パリッとした商談用の礼装を着こなすオーク。分け隔てない快活な性格で、部下からの信頼が厚い。下町の零細商社に取り入ることから始め、地道な営業を続けてきたことで、今となっては王都で彼に後ろ指を指す者はあまりいない。 兄は死んだ。向かい合っていた人間の兵士も死んだ。鮮やかな印刷の、厚めの紙切れが落ちていたのを憶えている。あの時どうすれば良い結果があったのか。あの日思い立ったことは正しかったのか。全ては分からない。……しかし。 「本日も一日、宜しくお願いします!」 『おねがいします!!!』 「元気でよろしい!」 声を出さねば。喋らねば。昏い考えが喉を塞ぐ前に。