私は生まれながらにして忌み嫌われていた。 蚕の羽があったからだ。 そして、私は産声を上げたと同時に犯罪に手を染めた。 何故かと言われたら、私は災害を発生させる力を持っていた。 私が産声を上げた時、隕石や津波が発生した。 これは世間では『大災害』と呼ばれ、『宇宙の副産物』と名付けられている。 両親は私に神の力が備わっているなんて考えもしていなかった。 そう、両親は蚕の羽が生えた私を不思議とは思いながらも、私をちゃんと育ててくれた。 しかし、両親がある確信に気づいてしまったのである。 あの日は丁度私が産まれてから3年後の時だった。 私が眠っていた時の事だったのだろう。 母が災害の事に記憶を遡らせて想い出に浸っていた。 父も想い出に浸っていた。そして、父は気づいた。 私が産まれた時刻と災害発生時刻が同時なことに 父は持っていたコップを落とし、割ってしまった。 母は父にどうしたのか尋ねた。 事実を伝えると、母はみるみると顔が真青になった。 朝。起きて私は、縄で縛られて身動き一つできないようにされていた。 「ママ…?パパ…?動けない…なにこれ?」 すると地震が発生した。小規模だったが、十分な証拠とも言えるだろう。 いや、証拠としては足りなかったのかも知れない。 両親は私の口をガムテープで塞いだ。 私は両親が怖くて怖くてたまらなかった。涙が溢れ、零れてしまった。 そして両親は災害発生のトリガーを完全に把握してしまった。 両親は平凡な農家だ。 麻酔もせずに、私の口を赤い糸で縫い付けた。 痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。 叫んでこの痛みを紛らわしたかった。しかし叫ぶことは許されなかった。 医療経験なんてある筈もない母は何回も間違って縫って。それでその度に糸を外して縫っていた。 一瞬ならまだ良いものの、繰り返される痛みに、私は泣くことしか許されなかった。 そこから私は一切合切両親の事は好きじゃなくなった。 それでも両親は私を育てあげ、点滴で栄養をちゃんと血液に運ばせ、私を生かした。 屈辱的だった。これ程までに苔にされた事は産まれて初めての事だった。 大人になった私はギャング組織に入り、まず初めに両親を屈伏させた。 どうやって屈伏させたのか、は私にも分かっていない。それほどまでに── ──両親の上に立つことに無我夢中だった あの瞬間は心が穏やかになった。私は初めから罪を持っていたけど、持っていた訳ではなかったのに、何故あんな扱いを受けるのか。 その事を考え続けずっと心が荒れていた。 しかし、この瞬間から私の心は穏やかな青空になった。