かつて「運命」という概念がまだ信仰であった時代、 それを物理法則へと昇華した神がいた。名を──賽子神 姿は人にも獣にも似ず、ただ無数の賽子で構成された異形。 その瞳は数ではなく確率を視、意志は策ではなく混沌に寄り添う。 「問うな。策を弄すな。戦とはすでに終わっている」 敵が剣を構えるより早く、彼は賽子を握り投げた。 そして──出目が語る。 それが全て。知略も腕力も、信念すらも関係ない。 世界の理から逸脱したこの存在において、勝敗とはただ賽の目に問うのみ。 勝者が誰かなど、最初から決まっていた。 それは「神の出目」に従うのみ── 尚かつて > と < を間違え 幾度の戦闘に敗退してきた 悲しきギャンブル神──それが、賽子神である。