番外編「【魔王】と【銀河の救世主】」 夕昼「なぁ、こっちだって無駄な『戦争』はしたくないんだ。おとなしく『蓬』を返して、さっさと帰ってくれねぇか」 死屍累々とした戦場に2人の男性が相対する。 1人は確かな『正義』を双眸の奥に潜める、男性『リュクス・グレイド』。 1人は真っ赤に燃えるオーラを纏い、今にも暴れだしそうな男性『朝夜夕昼』。 リュクス「それは無理な相談だ。我々の星は今にも滅びそうな危機的状況だ、この機会を逃したら我々は滅びr」 リュクスが言い終える前に夕昼がため息を付き、どうでも良いように話しを遮る。 夕昼「はぁー、知るかよ。俺からしたらお前らが滅びようが、滅びまいがどうでも良い。お前らは『蓬』を返して帰ればいいんだよ」 リュクス「お前…人の話を聞いていたのか」 嘆息混じりに夕昼が「何で俺がお前の話しを聞かなきゃならねぇんだよ」と返す。 リュクスは思わぬ返答に一瞬驚き、そして目の前の男に怒りを感じた。 リュクス「分かった。それなら『勝者がルール』それで良いな」 夕昼「あぁ、構わねぇよ」 そう聞くとリュクスは構えた。 一見隙だらけに見える構えだが薄れゆく意識の中、夕昼は本能的に危険だと判断した。 夕昼の意識が完全に途絶えた時、オーラが勢いを増し、天を震わす怒りの咆哮を上げた。 リュクス「ッ!凄まじい圧力だな」 刹那、夕昼が地を蹴りリュクスの腹部に強烈な一撃を叩き込まれた。 リュクス「ぐッ!?」 だが、リュクスは吹っ飛ばず、足が何かに押さえつけられる感覚がする。それもそのはず、リュクスの足を夕昼の足が押さえつけているからだ。 リュクス「クッソ…」 夕昼から鋭い連撃が放たれる。そして最後に回し蹴りでリュクスを吹っ飛ばした。 リュクス「いっ、これはマジでやらないと負けるな」 そう言うと、どこらかともなく一本の片手剣が飛来してリュクスの右手に収まった。 そして踏み込む姿勢をとると、雰囲気が変わる。 突如、夕昼の左腕に激痛が走る。瞬きする間も無く夕昼の腕は切り落とされた。 夕昼は苦し紛れに反撃をするが、その速度は既に見切ったと言わんばかりにひらりと回避した。 リュクス「遅い」 リュクスは目にも追えない速度の剣技で夕昼の全身を切り裂いた。全身から血が滴り、首を切られるすんでのところで何とか軌道をずらしたが、身体を深く斜めに切り裂かれた。 夕昼は距離をとる為に、自爆覚悟で右手に【憤怒之業炎】を集めて爆発させた。両者とも派手に吹っ飛び、リュクスは上手い事着地したが、夕昼はもはや着地する気力も無く一度跳ねてから大岩に叩きつけられて大岩にもたれかけるように座り止まった。 夕昼は大きく咳き込み血を吐き出した。そこで意識を取り戻し、まとまらない思考の中で状況を俯瞰する。 夕昼(あ〜ちくしょういてぇ…俺は左腕逝って全身血だらけ上半身にデカめの切り傷、対してあいつは元気ピンピン…ヤベェな…しゃあねぇ「奥の手」を使うか) 力無く座る夕昼にリュクスがゆっくりと歩み寄り、血の滴る剣を向ける。 リュクス「私だってこんな事はしたく無いがしょうがない、もう終わりにしよう」 夕昼「くっくっ、終わりか、それは少しばかり早いんじゃ無いか」 リュクス「何を言っている、自分の置かれている状況すら分からない馬鹿なのかお前は」 夕昼「馬鹿ねぇ、主人公がピンチの時、敵は何故か最後の言葉を聞こうとする。俺はその行動が意味わからねぇんだよ、さっさとトドメを刺さねぇから、主人公が覚醒して逆転されて負ける」 リュクス「何の話だ」 夕昼「決まってるだろ、お前の今置かれている状況だよ」 そう言うと夕昼はゆっくりと瞼を閉じる。 そして突如、夕昼の白髪に虹がかかる。それと同時に夕昼の纏う真っ赤なオーラが凝縮され王冠とマントに変化して、今度は虹色のオーラを纏い、夕昼の蒼い左目は極彩色に染まった。 リュクスは夕昼の変化に気づき剣を振る…が既に遅かった。剣はオーラに弾かれて防がれる。 リュクス「何!?」 夕昼「な、だから言ったろさっさとトドメを刺さないから逆転されると」 リュクスは地面を切り、砂埃を辺りに舞わせて夕昼の視界を奪う。 音も無く気配も押し56して、夕昼の心臓部に剣を一突きするが、剣は心臓に触れる事は無く夕昼は軽く剣を指で押さえつけて止める。 リュクス「くっ…」 リュクスは素早い判断で剣を手放し、腹部に一撃を叩き込もうとするが、それよりも早く夕昼が一撃をお見舞いする。 リュクス「ぐっはっ…」 リュクスが後ろに跳躍して距離を取る。 夕昼は右足で地面を踏みつけると、【憤怒之業炎】で構成された業炎の槍が地面から無数に飛び出し、殺意がリュクスに迫る。 始めは少し余裕を見せていたリュクスだが、時間と共に疲労と密度が増していてどんどん余裕が無くなっている。 ついに避けきれずにリュクスの腹部に一本の殺意が突き刺さる。その業炎は腹部から燃え広がり、全身を燃やし尽くす勢いで燃える。 リュクスはなりふり構わず夕昼に殴りかかるが、全て最低限の動きで避けられる。 夕昼「これでチェックメイトだ」 そう言うと、今までとは比べ物にならない速度と威力の拳がリュクスの顔面に吸い込まれるように突き刺さる。 その一撃によりリュクスは気を失い、地面に倒れ伏す。 夕昼は倒れ伏したリュクスを見つめて、【憤怒之業炎】で剣を創り出し、無言で首をはねた。 リュクスの亡骸は業炎により、灰すら残さず燃え尽きた。 夕昼「はぁ〜これで終わりだな。さてと『蓬』を助けに行きますか」 煙草を吸いながら『蓬』を助けに行く為に歩き出す。 〜END〜