゃん。ソフトだけでなくハードも余裕だよ」 「も、もう……!」 「あはは、ごめんごめん」 何だかからかわれた気がするけど、やっぱりこの子の前だと素がでてしまう 「よし、じゃあ一緒にどう強くしたいか考えよう。楽しい改造の始まり始まりー」 …………数週間後 「改修完了!これが『エーオースMk.Ⅳ』だよ」 「……え?ⅡとⅢは?」 「別に数字の順番通りにしなきゃいけないルールなんてないでしょ。好きなのよ、4って数字」 「さて、改めて改造の方向性を共通認識化しよう」 「イオは支援が得意。戦況を見極め、戦術や戦略を考案し勝利へ導く役割ってワケ」 「……それは大言壮語じゃないかな……?」 「ちっちっち、自分を過小評価しないで。支援の重要性は私が1番身に染みてるから」 「まずは両手の武装ね。レールガンは威力を上げて代わりに少し隙が増えた。そして近接は片手で扱えるようにして右手を塞がないようにした」 「……大丈夫、かな。それ」 「初期装備は多分1体1想定だよ。隙がないサイクルだけど、実戦で状況が複雑な場合だと器用貧乏になっちゃう」 「……確かに。敵が遠くにいるのに両手で剣を持ってたら攻撃できないね」 「そ。だから遠近柔軟に対応できるようにしたわけ」 「そして最大の改修がこれ!『無線ビットオールレンジ兵器』!」 「イオは戦況を見極めるのが得意。高性能索敵レーダーのおかげでどこに敵が潜んでいるか分かるし、そこから味方をどのように動かしたらいいか知ってる」 「うん」 「『味方が動く』という事を自分でやれれば、そりゃ強いよねって話なの」 「そうなの?」 「そうなの!」 「無線ビットは一見完璧な兵器に思えるけど、実際は『飛んでいった先に敵はいない』・『偏差射撃ができないから当たらない』・『そもそも操作が面倒』の三拍子揃った不遇兵器」 だけど、と得意げにアイリスは指を立てる 「最後の1つに関しては私がプログラムし直したから。自動補正や偏差射撃プログラムはあえて切ったから、かなり素直な挙動で目標まで飛んで撃てるはず」 立てた指をそのままビシッと私に向ける 「あとはあなたの頑張り次第ってとこ」 「うん……それなら、頑張れる」 「期待してるよー。早く私の所に来るよーに!」 「ふふ。ありがとう、アイリス」 【機体『エーオース』が大幅改修された!】