ほとんどが滲み読むことの出来ない日記がある 1枚、また1枚とページをめくっていく ╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶ 4月28日 "突然私は魔法少女に選ばれた、なんでも正義の素質が高いとのこと、正義…よく分からないけどみんなのために頑張ってみたい" ╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶ 魔法少女となった彼女が何を思ったのかわかるかもしれない、そう思い私はページをめくり続けた ╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶ 10月21日 "魔法少女になってだいたい半年がたった、クラスの友達と両親以外の誰からもいたわれない環境だけど先輩と一緒に頑張りたい" 10月22日 "先輩が首を吊った、魔法少女として戦ってきたのに、1の声援に1000の罵倒が帰ってくる世界に先輩は絶望して魔女になる前に去っていった" ╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶ 黒く滲んだページ、かろうじて読める文字を読み解いていくと彼女の苦痛と絶望、憎しみがひしひしと伝わってくる ╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶ 4月28日 "魔法少女になって1年、今回の相手は強く、多くの被害が出たが鎮圧できた、けど誰も私を労ってくれなかった" "被害を押し付けられた、私はただ守っただけなのに、友達にも、助けた人にも迫られた" "こんなにも頑張ってるのに、誰も私を見てくれない" "ついに親も見てくれなくなった、私はどこで間違えたの……?" ╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶ 5月11日 "知らない人にせめ寄られた、魔法少女なら人間に奉仕しろよ、と股を触られた、押しのけて逃げたけど近くにいた人は誰も助けてくれなかった" 5月12日 "昨日の人を押しのけたのをSNSにあげられていた、股を触られているところもしっかり映っているのに皆は悪者を私にした、メディアも笑顔で私を責めてきた、私が何をしたって言うの?……" ╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶ ただ誰かに愛されたかった少女は、押し付けられた正義を抱えて生きている ╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶ 8月12日 "強かった、疲れた" 11月26日 "つらい" 6月3日 "さみしい" ╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶ 日に日に短くなっている文章は彼女の余裕よなさからだろう ╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶ 12月3日 "もういいよね?" ╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶ ついに最後のページを見ることが出来た、魔法少女を始めてから5回目のクリスマスの日、そこには一言、たった一言だけ書かれていた ╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶ 12月24日 "世界は私を愛さなかった" ╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶╶ 魔の手によって堕とされた少女 人は魔女を産む 過去という本来彼女を守る最後の檻は、他者の愚行と愉悦などによって最初からなかったのだ……