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【悟りを求める僧侶】エイハブ

西の地で古くより続く民族間の争い 私はその渦中にいた 戦火は疾く 確実に全てを奪い去っていく 私もまた 故郷と家族を失った 生き残った友と救いを求めて放浪する中 我々は寺院に救いを求めた 寺院での暮らしは我々の痩せ細った身と心を満たした 憎悪と執着を捨て 心に静寂を── そして 悟りへの道を歩む 自らの心と向き合う時間は 我々に確かな平穏を齎した しかし 戦火は止まない どんなに我々が満たされようと 世は変わらず憎悪と執着に呪われていた それどころか 時はより悪辣に人々の心を歪ませる 私の胸に一つの疑念が生じた 「己一人の心が安らかであれば── それを悟りと呼んでよいのだろうか」 この問いは 日に日に心から体を蝕んだ 悩む私を見かね 友は悩みを打ち明けるよう私に言った その言葉は温かかった そして己の全てを打ち明けた私に 友は語った 「君の抱える疑念は ここで晴れるものではないのかもしれない」 その言葉に背を押され 私は寺院を発つ決意を固めた 身の着のまま出ようとする私を 友は呼び止め── 私に一本の杖を差し出した 「これは?」 「そのままでは余りに無防備だ」 「しかし──」 「ならばこれは私からの餞別だ 友よ 君が迷うまま 旅路で倒れぬ様に せめてこれを 私の祈りとさせてくれ」 私は友の気遣いに感謝し その杖を受け取った この旅で『真の悟り』を見出すことを誓って 旅路の中で 様々な人々と出会った 迷える者 怒りに身を焦がす者 悲しみの中でもがく者 戦いの中に己を見出す者 私は彼らの考えに触れ 言葉を 時には力を交え対話をした 寺院での日々が自己を削ぎ落とし染まりやすくなったのか 他者の考えを前よりずっと── 私は受け入れ理解することができた 人々は過去に囚われ 己を そして他者を傷つけてしまう しかし過去を切り捨てることはできない 過去とは己を傷つけるが 己を作り上げたものでもある 私は過去に向き合うための術を 彼らと共に考えた 対話を終えた彼らの姿が 前よりも未来へ向いていたことは 私の自惚れではないと信じたい 『真の悟り』 それが本当に存在するのかは 未だ解らない だが──前には進んでいる