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【蘇りし天の針子】シャイナ

関連キャラ https://ai-battler.com/battle/3ec068af-3333-40f9-a727-aae621887db2 天の針子は、厄災と立ち向かう、まだ見ぬ勇者のために衣を縫った。 されど勇者は現れず、未完の衣と愛用の道具を蒼雷纏う寡黙な守護者に託し、少女は世を去る。 山が崩れ、森が枯れ、幾星霜を経て世界が少女の名を忘れても、守護者たる黒曜の竜は祭壇を離れなかった。 その竜が守り続けたのは、単なる宝ではない。友が遺した、いつか訪れる誰かへの祈り。 そして、待ち望んだその日が、一人の若者が仲間達とともに現れる。 己を勇者と称さず、勝利を約束することもできず、それでも誰かを救うために歩み続ける者。 「僕は勇者じゃありません。僕にはあの厄災を倒せる力があるのかも分からない。それでも、困っている人がいる。僕が何もしなかったら、きっとあとで後悔する。だから」 竜は語らない。ただその言葉と眼を受け止め、守り続けていた祭壇への道を示した。 彼らは祭壇の衣を囲い、使い手を待ち続けていた道具を手に取り、今までそうしてきたように力を合わせてその衣を縫う。 仲間と共に紡いだ最後のひと針は、未完の衣を完成させ、眩い光とともに、失われたはずの奇跡を呼び覚ました。 光が収まった時、祭壇の上に、ひとりの少女が降り立っていた。 薄紫の長い髪が、風もないのに柔らかく揺れる。 桃色の瞳は、驚いたように瞬き、それから、あたたかな笑みを浮かべた。 「……あら」 声は、ひどく穏やかだった。 「ずいぶん長く眠っていたみたいね」 彼女は目を細め、完成した衣の縫い目をひとつずつ確かめた。指先が胸元をなぞる。 そこには、最後の一針が確かにあった。 それを縫った者たちの心が、布に残っていた。 「あなたがたが、衣を完成させてくれたのね。勇者のための衣を」 「はい。だけど、僕は……」 「勇者じゃない、でしょう?」 少女──シャイナは笑った。 茶目っ気のある、少しだけいたずらっぽい笑みだった。 「なら、よかった。最初から、勇者だと名乗る人には作りたくなかったもの」 少しツンとした表情で告げるシャイナに若者は戸惑った。 「えっ?」 「だって、勇者の衣は、勇者だと自分で信じている人のためにあるんじゃないもの。愛と勇気を忘れずに、誰かのために歩き出す人を支えるためにあるの。あなたが勇者かどうかは、衣が決めることじゃないわ」  シャイナは、完成した衣にそっと手を触れた。 「衣を着て戦えば、急に強くなれるわけでもない。傷つかなくなるわけでもない。怖くなくなるわけでもない。でも、あなたが歩いてきた道と、そばにいる人たちの想いを、きっと支えてくれる」 若者の目が潤んだ。 長い旅路で、誰にも見えない不安を抱え続けていた。 力が足りないと思い、仲間に迷惑をかけるのではないかと恐れるたび、自分には資格がないのだと心のどこかで考えていた。 それでも、と歩み続けてきた道を、認められたような気持ちになった。 「……ありがとう、ございます」 「お礼を言うのはわたしのほうよ。こんなにも長い時を経ても、あなたたちは衣を完成させてくれたんだもの」 シャイナは視線を若者と、その仲間たちに向けて微笑む。 そして、約束を守り続けてくれた竜に、静かに視線を移した。 「……ヴァジュラーグ」 「……ありがとう。ずうっと、待っていてくれたのね」 静かに歩み寄る懐かしき友の声に、竜は何も答えない。 ただ、深き沈黙を湛えた黒曜の鱗に小さな蒼雷が灯り、巨大な頭をシャイナの胸に預けた。 彼女もまた、幾度なく繰り返したあの日のように、竜の持つ黒く鋭い鱗に手を添えその頭を抱いた。 「また、一緒にいてくれるかしら。折角完成した服が、ボロボロになったりしたら直さなきゃいけないの」 竜は静かに唸り、その身を屈めた。 シャイナは微笑み、馴れた様子でその背へと軽やかに登る。 そして、若者とその仲間たちに手を差し伸べた。 「さあ、その衣を纏って。そして、わたしたちの未来を、物語の結末を紡ぎに行きましょう」 竜が守り続けた約束は、勇気を振り絞った若者の小さく、けれども偉大な一歩によって共に歩む未来へと変わった。 ── 古き伝承に残る『天の針子』本人。 神秘的で浮世離れした雰囲気を漂わせるが、その実非常に人当たりがよくお喋り好き。 かつてはある街で仕立て屋を営む両親とともに暮らしていたごく普通の少女であったが、当時絶対的な権威を誇っていた中央教会から『天の針子』として使命を受け生活が一変。 浪漫溢れる物語に憧れを抱いていた当時10才の彼女は最初は乗り気だったものの、人里離れた聖域で交流もなく儀式と裁縫を繰り返す生活に飽き飽きとし、動物と話したり、とうとう聖域に立ち入る程の実力を持ったドラゴンにも物怖じせずに接するようになってしまった。 本当の目的である「勇者の衣を縫う」という使命も、勇者の体型、果ては性別さえわからないので遅々として進まず、いつも不満を漏らしていたという。