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【静寂の黒狼】リルフェル

母を奪われたあの日の事は今でも鮮明に覚えている。 あの日の恐怖も、私を逃がした時の母の眼差しも。 何かに取り憑かれたかのように武器を振り下ろす、憎悪に満ちた人間たちの表情も。 私の中にはまだ、人間への憎しみが残っている。 この怒りを完全に捨て去れる日は、きっと永久に来ない。 それでも私は、痛みを分かち合える友達と出会えた。 こんなはぐれ者の私達を温かく受け入れてくれる人達に出会うことができた。 沢山の人達と想いを交わした。 人を信じてもいいんだって、そう思えるようになった。 だから痛みも憎しみも、この胸の中に受け入れることができる。 全部受け入れて、前を向いて行く。 私は黒狼。 人狼と人間、そのどちらでもある存在。 異なる者同士が歩み合って、心を交わした、その確かな証。 ――ねえ、お母さん。 私は今、幸せだよ。