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アイリス-IB-SAM6097/戦場という名のゲームを駆けるハッカー

・アイリスについて1 品名:IB-SAM 用途:大型機体操縦用生体デバイス 製造日:■■/■■■■(稼働日数1年) 稼働保証:初期稼働より10年 情報保全のため、初期稼働より11年経過後全ての機能を停止します 稼働保証期間内の交換を強くお勧めします 技研『アイビス』兵器技術部 ─── ・アイリスについて2 私は人造強化人間IB-SAM-6097 型番を見れば分かると思うけど、いわゆる最新バージョンってとこ 安定型の5500番台に比べ性能がピーキーなんだ 5500番台は万能タイプで人気、私たち6000番台は扱いが難しいってことでなかなか売れないんだって 私に言わせればあいつらは器用貧乏だし、そもそも使いこなせないヤツがヘタクソって思うけど まあそんな私にもようやく買われることになった どうやら既に一体持ってるオジサンらしい 目的は5500番台のフォローってとこかな って思ってたんだけど 「先にいた子ってあなたなの」 購入前の相性確認の顔合わせで先任に会ったんだけど…… 「え、何。400番台?マジ……?」 「…………」 「えっと……ハロー?」 「…………」 (何この子。つまんなそーなヤツ……) 「えっと……419先輩?一応何か話してくんないと……」 「…………イオ」 「え、なんて?」 「私の名前」 「あ、そ、そうなんだ……」 名前持ちとかレアじゃん 旧式と思ってたけど意外にやるのかな 「……覚悟して」 「な、何を……?」 「あなたも名前をつけられる」 「は?いやいや、ツールに名前つけるとか子供みたいじゃん。私はいいって」 「…………」 「……マジ?」 その後顔合わせ結果は【良】ということで買われることに そしてあの子の言う通り、その晩に名前をつけられた 「『アイリス』。それがお前の名だ」 モノに名付けるオジサンに無愛想な旧式 上手くやってけんのかなぁ ─── ・アイリスについて3 「あ……おかえりなさいませ、ご主人様」 私たちの主人がいつの間にか帰ってきた いつもイオは真っ先に出迎えるけど、今はそれができず声をかけるだけに留まっている。たぶん困り顔をしているんだろう なぜできないって? それは私が彼女の膝を占領したからだ 「おかえりー、マスター」 イオに膝枕してもらっている体勢のまま、携帯ゲーム機から目を離さず気だるげに迎える マスターは偉いけどゲームの方が大事だもんね 「ただいま戻った。仲良くしているようで何よりだ」 「すみません……ちゃんとお出迎えできず……」 「あ、イオ!そっちタゲ飛んだから集中して!」 「あ、うん……頑張るよ」 もちろんイオもプレイ中 大人しいを通り越して何事にも無関心な子だと思ってたけど、私が買ったゲームに誘ったら思いのほかノリがよかった 最初はつまんなそーって思ってた子だったんだけど、今では私のゲーム友だち 「………あ」 「うっし、クリア。ナイスヒーリングだったよ」 「うん。じゃあキリもいいし終わろっか」 「え゛っ、まだ遊びたい気分……」 「ご主人様を放っておくわけにはいかないでしょ」 主人の方に目をやると、なんだか生暖かい目をしていた なんだコイツ そしていつも通りの日常を過ごす 主人が持ってきた任務を選び、準備して出動 最近イオは元気なくて、もっぱら私ばっか出動してる感じ 何となく気持ちは分かるけど、慰めるなんて私も主人も苦手だしなー ま、時間が経てば気も向くでしょ だって私たちはそういう風にできてるんだから 「いつか一緒に任務いきたいね」 「そう、だね」 歯切れの悪い返事を返す友だちの背を叩き、いつも通りの傭兵稼業を勤しむためベースを発った ─── ・IB-SAMについて 技研『アイビス』で生まれた強化人造人間 顧客からの注文が入るとジェネレータから生まれ、要望に合わせ調整したのち顧客の元へ届けられる 以降IB-SAMは顧客を主人とし、死ぬまで彼らに尽くす 大型機体を操る兵器として生まれた彼らは、任務に忠実で主人に絶対の忠誠心を持っている 人と同じように感じ、考え、交流する事ができるが、ほとんどの場合人間扱いはされない 成長速度も人とほぼ変わらないが、“11年”という技研により定められた寿命がある 遺伝子操された赤子たちは培養ジェネレータにより生育され、少年少女の形で生まれる 彼らは本能的に自身が戦士であると理解しており、数日間の教育を経て兵士となる 彼らは死を恐れない勇敢な兵士として、その命を雇い主に捧げる そんな彼らは比較的安価な価格で入手でき、単独傭兵の僚機としてだったり熟練兵士のいない民間組織の傭兵としてだったりと様々な需要がある 命令であれば“何でも”するため、ほぼ死が確定される囮役や特攻役にアサインされることが多く、時には“愛玩用”として使われることもある ─── ・初めてのB評価 「…………は?」 とある任務のあと、アイリスは該当任務の評価が書かれたレポートを見て肩をわなわなと震わせる 「は?なんで?システムも戦況も掌握してたじゃん!」 怒りをぶつけるようにベース内の備品を蹴り飛ばす 「いやいや、この私がBとかありえないんだけど!しかもこのタイミングで?意味わかんない!」 「……アイリス」 怒り狂うアイリスのもとに主人がやってきて、戒めるように声をかける しかし、アイリスの怒りは収まらないようだ 「だってそうじゃん!あいつらの期待をそのまま応えてやったのにBだよ?派手な活躍しか見えないフシアナなんじゃない!」 「……アイリス、やめなさい」 「マスターからも言ってやってよ!ついでにイオの不当評価も告発しちゃえ!」 「…………聞きなさい、アイリス」 「あーもう、あったまきた!こーなったらあいつらの情報全部抜き取って……」 「アイリス。君を懲罰房に収容する」 「…………は?」 突然の宣告に固まる 「……なんでよ。私の、私たちの味方でしょ……?どうしてそんな事……」 「命令だ」 「……!……分かった。マスターが言うのなら」 「重ねて命令する。懲戒中は大人しくするように」 「…………」 「行け」 「……はい」 懲罰房にて 「……イオ。あなたもこんな気持ちだったの?」 近くに収容されている先輩に声をかける 「……君の気持ちは分からないけど、私は私への処分は妥当だと思っているよ」 「どうして?」 「……私は君と違って旧式だから、無能だから罰を受けて当然なんだよ」 「……そんな事言わないでよ!あなたの価値は決して無能なんかじゃない、評価できてないヤツの方が無能なんだよ!」 「しーっ……命令違反になっちゃうよ……」 「……ちぇー……なんだよ……」 「……正しく評価すらできない企業なんて……」 「企業なんて、キライだ……」 《【企業嫌い】を獲得した!》 ─── ・??? 未開放