人は堕ちればアンデッドになる。というのは、この世界の人間なら小学生の歳には知っている法則だ。アンデッドは不浄な存在であり、何の尊厳も無い。ただ己が欲求のためだけに生者を襲い、家を壊して行く魔物。 だが、首領アンナキはそうは思っていない。アンナキがアンデッドの国家”デスランド”を建国する際、諸国に向かって言い放ったことがある。 「アンデッドは2度目の生なんだよ!限られた人に与えられたチャンスなの。それを汚らわしいというだけで拒否するなんて、傲慢だとは思わないの?無礼だとは思わないの?…どうか、生きる権利を捨てないで。2度目の生を謳歌する気になったら、遠慮なくデスランドに訪れて欲しい。」 目を潤ませて叫ぶ少女の声に、実際耳をかたむける国はあまり無かった。批判も受けた。暗殺された事さえある。 しかし、アンナキは決して諦めない。自国の民はあんなにも楽しそうに、明日への不安など微塵も無いといった風に無限の生を謳歌しているのだから。 もう誰も死なせはしない。悲しませはしない。もう誰も、死に奪われたくない。 魔法レベル 最上位 アンデッド 上位 使い魔/闇/光 中位 低位 所有武器 【死天使の杖】 アンデッドに対して浄化の力が50%反転する。つまり死ななければノーダメになる。 デスエンジェルのドロップ品。 【魔力肝臓】 魔力を溜めておける肝臓。これに光属性を溜め込んでいる。 アンデッド・キメラのドロップ品。 使い魔一覧 ゾンビ 黄金屍人 黄金剣闘士 黄金死皇帝 アンデッドスネーク デスエンジェル エクリプスアンデッド ガーゴイル アンデッド・キメラ 死の司祭 サマードラゴン グレープゾンビ 燃死火燼神 ーーーーーーーーーーーーーーーーー アンナキ・クロッシュヴェインは、人魔改能シリーズにおいて避けるべきとされる概念系能力《魂》を使用しているため、個人スキル発現の釈明をします。以下に追加設定を書き連ねますので、一読をお願いします。 名前 アンナキ・クロッシュヴェイン(本名 張 暗亡) 個人スキル《黄泉帰り》 スキル詳細:生物の生前の記憶、すなわち魂を闇属性の魔力で拘束し、肉体の死後も留め続ける能力。肉体のアンデッド化は闇属性の魔力で魂を抑え続けた余波による副次的な効果であり、《黄泉帰り》は蘇生する能力ではない。 しかし、アンデッド化した肉体は本質的に生者を食らうものであるので、肉体がアンデッド化した瞬間に《黄泉帰り》によって拘束された魂が肉体に吸収され、まるで蘇生したように動き出すのだ。この時、アンデッドの魔物コアは《黄泉帰り》の確実な保存も相まって本人の魂により上書きされ、個人スキルや生前の記憶は元通りになる。が、適正魔法属性はアンデッド化した肉体に引っ張られるため、失われる。 アンナキが戦闘中”致命傷にも耐えられる”のは、これまで暗殺などにより幾度となく死んでいる為、既に体が”ゾンビ”となっており、《黄泉帰り》を発動するとアンデッド化を待たずして魂を吸収出来る為、幾らでも死ねるからである。 デスランドでは他のアンデッド達もこれと同様の効果を得ている。 個人スキル発現の経緯:張暗亡の家庭は崩壊していた。それぞれ、父親が鬱病、母親が過労でまともに家庭内の役割を果たせて居なかったからである。それ故に、2人も娘を抱えた張家はだんだんと貧しくなっていった。 貧しければ余裕が無くなり、余裕が無ければ本性が現れる。父親の鬱病は悪化し、感情のコントロールを失った。母親はさらに仕事を詰め込んでしまい、暗亡がまだ4歳の頃に起きてこなくなった。 ー父親が酒瓶片手に起こしに行った。厭に穏やかな朝だった。母親の部屋になった押し入れから、瓶が割れるキンとした音がなった。暗亡は急いで押し入れに駆けつけた。そこにいた父親は、感情のコントロールを失って母親を犯していた。心の底から、父は母に甘えたかったのだろうか。とにかく、もう冷たくなって喘ぎ声ひとつ漏らさない目を閉じたままの母親を、父親は一生懸命犯していた。みっともない半ケツと、乱暴に目を見開いたその黄色い顔は張暗亡に確かな呪いをかけていった。 おぎゃあと声がした。アンナキはもう何度も死んでしまったから、おぎゃあとしか覚えていないが、下の娘の声がした。 「うるさい。」 父親は静かに、顔を震わせながらそう言って、割れた酒瓶を拾い上げ、ズボンを履き直して押し入れを後にした。暗亡は母を見た。下着を破かれて、胸のところに幾つもしわが付けられた亡き母は、何か大事なものが欠けているように思えた。 《魂》が、無いように思えた。 暗亡が母の遺体に見入っていると、ぴきゃーと変な音が後ろから聞こえてきた。まるで毛虫を潰した時の音みたいだった。今も、何回死んでも、耳にこびり付いている。 それから、暗亡は施設に引き取られた。父親は下の娘の頭蓋を割った後、自らも柱に頭を打ち付けて死んだようだった。施設の子供達は、皆が暗亡と同じような境遇で、幼子の髪の毛が貼り付いた酒瓶など、ごくありふれた物であるような気さえした。暗亡はすぐに子供達と仲良くなったが、子供達は暗亡の名前が珍しかったのか、それとも読めなかったのか、カタコトの言葉で”アンナキ”と、あだ名のように呼んだ。 アンナキはそれが嬉しかった。 それからしばらくして、もう10歳になるアンナキには親友がいた。グロリアという男の子であった。グロリアは物心ついた頃より母親から女の子として育てられたが、ある日それに気付いた出稼ぎの父親が母親に異議を唱え、もみ合いの末母親を殺害。父親は警察に出頭する直前、犯罪者の子供として生きるのは辛いだろうと、グロリアを施設に孤児として預けていったそうだ。だから、グロリアは可愛らしい仕草をしている。表情の柔らかさ、手足の伸び方、見事にS字を描く背筋。どれも、アンナキには無いものだった。逆に、グロリアもアンナキが持っている活発さや自発性を持たなかった。 お互いにお互いを補える関係として、憧れとして、アンナキとグロリアはだんだんと仲を深め、遂に親友と呼び合えるまでになったのだ。しかし、平和な日々は続かない。揺れるブランコもいつかは止まるし、止まらなかったとしても誰かの顎を吹っ飛ばすものだ。 グロリアがアンナキに告げた。 「ぼくね。死にたいんだ。」 アンナキはグロリアに問うた。 「どうして?グロリア。あなたはとても可愛らしいじゃない。」 グロリアは俯いて、駆け出した。施設の庭に生い茂る芝に脚を取られてもなお、ぐんぐんと加速して、長いまつげに飾られた目から溢れ落ちる涙に追い付かれないように駆けていった。 アンナキはその小さな背中を見失わないように一生懸命追いかけた。 二つの小さな人影は、いつの間にか森に入っていた。 「ねぇ!グロリア!どうして逃げるの?」 少年は振り返らない。 「あぁ。アンナキ。追ってくるんだ。僕はね。可愛いものが好きなんだ。」 しかし少年は語り出す。 「可愛いものが好きなんだ。でも、それはお母さんのせいだから、僕が好きなんじゃないんだ。でも、可愛いものを見ると、欲しいって思っちゃう。追ってくるんだ。手に入れたい感覚が、追ってくるんだ。着てみたいって思っちゃうんだ。」 少年は涙に追い付かれた。 「ねぇ、アンナキ。」 グロリアは振り返った。 「僕ね、死にたいんだ。死んで、終わりにして、消えたいんだ。」 アンナキは恐れた。怖かった。嫌だった。グロリアが次に何を言うのか、分かってしまった。 「殺してよ。暗亡。」 低くなよなよした父親の声と可憐な少年の声が混ざり合って、かけられた呪いが腹の底からアンナキの喉を絞めに来た。 「い…いやだよ…」 「そっか。いやなんだ。アンナキ。」 「うん…。」 その晩、グロリアは自殺した。施設の中の魔力ポットを自分の頭に落として死んだ。顔の半分が歪んで、白く濁った液体と血が混ざり合って垂れていた。それなのに、それなのに。グロリアは目を閉じて、手を組んで、安らかな顔で冷たくなっていた。 《魂》が、無い。アンナキは再びそう思った。 その時、《黄泉帰り》は発現した。 設定補足:クロッシュヴェインの性は施設にあった英雄譚の登場人物からとっており、その意味は”隠された太陽”。アンナキの個人スキルが内向的な能力になったことを嘆く意味である。