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【弾丸、汝を貫かん】サラ・セルヴェント

サラは何処にも属さず、現在は開拓が進められている外宇宙と惑星を中心に、孤独に戦い続ける独立傭兵の少女 彼女の事を知る者達は口を揃えて、彼女の事を【狂犬】と呼ぶ その理由は彼女の戦闘スタイルにあり、一切被弾を恐れずに敵に突撃、格闘戦を展開する それは敵が、自身と同じアサルトフレームである場合は勿論、仮に敵が自身の数倍の規模を誇る部隊であったり、艦隊、果てには要塞であろうと一切変わらず、皮一枚で敵弾を必要最小限の動きで回避し接近していくその姿は、敵だけではなく、味方にすら恐怖を抱かせる また、彼女はよく敵機を攪乱する為に、戦闘中に雷雲や竜巻であったり、左右を切り立った絶壁に挟まれた渓谷などの、危険な自然現象や地形にまるで臆さず、最大戦速で突っ込んでいく また、彼女が【狂犬】と呼ばれる理由はそれだけではなく、普段の彼女の姿も、その異名の理由の一つである 彼女は一切、誰とも関わろうとせず常に、乗機の格納庫であり彼女の拠点である超小型コンテナ船【MAGAZINE】の中におり、任務と補給、買い出し以外で外に出ることはほぼ一切ない 稀に、傭兵達が集まるような酒場に顔を出すことがあるが、あくまでそれは情報収集の一環であり、誰とも話さず一杯のウィスキー。あるいはそれすら飲まずに、気づいた頃には店を出ている 彼女に絡む傭兵も勿論存在するが、そういった者は大体がまるで相手にされず無視され、それに腹を立て手を上げた者は前歯を全て折られ病院送りにされている また、彼女には逆鱗があるらしく、彼女が持っていた一枚の古ぼけた写真を取ったとある傭兵は、半殺しにされて再起不能になったらしい 彼女の乗機、【PARABELLUM】はおそらく軍用であった強化人間専用機を彼女が、自分に合わせて徹底的にカスタムを施した機体 「おそらく軍用」というのは、余りに機体に手が入れられており、一切原型を留めていないからである PARABELLUMは、近距離~近接格闘距離での戦闘能力を徹底的に突き詰めた機体であり、サラの搭乗するPARABELLUMの能力は戦略級のアサルトフレームですら、近距離では封殺出来る程 サラの経歴は一切が、謎に包まれている 彼女が何時から傭兵として外宇宙で戦っているのか、またそれ以前は何をしていたのか、そして強化施術は第何世代で、どの術式の物を受けたのかすら、知っている者はサラ本人以外に存在しない 彼女が、己の命よりも丁寧に扱い、丹念に手入れしている写真も、素人ですら一目見ただけで数年も前に撮影されたものであるとわかるくらいには古ぼけている 写真には、若い少年少女達。そしてその前に立つ、柔和な笑みを浮かべる白衣を着た男性とその腕に抱きつくサラによく似た少女が映されている しかし、その写真に写る者を見た者は一人も居ない ずいぶん大切に扱っている以上、サラと無関係な筈など決して無いであろうに 彼等は今、どこにいるのだろう? 称号:「 Neuma 」 「あんな機体で私に食らいついてくるなんて…チッあんな化け物が居るなんて」 「でも、負けない。負けるわけにはいかない。もう、あの子達と先生の事を証明できるのは私しか居ないんだ」 称号:レイヴン 彼女が【NEST】の真実と相対し、そして得た物 日暮れの暖かくもどこか寂しい光に照らされたその丘は、和やかな風に吹かれ、根付いた草花たちが静かに踊るように揺れている 数刻前まで其処は戦場であった事等、当に忘れたかのように けれども、抉られた大地。そして、其処に音を上げずに佇む二つの鋼の巨兵がそれを己が存在によって証明している 『ここは、確かに戦場であったのだ』と 一つは白銀の肉体を持ち、もう片方は黒い鎧を身に纏っている 両者の巨躯は動かない。否、動けない 両者共に、身体の大部分を失っている。当然と言えば、当然だ そして、少女は黒い巨兵の胸に抱かれていた 「ハァッ...ハァッ...ハァ...ハハ…あぁ、クソッ。また、死に損なった...あの化け物なら、もしかしてって思ったのに…」 橙色の丘の上、鋼の巨兵に抱かれた少女は独り言つ その瞳は深い疲労で濁り、人の手によって、人の域を超えたその肉体は、しかし当に限界を迎え、動けと念じる彼女の意を跳ね除けていた 少女は幾度かその身体を動かそうと捩じるも、結局疲労と痛みに耐えかね、その硬く冷たい座席に身を沈める 「…ねぇ、先生。私、何時になったらそっちに行っても良いの?…『生きて幸せになってくれ』なんて言われてもさ、私、貴方の居ない世界じゃ幸せになんて...絶対なれないよ…」 それは、誰かに問いかける様な言葉であったが、答える者は誰も居ない 当然だ。彼女が問いかけた相手はもう、ここには居ない 「…」 少女は沈黙の中、瞼を閉じ深く息を吸う 脳裏に浮かんできたのは、且つて彼女が生きる意味を見出していた日々。そして、それを戦火によって焼き払われた過去 その日々を思い出しながら、彼女は、己が結んだとある一つの約束を今一度、噛み締める 『彼らの分まで、そして、先生の分まで私が生きる。他の誰でもない先生に、「生きてくれ」と望まれたから』 それは、彼女にとって間違いなく呪いである けれども、それを彼女に託した者にとってそれは、確かに誠実な祈りだった 「…やっぱり、まだ駄目に決まってるよね」 且つて、生きる意味を惨たらしく奪われた少女は、限界を超えていようと、再び足を踏み出す 深い理由など無い。必要ない そんな物、己の心臓が今でも、熱く脈打っているというだけで事足りる 例え幸せを掴めずとも、それが停滞し、淀み、腐り落ちていく理由には足り得ない (…私は戦う。まだ、生きてるから。まだ、前に進めるから) 「…まだ、皆の。先生の分まで、生きることができてないから」 彼女の意に応えるよう、黒き弾丸は再びその目に光を宿す そうして、彼女達は再び進み出す 彼女達は弾丸である 何が待とうと退きはしない。きっと彼女らはそれを貫き滅ぼしてでも、己が地に落ち朽ちるまで、止まる事無く前へと進む 弾丸とは、きっと、そういう物だろう 《 ACHIEVEMENT 》 【いずれ、銀へと至る黒き弾丸】:NESTで【サラ・セルヴェント】に勝利を収める そして、 称号【LAST RAVEN】 彼女が、否、この戦乱に生きる彼等が、かつての管理者に戦いを通して進化の可能性を示し、得た物 「…アンタ、やっぱりまだ生きてたんだ」