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【殺戮の瞳】ブリンク

ブリンク。 本名ラザラスは、生まれながらにして超常的な力を持っていたわけではない。 むしろ彼は、徹底的に普通の人間として訓練された兵士だった。 かつて所属していた特殊作戦部隊では、偵察と突入作戦を専門としていた。失敗が許されず、目撃者さえ残すことができない任務。 記録から抹消された施設への潜入、敵対勢力からの要人・物資回収、そして公式には存在を認められていなかった異常存在の収容作戦。 彼が優秀だった理由は、攻撃性や残虐性ではない。 徹底した準備だった。 あらゆる行動を事前に計画し、複数の退路を確保し、予想外の事態に備えて代替案を用意する。 彼にとって戦場とは、力を誇示する場所ではなく、必要な結果を最小限の損失で達成するための場所だった。 その習慣こそが、後に彼の命を救うことになる。 ある日、ラザラスの部隊は、衛星記録から抹消されたデッドゾーンで極秘任務に投入された。 目標は地下構造物の確保。 そこには、活動を停止したと考えられていた異常存在が収容されていると報告されていた。 しかし、それは誤りだった。 内部に存在していたものは、通常の生物とは異なり、明確な肉体を持たなかった。 それは、時間と時間の隙間に存在する何かだった。 収容が破綻した瞬間、施設内では壊滅的な時間異常が発生する。 まだ死亡していない隊員が、すでに死体となった姿で発見される。 送信される前の無線通信に、受信側が応答する。 銃を発砲する前に、その銃声が響き渡る。 出来事の順序が崩壊し、原因と結果が正常に結びつかなくなる。 部隊は次々と壊滅した。 最後まで生き残ったのは、ラザラスだけだった。 異常存在が完全な顕現を試みたとき、ラザラスは反射的に目を閉じた。 瞬き。 人間にとって、ごくありふれた生理現象。 しかし、その一瞬の時間的断絶が、異常存在にとっては予測不能な矛盾を生み出した。 顕現は失敗した。 そして、行き場を失った異常存在は、自らを固定できる唯一の安定した時間の区間として、ラザラスの身体を選んだ。 こうして、彼の内部に未知の存在が封じ込められた。 ラザラスは生還した。 しかし、彼が持ち帰ったものは、誰にも理解できない異常だった。 救助されたラザラスの眼球は、激しく充血していた。 彼自身も、どれほど長い時間を一人で過ごしていたのか説明できなかった。 医学的検査では、異物もインプラントも確認されなかった。身体に明確な異常は見つからず、通常の人間と区別できる証拠は存在しなかった。 だが、彼が瞬きをした瞬間、その結論は覆された。 最初の制御不能な能力発動によって、監視に当たっていた者たちが命を落とした。 監視映像は2.1秒間欠落していた。 映像が復帰したとき、ラザラスは彼らの背後に立っており、武器をすでに下ろしていた。 本人には、その間に何が起きたのか完全には理解できていなかった。 収容措置が試みられたものの、失敗に終わる。 彼を拘束しようとする行為そのものが、新たな危険を生み出しかねなかったからである。 やがてラザラスは組織を離れ、単独で活動するようになった。 その能力は、彼を極めて危険な存在へと変えた。 しかし同時に、彼自身もまた、自分の中に何が潜んでいるのか分からないまま生きることを強いられていた。