わたしがみんなを抱きしめるよ 第五神座。 神座万象シリーズにおける五代目の神の理。 神の名は「黄昏たそがれ」。本名はマルグリット・ブルイユ。 この法則が統べる世界の作品は未発表。Dies iraeで第五神座の黎明期が、神咒神威神楽でその末期が描かれる。 誕生経緯 元となった渇望は「全てを抱きしめたい」 全ての人間に慈愛を振りまき抱きしめ、幸せを願う女神の理。あまねく渇望を肯定し、綺麗事では済まされないからこそ尊い全てを抱きしめんとする祈りアイ。 その法は「全ての生命がいつか幸せになれるよう願う」もの。 女神の悲しい出自に加え、刹那・黄金・水銀の三柱との交わりが大きく影響している。 第四神座時代のフランス革命期に生を受けた黄昏は、触れた者を問答無用で斬首する断頭台ギロチンの呪いを有していた。周囲から忌避された末に首を落とされた彼女は、何も知ることもなく、何にも無頓着なまま「罰当たり娘」として悲惨な人生を終えた。 しかし黄昏は既にその時点で求道神としての資質を持っており、その魂は死してなお黄昏の浜辺という隔絶された特異点を創り出していた。 そんな黄昏を見て、心を奪われた男が水銀であった。彼は黄昏の本質を見抜き、女神こそが自身の後継に相応しいと考え、彼女を覇道神へと造り変えるための舞台を構築していった。 師匠として黄昏に接近した水銀は、パートナーとして刹那を与えた。そして、黄昏の女神は刹那に協力する形で黄金と戦い、傷付き、那由他の回帰の中で少しづつ求道の殻を破りながら成長していく。 そして、日常を知り、仲間を知り、悲劇を知り、自分を知り、恋を知り、愛を知り、ついに覇道の神として覚醒した黄昏は、機は熟したとして水銀にその座を禅譲されたのであった。 世界観・法則 法則 総ての生命が生まれ変わり続ける世界 世界観 美少女ロボットアクション/魔法科学 理 輪廻転生 座の年期 一万年弱 支配形態 自由型 座の構成 多元宇宙・多元時間 死後概念 あり 世界から争いや悲劇は絶えることはない。しかしそれは悲しいことだから、次こそはもっと幸せな人生を得られるようにと魂を優しく抱きしめ、異なる生涯に送り出す。 善悪や敵味方を関係なく、誰であれ優しく抱きしめる。この慈母の愛こそが黄昏の法則である。 過去例を見ないほど柔らかな治世であり、あまねく総てを慈しむその愛は子を見守り成長を望む母性の具現。 覇道とは常に自身の飢えや渇きを潤すべく流れ出すもので、それによって創造された世界は当然自らに還元される部分を持っているのだが、黄昏の世界は「他者を幸せにすることで自分も幸せを感じる」という感性の元成り立っている、完全に利他と利己が共存するもの。それはつまり非の打ち所がないということ。 今を生きる人々のため、そして共に幸せを追い求めるべく創造されたこの世界では、いつか必ず幸福になれる。 死した生命の魂を転生させ、緩やかに成長を促していく。 この時代の人間達は輪廻のたびに異なる人種や立場などのあらゆる生を体験することで、霊的に混血化を促されるのが特徴。それはすなわち、人種や性差、貧富などから生じる差別意識の希薄化であり、緩やかな時間をかけて人を成長させることが目的。 他の神々と違って高圧的に法則を押し付けるのではなく、そっと背中を押してあげる自由で寛容な自由型の世界であり、歴代の神座の中では最も人々が生きやすい理。 故に理想的平和社会として統一国家の誕生までに至った。文明は魔法科学というレベルまで進んでおり、古きよき文化や自然環境は残しつつもSFチックな技術も存在していた(*1)。自由型である上に、人間の成長を促進する作用もあるため、文明の進歩がかなり速い。 黄昏は人を優しく見守るだけで運命を管理せず人の心や生き方に干渉しないため、今生における自由を許している。それでいながら例え今生が不幸な人生であったとしても、「みんないつか絶対幸せになって」と来世までをも保証してくれているので、記憶は引き継がないものの次は今生で頑張った分だけより成長した己として人生を歩ませてくれる。神の加護など介在せずに、人が人らしく自らの生き方を模索しながら生きることが出来る治世。 逆に言えばおそらくは来世でも不幸な己を脱して幸せになるためには神に頼むことは不可能であり、あくまで自分自身の努力で掴むしかないということ。単純に死ねば幸せになれるわけでは無いのだろう。しかし転生をして成長するのは総ての生命であるため幸福になりやすくなる土壌は時を経るごとに育まれていくものと思われる。 人間関係も断たれるわけではなく、ベアトリスとエレオノーレがそうであったように縁のある人物とは別の関係性を築くこともあり、永遠の悲劇の別れや断絶というものもない。 本来神座の世界は怒りこそが特権の証となるのだが、黄昏は怒りを持たず慈愛の渇望で神座に至った唯一の例外的存在。 元型アーキタイプの第一神座の存在から神座はどのような時代も大小あれど邪神によって地獄のような世となるのだが、例外の黄昏が治めるこの時代は異なる様相を呈している。 だが例外とは死神の代名詞、ルールを破れば崩壊が始まる。後に起こる神座の決着を着ける戦いの始まりはこの神の誕生に理由があるのかもしれない。 なお「全てを抱きしめる」という渇望ゆえに「覇道神を共存させる」という異質な特性を有する。 一般的な覇道神は互いに理がぶつかり合い、より強大な方が世界を塗り尽くすまで戦いが終わらないため、原則的には一時代一覇道神である。 しかし黄昏の女神だけは覇道でありながら他者に対する攻撃性は皆無であり、自分以外の覇道すらも優しく抱きしめてしまう。どんな荒くれ者も母の愛には勝てないということである。 これにより、先代の第四神座時代に生じた四柱の神が全て第五神座では共存しており、刹那・黄金・水銀の強力な三柱が守護者となっていた。 末期 しかし、この黄昏輪廻転生にも致命的な欠陥が存在する。 黄昏の女神はあまりにも優しすぎた。 彼女はその性格上どんな凶悪な危険分子であっても、相手の意思を尊重してしまう。優しく見守ることは黄昏の長所なのだが、極端なことを言えば邪神が生まれ座の滅亡すらも招いてしまう可能性がある欠点ともなる。(*2) 座の末期に誕生した当代の神殺しの思想を持った神座自体の破壊を目論む邪教団『転輪王の花輪サンサーラ・ヴァルティン』。彼女らの活動も知ってはいたが、首魁の思想も理解していたため直接手を下すことはせずあくまでその時代の人間達の判断に任せていた。 刹那・黄金・水銀の三柱の守護者はいずれも強力かつ異分子には冷酷なまでに対処するのだが、第五神座は彼らの身体ではないため黄昏に対する危険分子の早期発見が難しいという、座についていないからこその欠点が浮き彫りになってしまった(*3)。 これに加えて座の交代を望む観測者が転輪王の花輪に敵対する組織に属しており、間接的に彼女たちの支援をしたことで事態が加速していき、最終的に第六天波旬という最凶最悪の邪神が誕生してしまう。 強力だと思われていた覇道共存能力も実際は許容量の限界を迎えており、波旬によって能力が破られた際には守護者達は個々の覇道の衝突によって足を引っ張り合ってしまう。 女神の法則を守るために第四神座時代から残った者達が新たな脅威に立ち向かうが、結果は惨敗となる。敗北した者達の末路は消滅したか、留まったか、取り込まれたかの3つに分かれ、第六神座の行末にも関わっている。 進歩していた文明も次代の理によって大戦争が起きたことで中世レベルまで後退してしまった。さらに人類滅亡まではいかないものの、人が慢性的に死にまくるため進歩せず、座の交代から数千年かけてようやく後の世界の物語が幕を開けることになる。