14歳になる、 桜吹 和皚(おうぶき なしろ)は、自国の大名に仕える直属の武士の家にいた箱入り娘の一人である。彼女は、武芸に秀でていて特に嫁ぎ先が決まっておらず彼女自身も外の世界を見ていきたいと思っており両親もそこまで反対していなかった為、桜吹家では異例であるが一人旅をする事を決心した。 話は変わるが、彼女は、まだ「左腕に封印されし闇」(中二病)とかには、目覚めていない。しかし、少しその鱗片が垣間見えている……。 【お知らせ】 以前から気になっていた立ち絵の口が出力されてないという問題を直しました。サイズが小さすぎて中々描くのが大変だった…。AIに描かせようとすると口だけ出力してくれればいいのに全くの別人を出力してしまうから…何か良いアプリは無いですかね?それと、やはり画力が欲しい。 身体が一部透けて背景が見えてしまっている問題を修正。立ち絵としては、ほぼ完成かな? 非戦闘バージョンです!!↓ https://ai-battler.com/battle/bf969c29-058b-45fe-9f29-f57feffc24fa ↓は、ショートストーリーです。 追記:なんか長くなりそうです。 ー【第1章】ー(雪桜の湯の編) とある村での出来事。 和皚は、旅で温泉が有名な村(と言ってもかなり大きく一つの町といってもおかしくない規模である。)に着いた。 「はぁ~、やっとついたのだよ〜」 そう言い、宿の受付に一泊する旨を伝え、夕飯までに温泉にでも入ろうと表通りを歩き、突き当りまで歩いてきた。 「この村で一番人気の温泉はこの辺りだと聞いたのだけど…結構宿から離れているのよね……。これじゃあ、宿に戻る頃には、湯冷めしちゃう… あ、!でも、全力で走れば大丈夫か!!…いや、汗かいちゃうじゃん。」 そうぶつぶつと独り言を言いながら、上を向いたり下を向いたりして……周りから奇怪な目で見られていることにも気づかずに……考えていた時、少し遠くで音が聴こえたような気がした。 「やはり、汗を掻かないように全力で走るのが、最適なのだよ?……ん?」 ー村の外れにてー 「だ、だれか…助け…」 助けを呼ぼうにも、目の前の恐怖に上手く喋れない。 2人の少年は、風前の灯の様に、か細く震える事しか出来なかった。 2人の少年は、村の外れにある林で山菜を集めていた。この時期、この林はモンスターの目撃が少なく安全だと言われていた。 「ふぅー、大分集まったなぁ。あと一時間位で戻ろう。」 「わかった。じゃあ俺は向こうの方を探すよ。」 そう言って、1人の少年は少し奥に入って行こうとした時、ソレはいた。 「お、おい あれって…。」 少年は、もう一人の少年の肩をたたき指をさす。 「そんな、この時期は出ないはずなのに…。」 肩をたたかれた少年は、指さす方に顔を向けると、そんな言葉を吐いた。 指をさされたソレは、大きな体をを持ったヘビ、冒険者の間では【マーダージャイアントスネイク】と呼ばれ、中堅パーティーでも何人か犠牲を出してやっと倒せるかどうかと言った、危険なモンスターだった。 2人の少年は、すぐさま近くの茂みに隠れやり過ごそうとした、2人はよく山菜を採りに、ここに来ることが多く、自分では勝てない生き物がでたときは、こうしてやり過ごすことが多かった。 今回に至っては、勝てるか判断するまでも無く、本能で「見つかれば、殺される。」と感じ、すぐ隠れる事が出来たので、これなら見つかることはないと、内心ホッとしていた。 しかし少年達は知らない。ヘビと言う生き物はピット器官と言う、熱で獲物を感知する能力があるということを、そしてその能力はもちろん、マーダージャイアントスネイクにも備わっていた。 隠れた少年達は戦慄した。見つかる前に隠れられたはずなのに、正確にこちらへ向かってくるからだ。 「だめだ、あいつにはここがバレている。走って逃げよう!!」 「で、でも、何処に逃げる……?」 「………!村の広場だ、そこなら大人の人もすぐ駆けつけられる。」 身の危険を感じ内心恐怖しながら、自分でも信じられない位冷静な判断に驚きつつも、走り出す。 マーダージャイアントスネイクは、動く2人の子どもを目視すると、一層速く体を動かし獲物に迫る。そしてそのまま、噛みつこうとした時、少年達は最後の力を振り絞り横に跳び回避する、避けられたマーダージャイアントスネイクは前にあった木にぶつかった。木は、バキバキッ と音を立てて倒れるがマーダージャイアントスネイクはものともせず、獲物が何処か探し斜め後ろに居ると気づくと「しゅーーしゅー。」と威嚇音を出しながら近づいてくる。 「もう、だめだ…」 目に涙を浮かべ、少年は絶望した。 大声を出そうにも声が出ない。 震える人間の子ども達を見て、やっと獲物を捕らえたと満足気に口を開くマーダージャイアントスネイクは、そのまま噛みつこうとした、その時!! ーーーーー身砕きーーーーー マーダージャイアントスネイクの巨体が大きく跳ね、沢山の木々をへし折りながら飛ばされる。 ・もう一人の少年視点・ よく一緒に山菜を採りに行ってた親友と大蛇から逃げてるとき、僕は混乱していた。よくわからなかった。大蛇が目の前にきているときも、なんの感情もわかなかった、自分で言うのもなんだけど、死を直前にして諦めていたのだと思う。横を見れば、親友が恐怖で震えていて声を出せずにいた。僕は声を出す気にもなれなかった。誰かの声が聴こえた気がする…遂に幻聴も聞こえる様になったみたいだ。 大蛇が噛みつこうとする。もう終わったんだと思った、けどその時、白い何かが大蛇を弾き飛ばした。 よく見ると、白い笠を被り、白い和服を着た自分より年上っぽい少女だった。手には、少女には似合わない大太刀が握られている。…あれで大蛇を飛ばしたんだ。 弾き飛ばされた大蛇は、口から血を吐きながらもその巨体をしならせ鞭みたいにして攻撃する。 ーーー二段抜刀ーーー 白い少女の手元が霞んだと思ったら、大蛇の尻尾?に当たる部分が胴体と離れていた。 ーー✟吹雪之閃剣✟(ブリザードスラッシュ)ーー 少女が何か言いながら刀を振るう。 すると、大蛇はみるみる刻まれていき、その断面は凍っていた。 白い少女が動くたびに鳴り響く鈴の音は次第に僕の心を癒していく… 『生きれる…』 そう僕が思い始めた時、涙が頬を伝う。気づけば大声で泣いていた。隣を見れば親友も泣いているようだ。 大蛇を倒し終えた少女は、此方を見ると、目を見開き少し気まずそうな表情をした後、表情を整えて無言で去って行った。 ・和皚視点・ 「少し寄ってみるのだよ。」 和皚は音のする方へ行くことにした。 数十分程進むと、遠くで大きな蛇が2人の少年を追いかけている。 「あれは…、マーダージャイアントスネイクなのだよ?…。」 和皚にとって【その程度】の相手なら問題なく対処できる。 その時、和皚は閃いた。 『ここで、カッコよく登場した後、カッコよく助ければ、子ども達から尊敬の眼差しで見られるのではないか?』と、 自分を特別だと思いたい。承認欲求の高いお年頃の和皚であった。 自らの野望を達成させる為和皚は、前もって考えていたセリフを2人と一匹に放つ 「チ、ちょっとまて〜!!! 少年達に危害を加えるなら、このわたしを倒してからにするのだな!!」 (語尾に気づかれない位小さな声で『のだよ…』と言いながら) 和皚は一人キメポーズをとる。 ……和皚は気づいていない、そのようなセリフは、人の言語が分かる相手にしか伝わらなく、人語のわからないモンスターの類には効果など皆無であり、恐怖に囚われている子供達には耳を傾ける余裕は無いということを。 リアクションが全く無い事に和皚は内心焦っていた。 『あれっ?こういうのって普通、「誰だ!お前は!」とか、こっちの様子を伺う様な視線を向けたりするんじゃないのだよ?』 「ま、まぁ 倒し終えた後でもまだ間に合うから大丈夫、大丈夫…。」 和皚は一人で(語尾が無くなるくらいには)動揺していたが、これ以上時間をかけると流石にまずいと思い攻撃を仕掛けに行った。 ー数分後ー 特に危なげなくマーダージャイアントスネイクを倒した和皚は子供達の様子を見ると、2人の子供は大きな声で、泣いていた。 和皚は、少し驚き目を開きつつも、ここで格好の良いセリフを言っても、効果は薄いだろうなぁ、とそして、無言で立ち去った方がカッコよく、印象に残るだろう。と思いついて、少し笠で目元を隠すようにし、特に喋らず、立ち去った。 宿に戻る時、村の住人に事を伝え、自分の部屋に入った時にある事に気付いた。 「あ、温泉入ってないじゃん…。」 ー【第2章】ー(紅葉の神社編) ・上の巻・旅する侍は噂を征く。 お昼時、和皚は 旅人が休憩する時に立ち寄りそうな小さな集落で、おにぎりを食べていた(「おにぎり美味しいのだよ〜」)時、一つ席を飛ばした所にいた2人の旅人達の話し声が聞こえてきた。 旅人A:「いや〜、ここから東の方にある神社は今、紅葉で凄く綺麗だったなぁ」 旅人B:「へぇ~、確かに今は紅葉が凄そうだな。これから立ち寄ってもみたいが…、生憎俺はこれから西に行かなくてはならん。残念だ…。」 旅人:A:「そうなのか、でもあそこの神社と紅葉の景色は、本当に綺麗だったなぁ。しかも、そこの甘味処に売られている【紅葉樹の1000年樹蜜】は、少し変わった味のあんみつで絶品だったぜ!!」 旅人B:「うーん、今の用事が済んだら一度行ってみるか……」 旅人A:「ああ、一度行ってみるといいぜ!あ、あと少し耳に挟んだ話なんだがな。どうやら、その1000年樹蜜が食べれるのは凄く運が良いらしい、1000年樹蜜が採れる紅葉樹が今、2本しかなくちょうど500年周期に採れるらしいとの事だ。つまり、今食べ逃したら500年は食べられないらしい。まぁ、一回で採れる量がすげぇ多いから、あと5~6年は持つみたいだな。そして、この情報実は、ほとんど知られてないみたいでよ。なんでも、500年周期だから忘れ去られてるんだとよ、俺はたまたま、代々そこの甘味処を受け継いでいる家系のおやじから気に入られて教えてもらったんだけどな。」 旅人B:「…よし、行こう……!!」 旅人A:「用事は大丈夫なのか?」 旅人B:「冗談だ、 終わったらいくとするよ。」(笑いながら言う。) ぴくっ そんな話が聞こえた和皚は、 『え!、東にそんなのがあるのだよ?!これは、行くしかないのだよーー!!』 と、決心する。 そんな時、少し奥から 少しふくよかな体型の中年男性が旅人達に話しかけていた。 ふくよかA:「ふぅむ、何やら興味深い話ですな。」 旅人A:「ん、……どうやら声を出しすぎたな、あんたは?」 ふくよか:A「おお、申し遅れました。私は【世界を股にかける行商人】レヴァーノと言います。以後、お見知りおきを。」 旅人Aは、あまり信用してない様な目つきでレヴァーノと名乗る行商人を見つめてる。 旅人B:「レヴァーノって、あのレヴァーノか?!」 旅人A:「ん、?お前はこいつの事を知ってるのか?」 旅人B:「確か、北の海を渡った先にある大陸を統べる王様に認められ、ご贔屓にしてもらってる行商人の名がレヴァーノだった気がする。」 旅人A:「まじかよ……すげぇなあんた。」 どうやら、あのふくよかな人は、すごい人みたいだ。 レヴァーノ:「いえいえ、確かに、かの国の王とは良くしてもらってますが、私なんてまだまだ……。それで、その話の事なんですが…詳しく聞かせてもらっても?」 旅人A:「まぁ、いいぜ。」 旅人はレヴァーノと色々話し合ってる様だ。 和皚は、そろそろその場所へ行こうかなと席をたった時、ちょうど旅人達とレヴァーノの話も終わった様子で席を立つ。 レヴァーノ:「やはり、その甘味処の方とは、コネを作った方が良さそうですな。いやはや、素晴らしい情報ありがとうございます。」 旅人A:「こちらこそ、あなたの話は面白いものばかりで楽しかったぜ!」 レヴァーノ:「では、失礼するとしますかな。」 旅人達:「「またな!!」」 どうやら、先程の話し合いで仲良くなった様だ。 ・次の日の朝 ひとまず和皚は、東の神社を目指し歩いて行った。 ー【第2章】ー(紅葉の神社編) ・中の巻・鳥居と神社と紅葉と… 話を聞いた集落を出て丸1日が過ぎ、今は2日めの昼だ。 「うぅ、疲れたぁ〜、思ったよりも遠いのだよ〜。」 和皚は、なかなか目的地に着けず、疲れていた。 「そして……、ここはどこなのだよーーー!!!?」 今、彼女がいるのは、深い竹林の中だった。 とりあえず和皚は、竹林の中で少し開けた場所に座り昼食をとることにした。昼食は、前いた集落で買った干し肉とパンだ。 「うぅ、ご飯も少しずつ無くなってきてるのだよ…。これは、まずいなのだよ。」 そう言いながら昼食を食べていると、視界の端に何かが写った。『獲物!!(今夜の夕飯)』と思った和皚は身構える。 視線を向けた時、そこにあったのは、何処からか飛んできた紅葉したもみじだった。 『夕飯じゃなかったなのだよ……。 あれ?もみじって事は…、』 「近くに、神社があるなのだよ?!」 近くに目的地(神社)がある。そう思った和皚は、すぐ立ち上がり魔力を大太刀と手足に込める。 「うおおお、行くのだよーー!!」 ーー身砕きーー ーー二段抜刀ーー ーー✟吹雪之閃剣✟ーー ……!! 沢山の技を繰り出し和皚は、竹林を切り開いていく。『……!、、見えた!!』 竹林の先にあったのは、見事なまでに整った、鳥居と神社と紅葉の調和だった。 「…ふ、ふふふ。やっと、やっとついた!…なのだよ!。」 魔力を使い疲れた和皚は、片膝をつきながらそう言葉をこぼす。周りを見ると、少し人が、集まってきて何か言っている。 疲れて少し朦朧としている頭でなんとか聞き取ってみた。 ???:「く、、」 和皚:『く、?』 ???:「曲者〜〜〜!!!」 和皚『!?』 どうやら、その声の正体はこの神社を管理していた役人さんだったらしい。疲れて特に抵抗もしなかった和皚は、取り押さえられそのまま、入り口近くの事務所へ連れて行かれた。 ………その後、状況を説明して納得してもらえるまで、1時間程説教は続いた。 説教から解放された和皚は、次からはもっと慎重に行こうと心から誓った。 「事務所のお姉さんは、怖かったのだよ……。」 和皚は事務所での、1時間、冷たい視線を正座で受けながら、こっぴどく叱られ常識を説かれ続ける事は一種のトラウマになりかけていた。【和皚の心の体力(以降HP:ハートポイント)と表記。-500残り:500】 ー神社巡り入り口ー 和皚はそのまま、入ろうとした時横から呼び止められた。 受付:「入場料はお一人様1000円です。」 和皚:「ええぇ、お金取るのだよ?」 そう呟くと、近くにいた役人が、ギロリと鋭い視線を向けてきた。 和皚:『う、あの役人さんなのだよ…。』 和皚は自身のお財布が心配で一瞬ゴネようか考えたが、自分を捕らえた役人さんの圧を前にその様な考えは吹き飛んだ。 ひとまず、入場チケットを購入した和皚は、神社巡りの順路につく。すると、後ろから受付の人の声が、かかってきた。 受付:「あのー、その刀は抜かない様にして下さいね。」 和皚:「もちろんなのだよ!こんな綺麗な場所で、そんな危ないことはしないのだよ〜。」 そう返事をし、少し歩くと大きな看板が見えた。 「ふぅ~、やっとここまできたのだよ。これは、マップなのだよ?」 見つけたマップを見ると、この神社巡りは次の順路に沿って行くようだ。 【境内巡り順路】 ①紅葉大門:紅葉の様な色合いの大きな鳥居。くぐると、旅が上手くいくと言われるパワースポットの一つ。(kouyoudaimon) l l ↓ ②透心水泉:とても透明度の高い池で、常に深くなっている所から、水が湧き出ている。水のキレイな所にしか生息しない生き物が見られる。(toushinsuisen) l l ↓ ③紅葉憩いの広場:沢山の紅葉に囲まれている広場、休憩場所がある。そこそこの広さがあるため、子供達に人気なスポット。(kouyouikoinohiroba) l l ↓ ④染飛沫の滝:幅の広い綺麗な滝。上がる水飛沫は、紅葉の色を反射してカラフルな模様を映し出す。吊り橋から見る景色は絶景。(someshibukinotaki) l l ↓ ⑤双大樹神社・本殿:幾つかの鳥居をくぐり抜けるとある厳かな神社。後ろには、大きな樹木が2本そびえ立っている。その木は、一年中紅葉しており、落ち葉はあるのに葉が無くならない。階段が長い事でも有名。ここの目玉スポット。甘味処【紅】もある。(soutaijuzinja・honden) 【紅葉大門】 「まずは、紅葉大門をくぐるのだよ〜」 少し歩くと、目の前にとても大きな鳥居があった。どうやら、この神社内で一番大きいらしい。 「うわ〜、とっても大きな鳥居なのだよ〜。」 「それに、なんだか元気が湧いてくるような、」 【和皚HP:+100・残り:600】 鳥居をくぐり、次の【透心水泉】へ向かう。 【透心水泉】 「ここの、泉は凄い綺麗なのだよ〜。」 和皚は、目を輝せながら神秘的な透明感の泉を観て少し心の中が、スッキリした感じがした。 【和皚HP:+50・残り:650】 「ゲコッ」 和皚:「ん?」 和皚は後ろを振り向くと少し大きなカエルが、飛び込んでくる。 和皚:「ひゃあぁぁぁーー!?」 いきなりの出来事に混乱しながらもカエルを振り落とす。どうやら、そのカエルはキレイな場所にしか生息しない珍しいカエルらしく、科学者達からすれば嬉しい出来事なのだが、和皚にとっては、いきなりカエルが飛びついてくる。と言う、良い体験ではなかった。 【和皚HP:-100・残り:550】 【紅葉憩いの広場】 和皚は、カエルがついた場所を水洗いする為に、次のエリアである紅葉憩いの広場へ足を進めた。 「はぁ、ひどい目にあった…のだよ。」 憩いの広場に着いて、すぐさま休憩スペースの水場を使い汚れを落とした和皚は少し気分が落ち着いた。 【和皚HP:+20・残り:570】 広場を見渡すと、紅葉した葉っぱが美しく舞っており、沢山の子供達が駆け回っている。休憩スペースをよく見れば子供達の親と見られる人達が、楽しそうに雑談している。 少し広場の中央に向かい歩いていたとき、ふと、周りを見ると十数人の子供達がこちらを見て何か話したそうにしていた。 和皚:「(さっきから見ているけど…)どうかしたのだよ?」 (子供は何か決心したように深呼吸してから) 子供A:「お前はどこのもんだ?!ここは!!俺達【双淵の竜】の縄張りだぞ!!……その白い服装、まさか【ホワイトタイガー】か!!」 後ろに居た子供達も「そうだそうだ」と囃し立てている。 和皚:「…………。えーっと、どういう事なのだよ?わたしは、観光に来ただけなのだけど…。」 子供B:「……健太郎君、これまずいよ。この人全く関係のない普通のお客さんみたい。」 どうやら最初に話してきた子供は、健太郎というらしい。 健太郎:「え、……。どうしよう。」 子供C:「早く謝ったほうが良いよ、もし健太郎君の親にバレたらこの場所にいられなくなっちゃうかも…。」 健太郎:「う、確かにおやじにバレたらやばいかも……。 え、えとお姉さん、さっきは、その ごめんなさい。あまり、俺達と歳の差が無なそうだから、他のグループの奴らかと思っちゃって。…よく見れば、その服装はこの辺りじゃ見かけないよな。」 和皚:「ま、まぁいいのだよ。それより、皆はわざわざお金払ってここに来てるのだよ?」 確かに、親らしき人も居るが今の話を聞くと普段からよくここに来ている感じがして、今の子供はそんなに金持ちなのかと思い、聞いてみた。 健太郎:「いや、俺のおやじがここの神社の神主なんだよ。だから俺らだけの拠点としてここを使えてるんだ。……だから頼む!おやじにはこの事を言わないでくれ!!」 和皚は心の中ではっ、とする。 『今、この子の親がここの神主だって言った?…これは、仲良くなれば色々いい事ありそうなのだよー!!』 和皚:「もちろんなのだよ〜。そういえば、わたしの自己紹介がまだだったのだよ。」 和皚:「わたしの名前は、桜吹 和皚(おうぶき なしろ)って言うのだよ。わたしは向こうの国の大名に仕える武士の家の娘で、多分、修行の旅に出ているのだよ〜。」と言い西北西を指さす。 少し早口だったからか、子供達には、あまり理解できてなさそうな反応だった。 和皚:「要するに、旅をしているお侍さんなのだよ〜。」 そう和皚が言うと、子供達は目を輝かせて、「「「「すげぇーー!!」」」」 と、言った。 健太郎:「すげぇ、お姉ちゃん侍だったのかよ!」 子供B:「カッコいい!!」 子供C:「刀とかあるの?」 一人の子供がそんな事を言うと、他の子供達も 子供D:「確かに、みたいみたい。」 子供E:「見せて〜」 と、刀が見てみたいと言い出した。 「カッコいい」と言われ、気分を良くした和皚は、「もちろんなのだよ〜!」 と言い。背中に背負ってた大太刀・白山吹を出すと、 子供達:「「「おぉ〜〜!!」」」 健太郎:「白みがかった銀色ですげぇ綺麗。」 なんて反応が返ってくる。 【和皚HP:+200・残り770】 さらに、気分を良くした和皚は子供達に少し下がるよう言い。抜刀の構えをとる。……和皚がいつの間にか刀を出した時には、周りを舞っていたもみじが太い葉脈に沿って綺麗に切り分けられていた。 それを、見た子供達はさらに沸く。 和皚:「次は、とっておきを見せるのだよ〜!」 そう言うと、和皚は上に向かって吹雪之閃剣(弱)を放つ、刀が通る場所が真空になり一瞬で凍り始める。その瞬間、二段抜刀を使い、凍りついた空間を粉々に切り捨てる。すると、粉々になった氷が雪の様に辺りを舞った。 いつの間にか遠くにいた子供達も集まってきていて、かなりの人数の子供達が和皚の剣技に魅入っていた。そして、雪が降ってるみたいになっている様子を見て、皆して大きな歓声を上げた。 【和皚HP:+600!!・残り:1370】 そんなふうに、ワイワイしていると健太郎が声を上げる。 健太郎:「あ、母ちゃん!!」 和皚は、挨拶くらいはしておこうと振り向く、するとそこにはつい少し前に見た顔が、あった。 健太郎母:「あら、和皚さんさっきぶりね。」 和皚:「ど、どうも…まさか、事務所のお姉さんが健太郎君のお母さんだったとは思わなかったのだよ。」 健太郎母:「ところで…、その右手に持っているのは何かしら?……刀の様に見えるのだけど。まさか、振ってはないわよね?」 和皚:「あはは…まさか。振っては無、 健太郎:「母ちゃん聞いてよ。和皚姉ちゃんすげぇんだぜ!!あの刀で落ち葉を綺麗に斬り裂いたり、雪みたいのを降らせる事が出来るんだ!!!」 健太郎母:「へぇ~、そうなんだ…。凄いんだね、さぁ健太郎はあの子達と遊んでなさい。お母さんは、この子とお話があるから。」 健太郎:「はぁーい。」子供達の方に走っていく。 健太郎母:「…何か言うことは?」 和皚:「すみませんでした。」 健太郎母:「全く、目を離したらすぐこうなんだから…今から言うことをしっかり聞くのよ。」 ー30分後ー 【和皚HP:-550・残り820】 健太郎母:「はぁ、特に怪我とかは無いみたいだし、子供達も喜んでくれたみたいだから、これ以上は言わないけど気を付けてね。」 和皚:「はい……。気を付けるのだよ。」 和皚は、少し涙目で(しかし悪いのは完全に自分なので同仕様もなく)次のエリアに向かった。 【染飛沫の滝】 (普段より元気のない足取りで)しばらく歩くと、奥から水の激しく跳ねる音が聞こえてきた。 「なんだか、心が落ち着く様な響きなのだよ…」 そして、絶景スポットの一つである吊り橋の所まで来た。 「…きれい。」 その景色をみた時、言葉の多くを失った。目の前に広がるのは、流れ落ちる水の透明度故に奥の岩肌が見え、跳ねる水飛沫は紅葉に照らされ不思議な色合いを発している。そして、それらから奏でられる音は現代じゃ到底出すことのできない深みのある清らかな音色だった。 そこには、一つの幻想郷があった。 一つの幻想郷をみた和皚は次第に心の平穏を取り戻した。 【和皚HP:+180・残り:1000】 【双大樹神社】 美しい景色を見て心を癒された和皚は、少し名残惜しいと思いつつ次のエリアに足を運んだ。 10分程歩いた時、目の前に鳥居が並んでいるのを見つけた。『沢山あるのだよ〜』と思いながら、幾つもの鳥居をくぐり抜け先に進む。 「ここも、中々幻想的なのだよ〜。」 この、幾つもの鳥居がある空間も滅多に見られることは無い。と、わくわくしながら歩いていく。 しばらくすると、階段が見えてきた。 「これは、結構しんどそうなのだよ…」 見上げると、500段くらいはありそうな階段に思わず苦言をもらす。もう少しよく上を見てみると大きな木が2本程見えた。 ー25分後ー 「はぁ、はぁ、…やっぱり、かなりしんど、いのだよ。」 元々、歩いて旅をしている和皚の体力はかなりあるのだが、流石に合計597段の階段は体にこたえた様だ。しかもこの階段、傾斜がかなり急で、それも疲れる原因にもなっている。 …あえて和皚の凄い点を言うなら、2回ほど水飲みを挟んだくらいで、ほとんどノンストップでこの階段を登りきった事だろう。 「うぅ…しぬぅ…疲れたのだよ〜…。」 そう言い、近くにあった調度良い大きな石にうつ伏せでくっつく。『あぁ、ひんやりして気持ち良いのだよ〜…。』と思いながら10分程休憩をとった。 休憩し終え神社本殿へ向かうと、そこには厳かな雰囲気の神社が…ある事よりまず、その後ろにあるかなり巨大な2本の樹木に目がいく。 「大きい木なのだよ〜…。」 ひとまず、神社に来たのでお参りをして行こうと、お賽銭箱の前までやって来た。 チラリとお賽銭箱の中を覗くと、ある程度有名な神社なのか、それなりの量のお金があるのが判る。 『わたしよりこの賽銭箱の方がお金持っているのだよ…。す、少し…』 などと、罰当たりな事を思っている和皚の頭に、何処からか木の実が数個落ちてきた 「痛っ、そ、そんな事考えて無いのだよ〜!!」 突然頭に衝撃が入り慌てて辺りを見渡すと、周りに人は居らず偶々、木から落ちてきた木の実が当たったのだと分かり胸を撫でおろす。 お賽銭箱に5円を投げ入れて(罰当たりな事を考えて申し訳ない気持ちで500円追加して)手を合わせ祈がった。 『これからの旅も上手くいきますように。』 風になびかれ枝が揺れ動く様は、願いを聞き届けたと頷いている様にも見えた。 お参りを終え、出口へ向かおうと道を歩くと、途中でどこか見たことのある大きな人が足早に去って行くのが見えた。その人が来た方を見ると、【紅】と書かれた看板と【甘味処】と書かれた幟を見つけ、元々ここに来た目的を思い出す。 「…!そうだ、あんみつを食べに来たんだったのだよ!!」 和皚は、甘味処と書かれた暖簾をくぐり店の中に入る。あまり人はいなかったが和皚を見る視線が集まってくる。しかし、すぐ興味を失った様に見るのを止めた。 そこは、和菓子の店と言うより冒険者が集う酒場という方が正しいと言った感じだった。酒の匂いはしない。 『あれ?来る店間違えたのだよ?』 少し心に不安を覚え一度店の外に出てみると、やはり看板には【紅】と書かれ幟や暖簾には【甘味処】と書かれている。再び店に入ると、他の客人から少し不審がられた目を向けられたが、そのうちの一人が苦笑しつつ話かけてくる。 他の客A:「ここは、甘味処で合ってるよ。内装はあそこにいる店主の趣味で完全に酒場だけどね…」 指差された方を見ると、いかつい50代位の大男がカウンターに居た。 和皚:「…あ、どうもありがとうなのだよ。」 和皚はお礼を言い、大男の居るカウンターへ向かう。 大男(店主?):「嬢ちゃん、注文は?」 和皚:「えーっと、【紅葉樹の1000年樹蜜】を頼むのだよ〜。」 その言葉を言った途端、店内がざわつく。 (ざわ…ざわ…) 他の客B:「お、おい聞いたか?」 (ざわ…ざわ…) 他の客C:「ああ、確かに言ってたぞ。」 (ざわ…ざわ…) 他の客A:「まじかよ…。」 店主:「…【紅葉樹の1000年樹蜜】で良いんだな?」 おそらく店主であろう大男がそう言うと、周りの客人達は静になり和皚の応えを待つ。 和皚:「(周りが騒がしくなったと思ったら、急に静まり少し不安になりながら)え、うん。そうなのだよ〜。わたしは【紅葉樹の1000年樹蜜】を食べにきたのだよ〜。」 周りの客人達の、息を呑む音が聴こえたような気がする。 店主:「…ふっ。わかった、すぐ持ってきてやる。 おいっ!!1000年樹蜜だ!!すぐ用意しろ!!」 〜およそ5分後〜 店主:「これが、1000年樹蜜だ…」 そう言って目の前に出されたのは、滝の流れような模様が美しい寒天に、さつま芋が練ってあるあんことバニラアイスが乗っかっており。もみじと、イチョウの葉の形をしたゼリーとぶどうが数個トッピングしてあるあんみつだった。そして、目を引くのが滝の形に沿って流れている樹蜜だ、蜜の見た目は普通のメープルシロップみたいなのだか、匂いは全く違う。しかし、どう表現したら良いか分からないような不思議な香りを放っている。(個人差は多少あると思うが嫌な匂いではない。) 和皚:「ほわぁ〜、これが噂の1000年樹蜜なのだよ…。さっそく食べてみるのだよ〜。」 和皚があんみつを食べようすると、店主の大男から、待った。の制止が入った。 店主:「ちょいと待ちな嬢ちゃん。俺からのアドバイスだ。【最後まで】しっかり食べろよ…。」 和皚:「?、もちろんなのだよ〜。こんなに美味しそうなものを残す方が難しいのだよ。」 店主:「まぁ、これ以上は何も言う事はねぇ。美味しく食べていってくれ。あとは…少し遅れたが、お冷だ。」 和皚:「ど、どうもなのだよ。」 大男の店主が話す言葉に少し不穏な気配を感じたが気を取り直して、 和皚:「いただきますなのだよー!!」 さっそくスプーンをひと掬いし樹蜜と一緒にあんみつを食べる……。すると、ものすごい辛味が口の中を襲おうとする!! 和皚:『!!、辛っ…… (とっさに、お冷を取ろうと手を伸ばす。 …その瞬間、口の中の辛さが跡形も無く消え去った。) …く無い?』 突然辛さが跡形も無く消え去った事に驚きつつ、その違和感に顔を顰める。店主の方を見ると、少し口角が上がっていたような気がした……。 正直、もうあまり食べたくはなくなりそうだが、店主の言葉を思い出し…あとなんか嗤ってそうなのがイラッときたので…決心する。 和皚:『食べきってやるのだよ!』 しかし、まだ少し怖いのもあって恐る恐るスプーンで一掬いして食べる。 ……すると今度は、猛烈な苦さが押し寄せようとする!! 和皚:『!?、苦っ……?! (しかし、気付いた時には苦味は消え去っている。) …く無い……。』 てっきり、辛いのが来ると思っていた和皚は急な苦味?に面を喰らう。 和皚:「う、やられたのだよ…、でも何となくわかってきたのだよ!!」 お冷を少し飲み、もう一口食べる。あんみつは残り5分の2くらいだ。 あんみつを口の中に入れた時、次に襲ってきそうなのは、強い酸味だった。 和皚:「!、酸っっっぱ〜…… (しかし、消える。)…くはないのだよね…。」 辛味や苦味よりかはまだマシだったがやはりまだ慣れない様子だ。 和皚:『そろそろ、甘味がくるのでは?』 辛味、苦味、酸味ときて次にくるのは甘味なのでは?と閃く、(正確には辛味は基本五味では無いのだが、流石に塩味、旨味は来ないだろうと予想した。) 和皚は少し期待を持ちながら、また一口食べる。 ………和皚の予想は半分正解で半分外れと言ったところだった。 次に来る!と感じた味は確かに甘味だ。しかし、和皚の思っていた甘さの10倍は超える甘さが襲おうとしていた!! 和皚:「やった!やっぱり甘味だ! ……うぇ…」 甘味が来て喜んだのも束の間、和皚の顔は急に青ざめる。 和皚「うぅ…なんか残ってる様な感じがするのだよ…。」 いつもみたいにすぐ消えて無くなりはするのだが、一瞬感じたあの甘さは心なしか口の中に残っているような気がした。 そして、遂にあんみつはあと一口の所まできた。 和皚:「ここで美味しくなかったら、この噂を流したあの旅人は許さないのだよ……。」 ーーーーーーーーーーーーーーーーー (…ぞくり) 旅人A:「(ブルブル)なんか寒気がするな…」 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 少し間をおいて最後の一口を口に運ぶ。 ………その瞬間、口の中に広がったのは今まで食べたことの無いくらいの美味しさだった。 和皚:「これは………」 それは、甘すぎず、酸っぱすぎず、まさしく一番美味しいと感じる様な味だ。それとなぜだか和皚の好みに合った味も感じる様な気がする。 そんな至高のあんみつを食べ、今までの負の感情は吹き飛んでしまった。 和皚:「うぅ…美味しいのだよ〜……」 なんだか食べているうちに、涙が出てくる。今、和皚の心は約600段の階段を登りきった時の様な…いや、さらなる苦労を経てやっと辿り着いた時の様な達成感に満ちていた。 そして、その美味しさがすぐに消える事はなかった。 ー【第2章】ー(紅葉の神社編) ・下の巻・思い出は湯船の中で……そして次へ 受付:「では、こちらが楓の間の鍵となります。」 和皚:「ありがとうなのだよ〜。そういえば受付さん、夕食は何時ごろになりそうなのだよ?」 受付:「夕食は19:00からご用意させておりますので、それまで部屋でおくつろぎくだされば幸いです。それと、近くに銭湯もございますので一度ご利用になるのも良いかと思います。」 和皚:「わかったのだよ!さっそく銭湯に行ってみる!」 受付:「それではこちら、パンフレットとなっております。銭湯までの地図と割引権も付いていますのでご利用ください。」 「ありがとうなのだよ〜」ともう一度お礼を言いながら、和皚は銭湯へ向かう。 ー3分後ー 少し歩いた(10m)所に赤と黄色の【銭湯】と書かれた幟を見つけた。 和皚:「思ったより近かったのだよ…前に行った温泉の村も見習って欲しいのだよ。」 以前、温泉の有名な村に行ったときは色々あって入れなかったのを思い出し今日は銭湯でゆっくりしようと思う和皚であった。 ガラガラ(扉の開く音) ??「おや、いらっしゃい。かわいい子が来たねぇ。」 声のする方向を見ると、ちょっと気の強そうな年老いた女性が座っていた。おそらく受付の方だろう。 和皚:「こんにちは、おばあちゃん。この権は使えるのだよ?」 受付おばあちゃん:「ん?、ああ勿論使えるよ。あそこの宿の店長とは良くさせてもらっているからねぇ。それじゃ、半額になるから250円だよ。」 和皚:「はいなのだよ~。」 受付おばあちゃん:「毎度、…んじゃこれがタオルでこっちが籠ね。他にも何か使いたい物があれば20円で貸し出せるけどあるかい?」 和皚:「ん〜特に無いのだよ。」 受付おばあちゃん:「そうかい、じゃあゆっくりしていきな。」 「はーい」と返事を返しながら中に入る。銭湯の中は広く、奥にはあの巨大な2本の紅葉樹の絵が描かれている。 和皚:「そういえば、あの樹蜜は不思議だったな〜。」 チャポン…。 体を洗い流した後、湯船に浸かり大きな紅葉樹の絵を見ながら宿につく前の事を思い出す。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 和皚:「うぅ…美味しいのだよ〜……」 その美味しさを堪能しているとカウンターから大きな笑い声が聞こえてきた。 店主:「がっはっはっは、いや〜嬢ちゃんいい反応だね〜これくらい周りにもわかりやすい表情をするのはうちの子共くらいだ。…しかし、最後まで食べきったのはうちの子共でも無理だったなぁ〜。大人でも中々食べきるのは困難なのによく食べきった!!俺は嬢ちゃんの事、気に入ったぜ!」 客人A:「はっ、店長みたいなゴツい強面のおっさんに気に入られても困っちまうだろうがよ。」 店主:「…ふん、初めて食べたとき一口目でギブして店を飛び出して行ったお前に言われてもなぁ〜。」 客人A:「くっ、」 店主:「嬢ちゃん知ってるか?こいつ(客人Aを指差しながら)さっきの樹蜜を一口目でギブして、悔しかったのか何度も訪ねてきてよ、大体10回くらいトライしてみてやっと完食できたんだよ。まぁこいつは、嬢ちゃんより反応が大げさでな、一口食べるごとにのたうち回って他の客に迷惑をかける事もあったんだぜw。」 和皚:「うわぁ…。で、でも最後まで諦めないのは凄いことなのだよ。」 和皚は少し引き気味で客人Aを見る。 客人A:「ぐはぁ…。そ、その目線が一番効く…」バタッ 和皚:「わ、わわ。ごめんなさいなのだよー!」 客人B:「いいって、いいって。」 客人C:「その話はもうここじゃ定番のネタだからな。」 和皚:「皆さんは、知り合いなのだよ?」 客人B:「まぁ、知り合いっちゃ知り合いだな。」 客人C:「そこで倒れた奴(客人A)とこいつ(客人B)はよくここを訪れるんだよ。いわば、常連客ってやつだ。勿論、さっきの店長が話したこいつ(客人A)の迷惑行動も知っているし、こっち(客人B)に関しては被害者だな。」 店主:「こいつ等は、1日中うちに居るような暇人だと思っとけばいい…。」 客人A:「おいおい、古参の常連客なんだからもっと丁重に扱えよ〜、冷たすぎると傷ついちゃうぜぇ〜。」 客人BCA:「「「俺達親友みたいなものじゃないか。」」」 店主:「…でも暇だろう?」 ニヤリとした表情で問いかける。 客人C:「違いねぇw。」 客人B:「まぁな。」 客人A:「いや、俺は暇じゃないぞ。今はなんてたって1000年樹蜜を食べに来ているのだからな。」 客人B:「確かにそうだ。」 客人C:「俺達は裏メニューでもある、1000年樹蜜を食べにきているんだ!!」 そう言い合っている客人達を横目に店主はため息をつく。 その様子をみた和皚は『皆仲良くて温かい人達なのだよ。』と思い、心があったかくなったような気がした。 客人B:「あ、裏メニューで思い出した。ここの1000年樹蜜は宣伝なんかしてないから、あまり外に伝わる事は無いんだけど、そこのお嬢さんはよく知っていたね。」 和皚:「ああ、それは旅の途中で他の旅人さん達の話が聞こえてきたのだよ。その人が言うには癖はあるけどものすごく絶品だったって話だったから寄る事にしたのだよね。」 客人C:「ほーん、その旅人も変わり者だな。…そういえば、少し前に「なんだこのうまさは!!」とか叫んでいる奴も居たなそいつか…?」と、なにやらぼやいている。 ーーーーー 和皚:「それにしてもこの樹蜜は不思議なのだよ〜、なんでこんなに味が変化するの?」 店主:「これは俺が説明してやろう。 まず、この紅葉樹の蜜には微量ながら魔力が流れている。そしてその魔力には自分よりも強い魔力に馴染もうとする性質があるんだ。その性質があるから樹蜜の魔力の質の変化に伴って味も変化していく訳だ。それで、樹蜜の魔力と食べている人の魔力の波長が近くなると、その人が最も美味しく感じる甘さになる。というのが今の俺達が出した結論だ。」 和皚:「なるほど〜だから色んな味がしたのだよ。でも、あの味は強すぎる気がするな…。」 店主:「はっはっは、確かにあの味は初めての人には強いかもしれんな。嬢ちゃんが来る前に、世界を旅する…だったか?行商人を名乗る奴が居てよ、そいつは一口目で「こんなのが売れるわけないでしょう!!」とかぬかして飛び出てったしな。」 客人A:「むしろ、一回で食べきった方がおかしいんだよ。改めて凄いな…。」 和皚:「え?えへへ〜、わたしはもう大人の味に適応したのだよ!」 ぽんっ 客人A:「ん?」 客人C「ふっ、お前はまだ適応できていないみたいだな。(小声)」 客人A:「くっ…。辛味が悪いんだ…辛味さえなければ。」 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 店主:「おーいお前等、そろそろ店しまうから出ていってくれ〜。」 客人A:「おう」 客人B:「ごちそうさま…」 客人C:「もうこんな時間か、」 和皚:「ごちそう様でした。美味しかったです!」 店主:「そうか、そういえば嬢ちゃんは旅をしているのかい?」 和皚:「はい!両親に色んなところを見て来いって言われました!」 店主:「そうか…それなら、これをお土産代わりにでも持っていってくれ。」 そう言って液体の入った瓶を渡す。 和皚:「これは?」 店主:「嬢ちゃんがさっき食べた1000年樹蜜だよ。嬢ちゃんは食べきったし、是非家族と食べてみてくれ。」 和皚:「いいの!!?ありがとうなのだよ〜!」……………………、 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 【to be Continued…】