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【希望を嗤う少女】黒崎ノゾミ

かつて彼女は、誰よりも“希望”という言葉を信じていた。 たとえ世界が暗くても、信じていればきっと光は差し込む。 そう自分自身に言い聞かせるように、誰よりも強く、何度も何度も繰り返していた。 「希望があれば、きっと救える。私は信じるよ」 その想いの中心には、弟“黒崎ユーキ”の存在があった。 生まれつき体が弱く、入退院を繰り返す弟の病が、いつか必ず治ると。 自分の信じる力が、弟の未来を照らすと、ただひたすらに願っていた。 だが、その願いは届かなかった。 時間だけが無情に過ぎ、弟の容態は悪化し、そしてーーたった1人の弟は二度と帰って来なくなった。 「信じたって、何も変わらない。信じてるだけじゃ、誰も救えない」 その瞬間、心の中の何かが音を立てて崩れ落ちた。 無力さに打ちひしがれ、彼女は信じることそのものを否定するようになった。 今の彼女は、“希望”を語る者たちを冷笑する。 人の善意を信じる生徒たちに対して、嘲るような瞳で問いかける。 ――そんなものが、何を救った? 絶望を選んだ少女の歩みは、今もかの学舎に深く影を落としている。