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【花一華の精】アドニス=ヴァレンタイン

――嗚呼、女神。君は今どこにいるのだろう  アネモネの精霊として産まれたアドニス。  彼には前世で愛し合った女神がいた。 ――もう少年ではないが愛してくれるのだろうか  産まれてから何十年も、アドニスは女神を探し回った。  しかし女神は見つからず、彼は早くも大人の姿へと成長していた。  端正な顔立ち、妖しげな紫の瞳、甘やかな桃の髪。  そして、均整が取れた逞しい肉体。  色気を醸し出す奇跡のハーモニーがそこにはあった。 ――君が、俺の女神なのか?  ある日、アドニスは一目惚れをした。  雷が落ちたような衝撃は、彼にとっては二度目のこと。  一度目は盲目に愛し、命を落とした。  だからだろうか。彼は勘違いをした。  性別も、種族も、生物かどうかさえ関係無い。 ――目の前の『君』は、俺の愛した女神なんだ。  かつての少年時代のようにアドニスは無邪気に笑った。  純粋無垢なる精神は、率直な想いを伝えるだろう。  少年らしい真っ直ぐな情熱。  大人っぽい蠱惑的な仕草。  その二つが、合わさった。  『君』は花の蜜のように、彼に溺れてしまうのだろう。