DARPA(米国国防高等研究計画局)の人型兵器部門によって製作された先進技術実証機。 ポータルの暴走に巻き込まれ保管整備区画ごと異界に転送された。 後に異界を訪れるクロワールの愛機となる。 先進技術実証機の名の通り当代の技術の粋を集められ制作された。 しかし、持ちうる最大の性能を発揮させるため使用者の操作性や加速からの保護等を考えておらず テストパイロットからの評判は最悪なものだった。 操作性の劣悪さや加速保護の観点から、搭乗者のサイボーグ化と神経接続による直接操作が考えられ 神経接続型拡張義体として改修されたが、ポータル暴走事件までサイボーグ化されたパイロットの調達は間に合わなかった。 ---------- 終末となった現世を彷徨い生きる以外の目的を探しポータルに飛び込んだクロワールを待っていたのは 異界の樹海のような環境と現実世界の常識を超えた自然現象や凶暴な異界生命体であった。 異界であっても死に生きることしかできないのか、と精神的に疲れ果ててしまった時、異界の知的生命体フロネシアンの少女と出会った。 異界の知的生命体の存在は、クロワールの所属していたDARPAポータル部門においても極秘扱いにされており、いち医師、いちサイボーグ技師であるクロワールには知らされていない事実であった。 翻訳装置を持っていたフロネシアンの少女に集落まで案内されることになる。 それは5日ほどの旅路だった。久方ぶりの会話が可能な知的存在との、互いを助け合うサバイバルの旅路は友情を育むのに十分な時間であった。 集落に向かえば、ほかのフロネシアンもいるし集落に駐在していたDARPAの人間も居る。 希望をもって向かった先で見たのは巨大な生命体に襲われる目的地の集落だった。 異界に来てクロワールも何度か襲われた巨大生命体。携行火器では傷つける事も出来ず、『アンカー』を利用し死にながら逃げる事しかできなかった埒外生命体。 友となったフロネシアンの少女は集落を守るためと、クロワールにここで隠れていて言い残し、駆けて行ってしまった。 集落に巨大生命体を追い返せるような重火器や防衛装備があるようには、外からは見られなかった。 このままでは集落も新たな友も失ってしまうのは解りきっていた。 絶望に浸りそうになる中、クロワールは少女から聞いた話を思い出した。 数週間前、ポータルの暴走を時を同じくして集落の近くに現れた施設と、その中にあった機械の巨人の話。 駐在していたDARPAの研究者曰く神経接続が必要な巨大人型兵器。 樹海の内からも見える巨大な建造物にクロワールは向かった。 クロワールは終末を生きる中、身体の機械化を進め脳以外の機械化が済んでいた。 神経接続デバイスはDARPAの共通規格であり接続も可能、操縦用の自動インプリンティング(刷り込み)も機能していた。 異界で得た友を護るためクロワールは新たな翼IKAROSを駆る。 IKAROSのジャジャ馬染みた機動性、ハイマヌーバによる機動は神経接続操作をもってして難を極めた。 一歩操作を間違えば破滅的な加速をもって地面に激突する危険をはらみながら その圧倒的な機動による回避と強大な火器をもって、無事巨大生命体を撃破することができた。 撃破後、クロワールは無茶苦茶な機体に憤りながら、同時に友を護れたことに安堵し喜び達成感があり、果て無き苦難をようやく乗り越えた心地があり…… 喉が、瞳が、涙腺が残っていたのなら声を上げて泣いてただろう。 護れた集落を背に手を振る友に向かって空を駆けるのであった。