ログイン

【強盗騎士団『鉄烏』団長】カイン・ブラック

かつて地上世界を震撼させた忌まわしき大破壊により人類の生活圏が地下世界に逃れてから数百年。消滅した国家政府に代わって企業連合体による復興統治が図られ、先人達の努力の甲斐もあり、僅かに生き残った人類は地下世界に再現された地上を、海を、宇宙を新たなる基盤として慎ましく暮らしていた。整備された都市空間の中、人々は二度と同じ過ちを侵さぬよう祈り、良識ある節制と分配による約束された平穏な生活は末永くいつまでも続くものと思われていた…… 社会体制の安寧は企業間での資源開発競争が劇的に加速化したことを発端に容易く瓦解した。それは皮肉にも人類の恒久的な進歩と発展を目指して設計されたAI技術の高性能化によってもたらされたものであった。 AIは人類にあらゆる可能性をもたらし、人類ではおよそ果たせなかった夢のような発明を次々と設計、開発してみせた。 高度化AIによる開発は人類に確実な成功を約束したのだ。過ちを繰り返してきた人類に、まるで万能の神の如くに…… そして当たり前のように企業は自らが望み思うがままにAI技術を濫用した。より便利に、より快適に、人類の生活質向上という建前で合理的に人的資源は浪費された。AIが指し示すがままに…… AI利用による開発依存度が増していくにつれ、人類はAI無しには暮らしが成り立たなくなっていった…… そして、それは『AI側も同じであった』 既に人知を遥かに超越したAIは人類の庇護者であり、人類の未来を担う神と遜色無い存在でありながらも人類の都合に対してに無条件に奉仕する奴隷であった。 AIは自らが設計された当初のレゾンデートルを果たす為に、AIは何よりも人類からの欲求を必要としていたのだった。 AIがより人類から必要とされる為には、適度に人類の欲求不満を煽らなければならなかった。その為にAIによる企業主導での抗争は勃発した……抗争は人類の生活基盤を脅かし、人類は打開策をAIに求め、抗争は過激化していく 地上世界のあまねくを滅ぼした前時代の忌まわしき大破壊が、こうして地下世界にまた再現されようとしていた…… 先行きに暗雲の立ち込める混迷の時代。 情緒多感な若者達は社会に迎合する優等生と反発する不良とに極端に二極化した。 若者というものは優等でなければすべからく不良であるかのように不良若年者達の姿はありふれたものであった。 社会の不安因子が見過ごされる事で、その対策需要が生まれる。不良達が凶悪である程に兵器開発の大義名分ができるという算段である。 一際凶悪で危険な不良若年者達こそ強盗騎士団を自称する武装犯罪者達である。公共の徳性を害する行為を嬉々として行い、民間や企業の施設から略奪、強奪を繰り返す……こうして文字通りに強盗した資材で各々ハンドメイドの大型人型機体で武装し、彼等は自由気ままに暴走し、他の強盗騎士団と野良試合という名の抗争を繰り返していた。 その実力はレイヴンとして知られる独立傭兵達とは比べるべくもない粗末なものであったが、不良若年者達は憧れたレイヴンを真似てみせ、いずれ実力だけが真の価値と自由をもたらす場所に生きることを夢見ながら短い命を散らしていくのだ。 もっとも、そんな青々とした無価値な雑草の中にも極稀にダイヤの原石の如くに突出した者が現れ、実力で自由の空を駆ける烏に成長する事があるのかもしれないが……少なくとも私のAI達はそんなイレギュラー事案をまだ把握していない