かつて、天国とも地獄とも言えぬ曖昧な世界、龍の、龍だけの王国があった。 その龍の王国で、小竜は産まれる。 高く、高く、自由に、飛べる様な子だと願われ、産まれた存在。名を、ヴォーランスレルムと云う。 実の所、レルムは生まれついて強かった訳ではない。寧ろ、小竜としても最弱と言っても過言ではなかった。 それ故、実力主義の龍の国では、正しく出来損ないとされていた。レルムが生きて居られたのは、父が最強の龍の王だという事実ありきだった。 実の所、父にもレルムは見放されていた。 幼き頃から嫌がらせにつぐ嫌がらせ、強くなろうとしても強くなれぬレルムは、父から愛を貰え無かった。 それ故、未だ飛べないレルムを下界、人間、魔族、数多の種族と動物が入り交じる世界に放逐したのだ。 レルムは落ちて行く中全力で飛ぼうとする。 しかし、ああ悲しきか、何度も何度も飛ぼうとした中でここぞと言う時にいざ飛べようか。現実とは無情なものである。 レルムは墜落した。取り分けて人も魔族も神ですら知らず、また近寄らない、 「静寂の泉」へと。 其処で未熟で小さな竜は、特異点と会うことになる。泉の底、そこには「少女」がいた。 人の形をしているような、龍のような、魔族のような、神のような。植物、はたまた動物のような、アンノウンな存在。 「少女」はレルムを見つけると。 (…)ジッと、レルムを見つめるだけで。それ以上は何もしなかった。 レルムは瀕死だったが、そもそも助けを求めるというやり方を知らなかった。 この奇妙な2人の間で、先に動いたのは、「少女」の方だった。「少女」は回復の魔法らしきものをレルムに使い 『貴方、名前は?』初めて口を開く。 『思うだけでもいいわ、私には分かるもの』 レルムは、喋る事も出来ない程疲弊しているのを察してか「少女」は声をかける。 『レルム、ヴォーランス・レルム』 『そう、飛翔するモノ……いい名前じゃない。龍なんでしょう?貴方、珍しいわ。』 『……僕、飛べないんだ…』 『あら、ごめんなさい。』 『だからこんな所まで落ちて来たのね。』 『……そういえば、ここはどこで、君はなんなんだい?泉に落ちた筈なのに、息は吸えるし……』 『詮索はオススメしないわ。でもそうね、ココは静寂の泉。誰も居なくて、静か、それに何も感じない。私の安らぎの場所。』 『もしかして、僕は邪魔をしたのかい?』 『ええ、とても。』